Zener cards 「ESPカード、超能力テストに使うカード」 (新・刑事コロンボ「汚れた超能力」) [固有名詞にちなむ表現]
前回同様、ドラマ「刑事コロンボ・汚れた超能力」に出てきた"固有名詞にちなむ表現"をもうひとつ紹介したい。この作品で、私が子供の頃に流行った「超能力」ブームに関係あるカードに再会した。英語で Zener cards と呼ばれるものだ。
若い世代の人たちのために少し背景説明をすると、1970年代に、超常現象・ミステリーゾーン・謎の生物・UFO・古代文明の謎、といった話題が世界的に流行した。今も"サブカルチャー"の定番だろうが、当時は現在とは比較にならないほどの一大社会現象だった。あれはいったいどのような世相の反映だったのだろうか。
このうち、テレパシーや透視、予知といった「超能力」は、アメリカ政府が研究していると伝えられたり、"超能力者"が来日してテレビに出たりして話題となった。子供だった私も Extrasensory Perception (ESP) という言葉を覚えてしまったくらいだ。Esper 「エスパー、超能力者」を描いたSFも流行っていた。
そして、超能力の存在を調べるために使われるカードがあった。十字、マル、四角、星形、三本の波線、の5種類の記号で一組となり、被験者に見えないようにカードを引いて記号を当てられるかどうかテストするというものだ。
記号自体は平凡だが、5つすべての記号がセットで並ぶと、いかにも謎めいた雰囲気をかもし出すカードだった。
このカードが「刑事コロンボ」に出てきたので懐かしくなったわけである。英語の呼び名も今回初めて知った。後述するように Karl Zener という心理学者が考案したもので、ドイツ風の名前だがアメリカ人だそうだ。
前置きが長くなったが、セリフを引用しよう。まずは超能力テストを始めるアナウンスが研究室に流れる場面である。
- Let us begin. You'll find in front of you a deck of Zener cards.
Please shuffle the deck thoroughly, and cut it.
Now place the deck face down in front of you.
When I say begin, you'll turn over the cards, one by one, and name each card.
(Columbo Goes to the Guillotine)
ここにはトランプに使う言葉もいろいろ出てくるが、おなじみの shuffle は「カードを混ぜる、シャッフルする、切る」、cut の方は"切る"ではなく「一組のカードを分けて上下を入れ替える」、または「一枚引く」で、この場面では二分して入れ替えていた。turn over the cards は「カードをめくる」。
日本語の「ESPカード」と同じく ESP cards が使われた場面もあった。Blake という登場人物がコロンボ警部にカードについて説明する。
- Blake: Now, you see, Lieutenant, these are six ESP cards.
Square, circle, cross, wavy line, triangle and a star.
I want you to mentally select one of them, then draw a picture of it in your notebook.
mentally select 「心のなかで選ぶ」はこう言えばいいことがわかる。square, circle, ...というのは、記号の説明である。このドラマでは triangle (三角)もあって、記号がひとつ多い6種類で1セットになっているのが変則的だ。
なお、DVDの字幕では a square, a circle, ... となっていたが、私が聞いた限りでは不定冠詞はなく、最後の star だけ a があるように聞こえたので、そのように書いてみた。また「波線」は3本なので wavy lines となるのではと思うが、セリフはどう聞いても単数である。このへんはよくわからない。英語はむずかしいものだ。
ドラマの後の方では、Blake と会ったコロンボが「妻とカードテストをやって記号を当ててみせた。カミさんはびっくり仰天」と語る場面があり、次のように再び Zener cards が出てくる。the experiment とは先ほどの ESP cards の場面を指す。
- Columbo: Do you remember the experiment you did with me over at the Institute, the one with the Zener cards? I tried it out on Mrs. Columbo.
Blake: Successfully, I hope.
Columbo: I'm gonna let you be the judge of that. Mrs. Columbo, she was absolutely astounded.
"I'm gonna let you be the judge of that." 「実際にお確かめになりますか」と言ってコロンボはテストを実演し、ブレイクが紙に書きつけたカードの記号を見事に当ててみせる。もちろんコロンボは超能力者ではないのでトリックがあり、すぐに種明かしをするのだが、それは書かないでおこう。
ついでだが Zener の発音記号はどの辞書も「ズィーナー」のようになっているが、研究室でのアナウンス(女性)と上記コロンボのセリフ(というか演じているピーター・フォーク)の発音は、どちらも「ゼナー」のように聞こえる。なお英和辞典の訳語(発音ではない)は「ゼナー」と「ジーナ―」の二通りの表記があった。
最後に Wikipedia の説明を引用しよう。ここでは「波線」は複数形になっている。またフランス語系の clairvoyance は「透視」(「千里眼」という日本語もあるが、もはや死語だろうか)、私はこの単語も英語を学び始める前の小学生の時に、超能力についての本で覚えてしまった。
- Zener cards are cards used to conduct experiments for extrasensory perception (ESP), most often clairvoyance. Perceptual psychologist Karl Zener (1903-1964) designed the cards in the early 1930s for experiments conducted with his colleague, parapsychologist J. B. Rhine (1895-1980).
The Zener cards were a deck made up of five simple symbols. The five different Zener cards are: a hollow circle (one curve), a Greek cross (two lines), three vertical wavy lines (or "waves"), a hollow square (four lines), and a hollow five-pointed star. There are 25 cards in a pack, five of each design.
( http://en.wikipedia.org/wiki/Zener_cards )
参考:超常現象やUFOなどに関係する記事は、下記のように自分も結構書いていた。
・謎の軍事基地「エリア51」とイチロー
・やはり実在した! 秘密軍事基地「エリア51」
・tinfoil hat 「電波系」「陰謀論を信じている人」(続・エリア51)
・空からの奇怪な落下物 (fafrotskies)
・あり得ない出土品 (OOPArt)
・外電も伝えた町村官房長官の「UFO発言」
・宇宙人の決まり文句 "Take me to your leader."
若い世代の人たちのために少し背景説明をすると、1970年代に、超常現象・ミステリーゾーン・謎の生物・UFO・古代文明の謎、といった話題が世界的に流行した。今も"サブカルチャー"の定番だろうが、当時は現在とは比較にならないほどの一大社会現象だった。あれはいったいどのような世相の反映だったのだろうか。
このうち、テレパシーや透視、予知といった「超能力」は、アメリカ政府が研究していると伝えられたり、"超能力者"が来日してテレビに出たりして話題となった。子供だった私も Extrasensory Perception (ESP) という言葉を覚えてしまったくらいだ。Esper 「エスパー、超能力者」を描いたSFも流行っていた。
そして、超能力の存在を調べるために使われるカードがあった。十字、マル、四角、星形、三本の波線、の5種類の記号で一組となり、被験者に見えないようにカードを引いて記号を当てられるかどうかテストするというものだ。
記号自体は平凡だが、5つすべての記号がセットで並ぶと、いかにも謎めいた雰囲気をかもし出すカードだった。
このカードが「刑事コロンボ」に出てきたので懐かしくなったわけである。英語の呼び名も今回初めて知った。後述するように Karl Zener という心理学者が考案したもので、ドイツ風の名前だがアメリカ人だそうだ。
前置きが長くなったが、セリフを引用しよう。まずは超能力テストを始めるアナウンスが研究室に流れる場面である。
- Let us begin. You'll find in front of you a deck of Zener cards.
Please shuffle the deck thoroughly, and cut it.
Now place the deck face down in front of you.
When I say begin, you'll turn over the cards, one by one, and name each card.
(Columbo Goes to the Guillotine)
ここにはトランプに使う言葉もいろいろ出てくるが、おなじみの shuffle は「カードを混ぜる、シャッフルする、切る」、cut の方は"切る"ではなく「一組のカードを分けて上下を入れ替える」、または「一枚引く」で、この場面では二分して入れ替えていた。turn over the cards は「カードをめくる」。
日本語の「ESPカード」と同じく ESP cards が使われた場面もあった。Blake という登場人物がコロンボ警部にカードについて説明する。
- Blake: Now, you see, Lieutenant, these are six ESP cards.
Square, circle, cross, wavy line, triangle and a star.
I want you to mentally select one of them, then draw a picture of it in your notebook.
mentally select 「心のなかで選ぶ」はこう言えばいいことがわかる。square, circle, ...というのは、記号の説明である。このドラマでは triangle (三角)もあって、記号がひとつ多い6種類で1セットになっているのが変則的だ。
なお、DVDの字幕では a square, a circle, ... となっていたが、私が聞いた限りでは不定冠詞はなく、最後の star だけ a があるように聞こえたので、そのように書いてみた。また「波線」は3本なので wavy lines となるのではと思うが、セリフはどう聞いても単数である。このへんはよくわからない。英語はむずかしいものだ。
ドラマの後の方では、Blake と会ったコロンボが「妻とカードテストをやって記号を当ててみせた。カミさんはびっくり仰天」と語る場面があり、次のように再び Zener cards が出てくる。the experiment とは先ほどの ESP cards の場面を指す。
- Columbo: Do you remember the experiment you did with me over at the Institute, the one with the Zener cards? I tried it out on Mrs. Columbo.
Blake: Successfully, I hope.
Columbo: I'm gonna let you be the judge of that. Mrs. Columbo, she was absolutely astounded.
"I'm gonna let you be the judge of that." 「実際にお確かめになりますか」と言ってコロンボはテストを実演し、ブレイクが紙に書きつけたカードの記号を見事に当ててみせる。もちろんコロンボは超能力者ではないのでトリックがあり、すぐに種明かしをするのだが、それは書かないでおこう。
ついでだが Zener の発音記号はどの辞書も「ズィーナー」のようになっているが、研究室でのアナウンス(女性)と上記コロンボのセリフ(というか演じているピーター・フォーク)の発音は、どちらも「ゼナー」のように聞こえる。なお英和辞典の訳語(発音ではない)は「ゼナー」と「ジーナ―」の二通りの表記があった。
最後に Wikipedia の説明を引用しよう。ここでは「波線」は複数形になっている。またフランス語系の clairvoyance は「透視」(「千里眼」という日本語もあるが、もはや死語だろうか)、私はこの単語も英語を学び始める前の小学生の時に、超能力についての本で覚えてしまった。
- Zener cards are cards used to conduct experiments for extrasensory perception (ESP), most often clairvoyance. Perceptual psychologist Karl Zener (1903-1964) designed the cards in the early 1930s for experiments conducted with his colleague, parapsychologist J. B. Rhine (1895-1980).
The Zener cards were a deck made up of five simple symbols. The five different Zener cards are: a hollow circle (one curve), a Greek cross (two lines), three vertical wavy lines (or "waves"), a hollow square (four lines), and a hollow five-pointed star. There are 25 cards in a pack, five of each design.
( http://en.wikipedia.org/wiki/Zener_cards )
参考:超常現象やUFOなどに関係する記事は、下記のように自分も結構書いていた。
・謎の軍事基地「エリア51」とイチロー
・やはり実在した! 秘密軍事基地「エリア51」
・tinfoil hat 「電波系」「陰謀論を信じている人」(続・エリア51)
・空からの奇怪な落下物 (fafrotskies)
・あり得ない出土品 (OOPArt)
・外電も伝えた町村官房長官の「UFO発言」
・宇宙人の決まり文句 "Take me to your leader."
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