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2015年の Word of the Year は単数(!)の they [Word of the Year]

毎年はじめの楽しみである American Dialect Society の「英単語大賞」が決まった。一足早く発表されたオックスフォード社の2015年の選定は、すでに取り上げたように emoji (絵文字)という意表を突くものだったが、アメリカ英語学会の決定も、これまた「へえっ」と思わせる結果だった。

2015 Word of the Year is singular “they”
http://www.americandialect.org/2015-word-of-the-year-is-singular-they

英語には、性別を問わない三人称単数の人称代名詞がない。私が英語学習を始めた数十年前には、性が決められない・わからない場合は、強引に he で通してしまう例がまだ普通に見られたように記憶している。

しかしジェンダーの公平性・中立性の立場から、he or she といった言い方を目にするようになった(余談だが、同様に、一般的な意味での man も徐々に使われなくなった。私の好きなTVドラマ「スター・トレック」 Star Trek のオープニングナレーションは、1960年代後半の最初のシリーズでは "...to boldly go where no man has gone before" という、分離不定詞の例文としても有名な言葉が入っていたが、1980年代後半に作られた新シリーズでは、ここが "no one" に変わった)。

he or she は今も使われているが、さらには複数である they をこの意味で使うことが増えた。辞書にも記載されるようになったが、それでも、口語であるとか、文法的に正式な用法ではない、といった注意書きがついていることが多いと思う。

今回の Word of the Year の選定は、この they の意味・役割を積極的に認めようという動きと考えられそうだ。発表文から少し引用しよう。

- They was recognized by the society for its emerging use as a pronoun to refer to a known person, often as a conscious choice by a person rejecting the traditional gender binary of he and she.
(中略)
The use of singular they builds on centuries of usage, appearing in the work of writers such as Chaucer, Shakespeare, and Jane Austen. In 2015, singular they was embraced by the Washington Post style guide. Bill Walsh, copy editor for the Post, described it as “the only sensible solution to English’s lack of a gender-neutral third-person singular personal pronoun.”
(ibid.)

つまり、単数に they を使うのは実は最近の話ではなく、古くはチョーサーやシェークスピア、そしてジェーン・オースティンなどの作品にも出てくるのだという。

発表文によれば、去年は「ワシントン・ポスト」紙が、単数を表す they を使って良いと自社の記事スタイルブックに盛り込んだほどなので、もうこの意味での they はすでに十分定着しているといえそうだ。

American Dialect Society の選定メンバーは次のようにコメントしている。

- “In the past year, new expressions of gender identity have generated a deal of discussion, and singular they has become a particularly significant element of that conversation,” Zimmer said. “While many novel gender-neutral pronouns have been proposed, they has the advantage of already being part of the language.”
(ibid.)

保守的な人、あるいは日本の学校英文法は、すぐには they や their で受けることを認めないかもしれないが、こちらを使う流れは止められないだろう。何せ時代はさらに先に進み、Mr. と Ms. のどちらにも使える(つまりジェンダーを示さない) Mx という語すら登場してきたくらいなのだから。

なお、Oxford 社が「2015年の英単語」に選んだ emoji は、American Dialect Society の選考では候補にもなっていなかったが、その代わりということだろうか、いくつかの部門賞のひとつとして、今回新たに "Most Notable Emoji" というカテゴリーが設けられていた。

参考記事:
・オックスフォード版「2015年の英単語」は emoji(絵文字)!
http://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2015-12-18

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