リスニング学習で、イヤホンをはずしてみては? [英語学習]
前回書いたように、後輩と英語学習について話す機会が最近あったので、今回もその時に出た話題を元に書いてみたい。お題は「イヤホン(ヘッドホン)を学習に使うのは果たして良いことだろうか?」である。
「当たり前だろ」という答えが返ってきそうだし、疑問に思ったこと自体ないという人もいるかもしれない。
イヤホンやヘッドホンを利用している人は多いはずだが、もちろん、まったく使うなと言いたいわけではない。特に学習の初期段階では、音をしっかり聞いて特徴をつかむべきだし、英語にかぎらず、学習という行為で大切な集中力をつけるのにも役に立つ。
しかし、考えてみればわかることが、言葉というものは本来、生活の場で使うものだ。
つまり、実際に話された「ナマの英語」に触れる時は、ほとんどの場合、イヤホンやヘッドホンを通して聞くわけではない。
対面でのコミュニケーションはもちろん、英語が使われる国に行って公共の場で流れるアナウンス、またテレビやラジオを聞く際も、基本的に音声は直接耳に入ってくる。
しかも、時には、いや、むしろほとんどの場合、そうした音はさまざまな雑音の中で発せられる。それを聞き取らなければならない。
音だけに集中するのにイヤホンは役に立つ。しかし、イヤホンがないとまともに英語が聞き取れない、集中できない、というようになっては困るだろう。
そういえば、直接イヤホンの話とは関係ないが、TOEICなどの試験で、「当たった席が悪くて、音が聞きづらかった」「スピーカーの音質が悪かった」といった、会場の環境についてのグチをいう人がいるという。
しかし、見方によっては、「それは本末転倒だ」とすら言えるのではないか。
もちろん、テストでは誰だって良い点を取りたい。より良い環境の方がより良いスコアに結びつく可能性が高いだろうし、受験生の間の公平さは保たれるべきだ。私だって人間だから、受験をすればそう思うだろう。
しかし厳しい立場を取れば、それでは英語の聞き取り・理解ではなく、テストで良いスコアを取ることが自己目的化してしまっている、ということにはならないだろうか。
現実の生活の場では、相手に聞き返すことができる一対一のコミュニケーションもあるにせよ、聞きづらい環境で一方的に聞かなければいけないこともよくある。それに備えて、少しでも現実に近い形でリスニングの訓練をする必要性が、あまり語られていないような気がする。
ある程度のレベルに達したら、時おり意識的にイヤホンをはずしてみてはいかがだろうか。初めて聞く、あるいはそれほど聞き込んでいない英語の素材をスピーカーから流す。時には部屋の窓も開け、わざと外の雑音を入れてみる。どれくらい聞き取れるだろうか。
かくいう私も、中学生になって初めて英語に触れた「NHK基礎英語」こそラジオのスピーカーから音を出していたが、その後はもっぱらイヤホンでラジオ番組やカセットテープの英語を聞くようになった。
何かが違うな、と思うようになったきっかけは、大学生の時に初めて短期間アメリカに滞在した時だろうか。当時、日本国内でネイティブ向けの番組をそのまま流していた数少ない放送であるFEN(今のAFN)の早口の英語が結構わかるようになったかな、と思うようになっていた。しかし、アメリカで連日否応なく触れるナマの英語は、かなりの程度でお手上げ状態だった。
もちろんリスニング力がまだまだだということを再認識したが、それとともに、帰国して何が違うのかと考えて思い当たったのがイヤホンの有無だった。また、次第にビデオが一般に普及してきて、私もレンタルした映画やTVドラマを原語で視聴するようになったが、テレビのスピーカーから音を出して聞くと、イヤホンを通した時より理解力がずっと落ちるのを歴然と感じた。
それ以来、常にとはいえないが、イヤホンをはずして聞くことを意図的に増やすようにした。もちろん、個人で楽しむ分にはいつもイヤホンであっても構わないだろうが、実践的な場で容赦のない英語に触れることがあるのだとしたら、「たまにはイヤホンをはずしてみてはいかがですか?」と思うしだいである。
なおイヤホンをはずしてリスニング学習、といっても、「わからなくてもいいから英語をシャワーのように室内に流しっぱなしにする」という意味ではない。集中してもなかなか聞き取れない外国語の音と内容を、漫然と聞くだけで理解できるようになるわけがないと思う。いくらシャワーを浴びても、水は体内に蓄えられるのではなく、体の表面を流れていくだけだ。やはり、意識して聞き取る姿勢が必要だろう。
勝手なことを書いてきたが、英語教育の専門家ではないので、こうした考えが正しいのかどうか、またイヤホンの有無で外国語の習得に目立った差が出るのかどうかはわからない。外国語学習でのイヤホンの役割についてすでに研究が行われていて、私が知らないだけかもしれない。詳しい方がいたら、ご教示や訂正をいただければ幸いである。
最後に英語について一点書くと、イヤホンやヘッドホンは左右の耳につけるタイプがほとんどだろう。そこで靴などと同様、(a pair of) earphones、headphones と複数形になる。
過去の参考記事:
・効果を実感できた学習法-ディクテーションとシャドーイング
「当たり前だろ」という答えが返ってきそうだし、疑問に思ったこと自体ないという人もいるかもしれない。
イヤホンやヘッドホンを利用している人は多いはずだが、もちろん、まったく使うなと言いたいわけではない。特に学習の初期段階では、音をしっかり聞いて特徴をつかむべきだし、英語にかぎらず、学習という行為で大切な集中力をつけるのにも役に立つ。
しかし、考えてみればわかることが、言葉というものは本来、生活の場で使うものだ。
つまり、実際に話された「ナマの英語」に触れる時は、ほとんどの場合、イヤホンやヘッドホンを通して聞くわけではない。
対面でのコミュニケーションはもちろん、英語が使われる国に行って公共の場で流れるアナウンス、またテレビやラジオを聞く際も、基本的に音声は直接耳に入ってくる。
しかも、時には、いや、むしろほとんどの場合、そうした音はさまざまな雑音の中で発せられる。それを聞き取らなければならない。
音だけに集中するのにイヤホンは役に立つ。しかし、イヤホンがないとまともに英語が聞き取れない、集中できない、というようになっては困るだろう。
そういえば、直接イヤホンの話とは関係ないが、TOEICなどの試験で、「当たった席が悪くて、音が聞きづらかった」「スピーカーの音質が悪かった」といった、会場の環境についてのグチをいう人がいるという。
しかし、見方によっては、「それは本末転倒だ」とすら言えるのではないか。
もちろん、テストでは誰だって良い点を取りたい。より良い環境の方がより良いスコアに結びつく可能性が高いだろうし、受験生の間の公平さは保たれるべきだ。私だって人間だから、受験をすればそう思うだろう。
しかし厳しい立場を取れば、それでは英語の聞き取り・理解ではなく、テストで良いスコアを取ることが自己目的化してしまっている、ということにはならないだろうか。
現実の生活の場では、相手に聞き返すことができる一対一のコミュニケーションもあるにせよ、聞きづらい環境で一方的に聞かなければいけないこともよくある。それに備えて、少しでも現実に近い形でリスニングの訓練をする必要性が、あまり語られていないような気がする。
ある程度のレベルに達したら、時おり意識的にイヤホンをはずしてみてはいかがだろうか。初めて聞く、あるいはそれほど聞き込んでいない英語の素材をスピーカーから流す。時には部屋の窓も開け、わざと外の雑音を入れてみる。どれくらい聞き取れるだろうか。
かくいう私も、中学生になって初めて英語に触れた「NHK基礎英語」こそラジオのスピーカーから音を出していたが、その後はもっぱらイヤホンでラジオ番組やカセットテープの英語を聞くようになった。
何かが違うな、と思うようになったきっかけは、大学生の時に初めて短期間アメリカに滞在した時だろうか。当時、日本国内でネイティブ向けの番組をそのまま流していた数少ない放送であるFEN(今のAFN)の早口の英語が結構わかるようになったかな、と思うようになっていた。しかし、アメリカで連日否応なく触れるナマの英語は、かなりの程度でお手上げ状態だった。
もちろんリスニング力がまだまだだということを再認識したが、それとともに、帰国して何が違うのかと考えて思い当たったのがイヤホンの有無だった。また、次第にビデオが一般に普及してきて、私もレンタルした映画やTVドラマを原語で視聴するようになったが、テレビのスピーカーから音を出して聞くと、イヤホンを通した時より理解力がずっと落ちるのを歴然と感じた。
それ以来、常にとはいえないが、イヤホンをはずして聞くことを意図的に増やすようにした。もちろん、個人で楽しむ分にはいつもイヤホンであっても構わないだろうが、実践的な場で容赦のない英語に触れることがあるのだとしたら、「たまにはイヤホンをはずしてみてはいかがですか?」と思うしだいである。
なおイヤホンをはずしてリスニング学習、といっても、「わからなくてもいいから英語をシャワーのように室内に流しっぱなしにする」という意味ではない。集中してもなかなか聞き取れない外国語の音と内容を、漫然と聞くだけで理解できるようになるわけがないと思う。いくらシャワーを浴びても、水は体内に蓄えられるのではなく、体の表面を流れていくだけだ。やはり、意識して聞き取る姿勢が必要だろう。
勝手なことを書いてきたが、英語教育の専門家ではないので、こうした考えが正しいのかどうか、またイヤホンの有無で外国語の習得に目立った差が出るのかどうかはわからない。外国語学習でのイヤホンの役割についてすでに研究が行われていて、私が知らないだけかもしれない。詳しい方がいたら、ご教示や訂正をいただければ幸いである。
最後に英語について一点書くと、イヤホンやヘッドホンは左右の耳につけるタイプがほとんどだろう。そこで靴などと同様、(a pair of) earphones、headphones と複数形になる。
過去の参考記事:
・効果を実感できた学習法-ディクテーションとシャドーイング
にほんブログ村← 参加中です
コメント 0