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Lionesses 「なでしこイングランド」 (女子サッカーワールドカップ) [英語文化のトリビア]

イングランド版「ドーハの悲劇」といったら大げさだろうか。押し気味で迎えた後半、終了間際のアディショナルタイム。しかもまさかのオウンゴールで敗退とあって、イングランドとそのファンにとっては信じられない展開であり、衝撃であっただろう。

サッカーは熱狂的なファンというわけではない私だが、今回の試合は気になり、職場でテレビをちらちら見ながら仕事をしていた。

日本人として「なでしこジャパン」の決勝進出がうれしいのはもちろんだが、英語学習の面からは、むしろイングランド・イギリスで今回の敗北がどう伝えられているかの方に興味が湧く。

そこで仕事が終わって帰宅した後、英国メディアのウェブサイトをいろいろ見てみた。そうしたらあちこちで (the) Lionesses という言葉が目についたので取り上げてみよう。

こうしたニュースは、やはりタブロイド系の新聞のほうがおもしろい。

- England 1-2 Japan: Lionesses suffer last-gasp heartbreak as injury-time own goal dumps them out (見出し)
(Daily Mirror)

suffer last-gasp heartbreak というのが効いている。また和製英語としても使用が減ってきた感のある「ロスタイム」、最近では「アディショナルタイム」は injury-time が使われている。extra time, stoppage time という言い方もある。

- While Japan's freakish slice of luck was barely deserved, let's hear it for the Lionesses. They did us proud again.
(ibid.)

Japan's freakish slice of luck was barely deserved は、日本の勝利は単なるツキ、お天道様の気まぐれで勝っただけ、といった感じにとらえればいいだろうか。let's hear it for...は「~に拍手を」というイディオムだが、かえって悔しさと無念さが伝わってくるようだ。

さらに引用しよう。

- But despite England's valiant efforts, it was Japan who secured their place in the final after Bassett's own goal clipped off the bar to end the Lionesses' World Cup dreams.
(Daily Express)

- England's wait for a World Cup final appearance will extend beyond half a century after their Lionesses suffered the heart-break of an injury-time own-goal in their semi-final against Japan.
(Daily Mail)

lioness (メスのライオン)の語頭を大文字にし複数形にした今回の言葉だが、内容から、イングランドの女子代表チームを指すことは一目瞭然だ。「なでしこジャパン」のイングランド版ということになる。ライオンはイギリスの象徴なので、ぴったりという感じである(イングランドとイギリスは違う、ということについては立ち入らないことにする)。

というより、さらに調べてわかったのは、イングランド女子代表チームのニックネームが Three Lionesses であり、イングランドサッカー協会 The Football Association のエンブレムが3頭の獅子をあしらったものなのであった。

こうしたことはサッカーファンにはおなじみなのだろうが、私としては「またひとつ雑学が増えた」という気分になった次第である。

ついでに余談だが、ウェブを見ていると Japan beat England 2-1 といったタイトルを目にする。動詞 beat の過去形は同じく beat だが、新聞記事の見出しでは動詞を現在形にするのが原則なので、 beat となっているのは主語が複数形であることを意味するはずだ。

他にもこうした見出しの例があり、間違いではないようだ。そうすると、ここでの Japan は国名というより、チームを構成する選手たち、というとらえ方をしているのだろう。一方で Japan beats... と単数形扱いにしている見出しもあったので、これはチームをひとまとまりにしていることになる。

さて、今回のW杯を見ていてつくづく思ったのは、「女獅子」のみならずヨーロッパをはじめ海外の代表チームは、どこも選手の体格が立派だということだ。その中で、華奢ながらハンディを感じさせずに勝ち抜いていく「なでしこ」たちは本当にすばらしい。

とはいえ、対イングランド戦は敵失による辛勝であり、ばんざいムード一色の中で口にはしづらいものの、先の「デイリー・ミラー」ではないが、やはり運が良かったというのが正直なところではないか。決勝戦は大丈夫だろうか、ドキドキしながら観ることになりそうだ。

追記(2015年7月6日):
決勝戦は、やはり厳しい結果に終わった。”よくやった”ムード一色の中では口にしづらいが、前半あれよあれよと点を取られ、正直なところ、やはり力の差は歴然としていたのではないかと思った。とはいえ、もちろん「なでしこ」たちの健闘をたたえたいし、4年後に期待したい。

過去の参考記事:
さよなら小泉さん (lionを含む表現いろいろ)
翻訳者の命を奪った?「湾頭に吼えるライオン」 (at bay)
アメリカ人も「イングランド」を「イギリス」と間違える
cross-pollination 「相互交流」

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