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entre nous, inter nos 「ここだけの話」「内緒ですよ」 (新・刑事コロンボ "It's All in the Game") [刑事コロンボ]

前回取り上げた hush-hush から、entre nous という表現を連想した。見ての通りフランス語に由来し、between us, between you and me 「他の人には言わないで」ということである。TVドラマ「刑事コロンボ」(新シリーズ)で出会ってメモしていたものだ。

It's All in the Game というエピソードに出てきたもので、社交界のセレブである犯人の女性 Lauren は、彼女を怪しいとにらんだコロンボの捜査の手が伸びてきたのを感じると、色香を振りまいて手心を加えてほしいとほのめかす。以下はそうした場面のひとつで、彼女が買い物をしているところにコロンボがやってくる。

Lauren は「被害者は事件当日ポーカーをしに行くと言っていた」と証言していたが、コロンボは「ポーカー仲間に聞いたらそんな予定はなかったと言われ、捜査報告書に書くにはつじつまが合わない」と告げる。すると彼女は「合わないといえばあなたのネクタイはジジ臭くて似合わない、新しいのを買ってあげる」と言い出す。

- Columbo: That's just not gonna look too good on the report.
Lauren: You know what else doesn't look good?
Columbo: What?
Lauren: Your tie. It doesn't look good. (中略) I'm gonna buy you a new tie. This tie is for older men and you're not old. Why you wanna appear old?

コロンボは困った顔をして「本庁はこの手の贈り物にはうるさい」と言うが、Lauren が「2人だけの秘密」だと言うと、じゃあ報告書ではポーカーということにしておきましょう、と丸め込まれたふりをする。

- Lauren: Now, let's find you a proper tie. (中略) Here, I think this one has some life.
Columbo: You know, they're kind of tough down at headquarters about accepting bribes.
Lauren: Well, I understand, but this is strictly entre nous.
Columbo: ...Right. So, what I'll do, ma'am, is...I'm gonna put down "poker."

entre nous を辞書で引いたら、「他言無用」の類義語としてラテン語由来の inter nos という言葉が載っていた。前者は元のフランス語に従って nous の -s は英語でも発音しないが、後者の nos は /nous/ となっている。

私は第2外国語でフランス語を取ったが追試を受けたくらいなので(語学の才能がないのだ)、以下は受け売りだが、フランス語は母音を無理に伸ばさないのに対し、それが英語化されると軒並み長音化される傾向にあるらしい。nous も元は /nu/ のはずだが、英語では /nu:/ という発音記号が辞書に書かれている。今回の犯人も「ヌゥー」と言っているように聞こえ、私が言うのも何だが、おフランス成分にやや欠ける。

その Lauren を演じているのは、アメリカン・ニューシネマの傑作「俺たちに明日はない」 Bonnie and Clyde で実在の女強盗犯ボニーを凄演した大物女優フェイ・ダナウェイ Faye Dunaway だ。彼女はこの「コロンボ」のエピソードで1994年のエミー賞(ドラマ部門助演女優賞)を受賞した。

確かに、ここでのダナウェイは、コロンボを演じる主演のピーター・フォークともども本当に素晴らしい。上品な色気を武器に刑事に気があるかのように振る舞い、その追及から逃れようとするが、いつしかコロンボに本当に愛情を抱いていくかのように見えてくる。また対するコロンボも、Lauren の戦略にはまったふりをしているうちに彼女に惹かれていく(と彼女に信じこませる)かのような態度を見せる(複雑な説明だが)。

作品につけられた "It's All in the Game" も、私の英語力では誤解をしているかもしれないが、絶妙なタイトルと感じられる。中年の男女間の、嘘かまことかわからないような微妙な心の通い合い、同時に、お互いに相手を化かそうとする駆け引き。いろいろな意味での game が伝わってくるようだ。なおこのタイトルはアメリカで1950年代にヒットしたラブソングと同じだが、その歌詞を見たら、このエピソードとつながるかのような "Soon he'll be there at your side" なんて言葉もあった。

一方で、これは「コロンボ」の作品としては、まったく「らしくない」エピソードである。見せかけの戦術であったとしても、従来の彼のイメージにそぐわないコロンボの姿に当惑する。ファンの間では厳しい声があるのも納得できるような、評価の難しいエピソードなのだ(ついでだが、「恋におちたコロンボ」という、メロドラマの二番煎じのような邦題がつけられてしまったのにも驚愕する。今回の記事のタイトルにも到底書く気になれなかった)。

それはともかく、自分から使うことは一生なさそうな entre nous という表現だが、between ourselves 以外の説明を引用して終わりにしよう。流石おフランスだけあって「フォーマル」とラベルづけされている。

- formal used when telling someone something that is secret and should not be told to anyone else:
He told me - and this is strictly entre nous - that he's going to ask Ruth to marry him.
(Cambridge Advanced Learner's Dictionary)


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