buy the farm 「死ぬ、命を落とす」 [単語・表現]
先日紹介したSF小説 Redshirts で拾った表現をもうひとつ取り上げよう。スラング系の言葉には関心の薄い私だが、今回の buy the farm は、「農場を買う」という直訳からは想像もつかない「死ぬ」という意味で、どうしてそうなるのか興味を持ったのである。
まずは作品から引用する。
- "I mean that within five minutes of getting to my new post I heard three different stories of crew buying the farm on an away mission. Death by falling rock. Death by toxic atmosphere. Death by pulse gun vaporization."
(Redshirts by John Scalzi)
先日書いたように(→「技術的に」ではない technically)、この小説は宇宙船が舞台で、away mission とは惑星上陸などの船外活動を指す。こうした任務では下級士官ばかりが異常に高い死亡率を示し、上級士官は誰も落命することはないという不思議な事態が続いていることに下級士官の主人公が気づく・・・というストーリーだ(こう書くとシリアスな作品に聞こえるが、実は一種のユーモア小説である)。
ここに出てきた buy the farm は、直後に death が続くので類推ができたとはいえ、辞書を見て die, get killed という意味だと確かめても、やはり「へえっ」と思ってしまった。
ただどうしてそうなるのか、由来まで書いた辞書は見当たらない。そこでインターネットで調べてみると、説明が詳しかったのは The Word Detective というサイトだった。第2次世界大戦のパイロットたちの間で使われるようになった表現で、戦死したパイロットが死亡給付金で家族に農場を遺す、というような通説を紹介したあと、実はもっと信憑性が高そうな別の説があるとして、次のように記述している。
- Yet another possible origin is a bit less romantic, but probably closer to the truth. It was understood among pilots that when a plane crashed on a farm during training the farmer was likely to sue for damages to the farm, often for sums far in excess of the actual damage sustained. The more severe the crash, the higher the award for damages, often, it was said, enabling the farmer to pay off the farm's mortgage. So in a fatal crash, the pilot was said to have "bought the farm," paying with his life.
( http://www.word-detective.com/012504.html#buythefarm2 )
同じ墜死でも、家族に農場を遺すのではなく、墜落によって農場に与えた損害の補償にからむのだとしたら、確かに less romantic ではある。
なお辞書を見ていると、同義の表現として buy it 「(戦闘・事故で)殺される、死ぬ、撃たれる」をあげているものがあった。
「買う」という日本語で考えている限りではこれまた不思議だが、buy は obtain in exchange for payment という意味なので、payment が「お金」ではなく「生命」「犠牲」を払うことだと考えれば、こういった表現も何となく合点が行くように思った。
まずは作品から引用する。
- "I mean that within five minutes of getting to my new post I heard three different stories of crew buying the farm on an away mission. Death by falling rock. Death by toxic atmosphere. Death by pulse gun vaporization."
(Redshirts by John Scalzi)
先日書いたように(→「技術的に」ではない technically)、この小説は宇宙船が舞台で、away mission とは惑星上陸などの船外活動を指す。こうした任務では下級士官ばかりが異常に高い死亡率を示し、上級士官は誰も落命することはないという不思議な事態が続いていることに下級士官の主人公が気づく・・・というストーリーだ(こう書くとシリアスな作品に聞こえるが、実は一種のユーモア小説である)。
ここに出てきた buy the farm は、直後に death が続くので類推ができたとはいえ、辞書を見て die, get killed という意味だと確かめても、やはり「へえっ」と思ってしまった。
ただどうしてそうなるのか、由来まで書いた辞書は見当たらない。そこでインターネットで調べてみると、説明が詳しかったのは The Word Detective というサイトだった。第2次世界大戦のパイロットたちの間で使われるようになった表現で、戦死したパイロットが死亡給付金で家族に農場を遺す、というような通説を紹介したあと、実はもっと信憑性が高そうな別の説があるとして、次のように記述している。
- Yet another possible origin is a bit less romantic, but probably closer to the truth. It was understood among pilots that when a plane crashed on a farm during training the farmer was likely to sue for damages to the farm, often for sums far in excess of the actual damage sustained. The more severe the crash, the higher the award for damages, often, it was said, enabling the farmer to pay off the farm's mortgage. So in a fatal crash, the pilot was said to have "bought the farm," paying with his life.
( http://www.word-detective.com/012504.html#buythefarm2 )
同じ墜死でも、家族に農場を遺すのではなく、墜落によって農場に与えた損害の補償にからむのだとしたら、確かに less romantic ではある。
なお辞書を見ていると、同義の表現として buy it 「(戦闘・事故で)殺される、死ぬ、撃たれる」をあげているものがあった。
「買う」という日本語で考えている限りではこれまた不思議だが、buy は obtain in exchange for payment という意味なので、payment が「お金」ではなく「生命」「犠牲」を払うことだと考えれば、こういった表現も何となく合点が行くように思った。
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