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duck 「水陸両用車」とその由来について [英語のトリビア]

先日アメリカのシアトルで、複数の留学生が死亡するいたましい交通事故が起きた。犠牲者に日本人が含まれていたと報じられたので、あらためて英文記事を読んでみた。そこで目にとまった単語 duck を取り上げることにしよう。

日本の新聞記事を読んで「バスと観光用の水陸両用車が衝突した」という予備知識があったので、意味はすぐにつかめた。

- At least four international college students were killed when a tour bus and a duck boat tourist vehicle collided Thursday morning in Seattle, officials said.
(中略)
The duck boat tour operator issued a statement after the crash.
"Ride the Ducks of Seattle wishes to express its sincerest condolences to the family and friends of the people who were killed and those that were injured," it said.
(中略)
It is unclear why the duck boat -- a street vehicle that can double as a boat -- hit the bus as they drove across the six-lane bridge.
("Four international students dead as bus, duck tour vehicle collide in Seattle" CNN, September 25, 2015
http://edition.cnn.com/2015/09/24/us/seattle-tour-bus-duck-tour-fatal-accident/)

「水陸両用」というと、amphibious amphibian という難しい単語を使いたくなるが、こんな簡単な言い方があるわけで、「アヒル」にたとえるとはうまく考えたものだ。あるいは、「ひょいと身をかわす」「頭をちょっと水に入れる」(またそうした動作の名詞)という意味もあるので、そちらにかけたものかもしれない。

・・・そう思って英和辞典を見ると、あにはからんや、どの辞書も「アヒル」や「かがむ(こと)」とは別に見出しを立てている。こうした場合、綴りは同じでも由来や意味が異なるなど直接の関係がないことを示すはずだ。

次に引用する「研究社新英和大辞典」は、duckの4つめの見出し語としている。

- (口語)(第二次大戦に米国が初めて使用した)水陸両用(輸送)トラック(水陸両用車)《水中ではプロペラ、陸上では車輪で走るトラック》
米海軍の発注暗号名 DUKW, Dukw から

なんと、アメリカ海軍の暗号名に由来するのであった。

さらに英語圏のオンライン辞書を見てみた。イギリスの Oxford Dictionaries は名詞の見出しに「アヒル」といっしょに書いていたが、American Heritage Dictionary はこの車の本家アメリカの辞書とあってか別の見出しとして扱い、由来となった暗号についても“解読”して説明していた。

まず前者 Oxford を引用しよう。

- (also duck boat)
An amphibious transport vehicle.
(Respelling of DUKW)

さらに Oxford は DUKW について

- An amphibious transport vehicle, especially as used by the Allies during World War II. Also called duck.
Origin
An official designation, being a combination of factory-applied letters referring to features of the vehicle.

と簡単に説明していたが、後者 American Heritage Dictionary は前述のように、

- From a sequence of codes used by General Motors Corporation : D, 1942 (first year of production) + U, utility truck, amphibious + K, front-wheel drive + W, tandem axle.

のように”暗号解読”している。

さらに Wikipedia の DUKW の項には、ノルマンディ上陸作戦で使われたことや世界各地で観光を含めて広く利用されている現状などについて、写真とともに記述があった。興味のある方はご一読されたい。
https://en.wikipedia.org/wiki/DUKW

また、今回の事故で一方の当事者となった Ride the Ducks of Seattle のウェブサイトも、DUKW History というページを設けてまとまった記述をしている。

とはいえ、このサイトに出てくるマスコットキャラクターはやはりアヒルだ。だからというわけではないが、アメリカ人でも、水陸両用車の duck はアヒルにちなむものと考えている人が結構いるのではないかと想像するが、どうだろうか。

ついでに duck つながりの余談だが、私が大学生の時、当時のレーガン米大統領が狙撃される事件があり、銃弾を受けて搬送される大統領が夫人に "Honey, I forgot to duck."(タマをよけるのを忘れちゃったよ)と飛ばした気丈なジョークは大いに喧伝された。

私も以前取り上げたことがあるが(→「かわす」 duck)(→レーガン大統領の英語に学ぶ)、この言葉は今でも語り継がれている”アメリカ英語の常識”といえそうなので、覚えておいて損はないだろう。

タグ:レーガン
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