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levee 「堤防」「土手」 (北関東で記録的な豪雨) [日本のニュース]

先日の台風がもたらした豪雨による河川氾濫の被害は海外のメディアでも大きく扱われたが、日本の気候が変わってきていると思わざるを得ない出来事だった。さらに首都圏で地震が起きたのに続いて阿蘇山も噴火し、頭上と足下いずれの自然災害に対しても不安が募る。

今回の水害についての英文記事をいくつか読んだが、目にとまったのが levee である。「堤防」というと bank dike が頭に浮かぶが、この単語で表すこともできる。

「決壊」を表す動詞といっしょに使われている実例を引用しよう。bank と levee の双方が出てくるが、辞書を見ると、前者は「川や湖、道などに沿った土手、岸、堤防、斜面」、後者には「洪水防止用の人工堤防、洪水の結果できた土手」「埠頭、波止場」などと書かれており、levee には"元からあったものではない"というニュアンスがあるように感じられる。

なお最初の文からは「避難指示」「避難勧告」をどう表現するかも学べる。

- The flood-ravaged city of Joso, Ibaraki Prefecture, failed to issue evacuation orders and advisories to about 350 households before a riverbank along the Kinugawa River collapsed Thursday.(中略)
But the remaining six (districts), which included about 350 households, were not instructed to evacuate until 2:55 p.m., or about two hours after the levee collapsed.
(Japan Times, Sept. 12, 2015)

- Joso Mayor Toru Takasugi offered an apology Sunday for a delay in issuing an evacuation order for some residents before the Kinugawa River breached its banks.
“I am very sorry. I never expected the levee to burst and failed to inform residents in areas where there were no reports about the river rising,” he told a news conference.
(Japan Times, Sept. 13, 2015)

- Parts of Joso, a community of 65,000 residents, were washed away when a levee on the Kinugawa river gave way, flooding an area spanning 12 square miles.
(Daily Mail, Sept. 14, 2015)

- The flood water can be seen up to the boot of this Toyota in the Joso after the Kinugawa River levee failed (写真のキャプション)
(ibid.)

ちなみに embank とすれば「堤防をめぐらす」を意味する動詞となる。テムズ川沿いにある道路や駅の名前になっている Embankment は、ロンドン巡りをした体験があるなら知っているという人も多いのではないだろうか。

今回の水害について私が読んだ範囲では dike (イギリス英語では dyke) を使った記事はほとんど目にしなかったが、偶然か。an embankment for controlling or holding back the waters of the sea or a river (Dictionary.com, based on the Random House Dictionary) という dike の定義を見る限り、使えないというような特別な意味があるとは思えない。

あらためて英語圏の辞書で levee を調べると、an embankment alongside a river, produced naturally by sedimentation or constructed by man to prevent flooding (Collins English Dictionary) のように、river と明記している記述が多いという印象を受けた。このへんに理由というか使用傾向のようなものがあるのかもしれない。

また辞書には、「持ち上げる」という意味のフランス語 lever の過去分詞に由来するという記述があった。そこで英語の lever や leverage とつながりがあることがわかる。ダンサーがパートナーを高く持ち上げる動作も levee というそうだ。

さらに、税金の取り立てや兵士の召集などに使う levy と発音が同じだなと思い、こちらも辞書を引いてみて知ったのだが、おもしろいことに由来が同じだった。土を盛り「上げる」のは levee で、カネや人を召し「上げる」と levy になる、と考えればいいだろうか。

なお、今回の台風18号は海外では Etau と呼ばれていたが、台風の国際的な名称の決め方や、同じ「台風X号」であっても常に Typhoon ~と呼べるわけではないことについて以前取り上げたことがあり、参考にしていただけたら幸いである(→フィリピンに台風接近~「台風」の英語呼称のことなど)。

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コメント 2

Kaz

現代フランス語では、動詞lever(ルヴェ)には、持ち上げる、徴収するなどの意味があり、この名詞がlevee(但し右から2つ目のeにアクサンがつきますが)これが英語に入ってleveeとかlevyと言う単語があると言うのは知りませんでした。勉強になります。
by Kaz (2015-09-15 14:38) 

tempus fugit

Kazさん、フランス語は不案内なので(学習歴だけはあるのですが・・・)ご説明をいただきありがとうございました。
by tempus fugit (2015-09-15 23:17) 

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