ひきこもり=ひきコウモリ? ("hidden bat" ???) [読書と英語]
今回は、今読んでいるペーパーバックで目にとまった英語について書く。たぶん"お笑い"に属する話であるが、私が間違っているかもしれない。真相がわかる方がいらしたらご教示いただければ幸いである。
その本、Showa Japan は、日本に長く住み、日本人の奥さんを持つオランダ人銀行家が、戦後日本の政治・経済・社会について幅広く書いたものだ。
といっても、学者や評論家のような堅く難しい話ではなく、著者の個人的な体験や日本に暮らす外国人の視点をあちこちに織り交ぜて、昭和のニッポンと日本人をいきいきと活写している。「昭和は遠くなりにけり」的な感慨、昭和時代へのノスタルジーを随所で感じさせるのも、著者が日本人でないだけにおもしろい。
この本の、"オタク"や"ニート"など現代の若者について書いた The Emergence of Subcultures という章に、次のようなくだりがあった。文の一部分を書き抜いてみよう。
- the growing problem of computer game and internet addiction, and the millions of social dropouts, ranging from the various categories of freelance workers and otaku nerds, to the solitary hikikomori ("hidden bat")
(Showa Japan: The Post-War Golden Age and Its Troubled Legacy by Hans Brinckmann)
"hidden bat" なんて言い方があったのか。洞窟か何かに身を潜めているコウモリを想像し、引きこもり状態にこうした表現を当てるのだとしたらおもしろいものだと感心した。
数パラグラフあとにもまた出てきた。
- The second group are the hikikomori, the "hidden bats," young hermits in the middle of throbbing urban life, holed up in their rooms, some already for over a decade.
ここで辞書を引いてみたが、載っていない。ネットを検索すると、コンピューターのバッチファイル batch file の略語やバットマンの秘密基地の洞窟 Bat Cave などに hidden を冠した例はあったが、「昭和ジャパン」の文脈に合いそうなヒットはない。
ヘンだなあと思って、あらためてページを見つめる。hikikomori... やっと気がついたが、もしかして著者は komori の部分を「コウモリ」と受け取って "hidden bat" と英訳したのではないか。
本の最後には Glossary のページが設けれられており、
- Hikikomori ("hidden bats")
reclusive urban persons usually in their twenties to forties
と説明されているほか、Index にはしっかり hikikomori ("hidden bats") があって先に引用した部分のページが載っている。ていねいに作られた著作なのだ。
著者は日本語が達者なのだろうと思うし、執筆にあたっては日本人の知人からも協力があったであろうことは想像に難くない。
それだけに、hidden bat という英語表現があると信じたいところだが、やっぱり著者のカン違いでは、という考えは拭えない。真相はいかに?
こうした謎の言葉はあるものの、Showa Japan は(まだ読み終えていないが)おもしろく、おすすめしたい本である。アメリカ Amazon.com のカスタマーレビューでの評価も高い。上記の「ひきこもり」を含め、日本の事物を英語でどう表現したらいいかを研究する際にも役に立つだろう。
もうひとつ気になるところがあるとすれば、ちょっと不思議な雰囲気を持つ表紙で、何となく北朝鮮にありそうなポスターを連想してしまった。敗戦復興から経済大国化、そしてバブル崩壊と、激動の昭和の雰囲気を伝えるような装丁にしてほしかった。これも内容には関係ない、つまらないことではあるが。
参考記事:
・ジェームズ国王もびっくり! 「ジェームズ・キング編 聖書」
その本、Showa Japan は、日本に長く住み、日本人の奥さんを持つオランダ人銀行家が、戦後日本の政治・経済・社会について幅広く書いたものだ。
Showa Japan―the post-war golden age and its troubled legacy
- 作者: ハンス・ブリンクマン
- 出版社/メーカー: チャールズ・イ・タトル出版
- 発売日: 2014/03
- メディア: ペーパーバック
といっても、学者や評論家のような堅く難しい話ではなく、著者の個人的な体験や日本に暮らす外国人の視点をあちこちに織り交ぜて、昭和のニッポンと日本人をいきいきと活写している。「昭和は遠くなりにけり」的な感慨、昭和時代へのノスタルジーを随所で感じさせるのも、著者が日本人でないだけにおもしろい。
この本の、"オタク"や"ニート"など現代の若者について書いた The Emergence of Subcultures という章に、次のようなくだりがあった。文の一部分を書き抜いてみよう。
- the growing problem of computer game and internet addiction, and the millions of social dropouts, ranging from the various categories of freelance workers and otaku nerds, to the solitary hikikomori ("hidden bat")
(Showa Japan: The Post-War Golden Age and Its Troubled Legacy by Hans Brinckmann)
"hidden bat" なんて言い方があったのか。洞窟か何かに身を潜めているコウモリを想像し、引きこもり状態にこうした表現を当てるのだとしたらおもしろいものだと感心した。
数パラグラフあとにもまた出てきた。
- The second group are the hikikomori, the "hidden bats," young hermits in the middle of throbbing urban life, holed up in their rooms, some already for over a decade.
ここで辞書を引いてみたが、載っていない。ネットを検索すると、コンピューターのバッチファイル batch file の略語やバットマンの秘密基地の洞窟 Bat Cave などに hidden を冠した例はあったが、「昭和ジャパン」の文脈に合いそうなヒットはない。
ヘンだなあと思って、あらためてページを見つめる。hikikomori... やっと気がついたが、もしかして著者は komori の部分を「コウモリ」と受け取って "hidden bat" と英訳したのではないか。
本の最後には Glossary のページが設けれられており、
- Hikikomori ("hidden bats")
reclusive urban persons usually in their twenties to forties
と説明されているほか、Index にはしっかり hikikomori ("hidden bats") があって先に引用した部分のページが載っている。ていねいに作られた著作なのだ。
著者は日本語が達者なのだろうと思うし、執筆にあたっては日本人の知人からも協力があったであろうことは想像に難くない。
それだけに、hidden bat という英語表現があると信じたいところだが、やっぱり著者のカン違いでは、という考えは拭えない。真相はいかに?
こうした謎の言葉はあるものの、Showa Japan は(まだ読み終えていないが)おもしろく、おすすめしたい本である。アメリカ Amazon.com のカスタマーレビューでの評価も高い。上記の「ひきこもり」を含め、日本の事物を英語でどう表現したらいいかを研究する際にも役に立つだろう。
もうひとつ気になるところがあるとすれば、ちょっと不思議な雰囲気を持つ表紙で、何となく北朝鮮にありそうなポスターを連想してしまった。敗戦復興から経済大国化、そしてバブル崩壊と、激動の昭和の雰囲気を伝えるような装丁にしてほしかった。これも内容には関係ない、つまらないことではあるが。
参考記事:
・ジェームズ国王もびっくり! 「ジェームズ・キング編 聖書」
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はじめまして。
ソネットブログ内を見ていたらふと目にとまり、思わずコメントさせていただきました(^u^)
ひきこもりからhidden batsというのは思わず笑ってしまいました。
またお邪魔するかと思いますので、よろしくお願いいたします。
by disneyluv (2015-06-11 09:10)
disneyluvさん、コメントありがとうございました。お楽しみいただけたのでしたらうれしいです・・・しかしhidden batsとはよく思いついた?ものですね。またいらしてください。
by tempus fugit (2015-06-11 23:41)