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jaw hits the floor 「あごがはずれるほど驚く」 (“第9惑星”が存在か?) [ニュースと英語]

冥王星が惑星から準惑星に格下げされて話題となったのは10年前、このブログを始めて間もない頃で、私も何度か取り上げた。このほど、ホンモノの第9惑星が存在するかもしれないとの研究が報じられ、ワクワクしながら英文記事をいくつか読んでみた。

未発見のうえ夢のある話とあってか、専門的な難しい書き方ではなく、親しみやすく記述した記事が目立ち、読み比べるのがおもしろかった。その中ではロイター通信の記事はどちらかといえば淡々としたスタイルとの感じがしたが、使われていた my jaw hit the floor. という表現が目を引いたので、取り上げてみたい。

今回の研究では、発表した科学者自身、未発見の大型惑星を想定しなければ現象の説明がつかないという計算上の結果を見て、はじめは何かの間違いではないかと思ったという。

- Brown and astronomer Konstantin Batygin, also at Caltech, initially were skeptical that such a large planet would have eluded detection.

But they modeled the hypothetical planet’s gravitational effects on several known bodies in the region and found a near-perfect match.
(中略)
At that point, "my jaw sort of hit the floor," Brown said in a statement.
("Researchers find possible ninth planet beyond Neptune"
http://www.reuters.com/article/us-space-planet-idUSKCN0UY29X)

研究者たちが所属するカリフォルニア工科大学の一般向け発表文にも(当然と言えるが)同じ言葉が載っていた。文脈から、「ひどく驚いた」という意味だろうとあたりはついたが、辞書を引いても載っていない。そこでインターネットで調べると、

- Australian Slang astonished; shocked
(Slang Dictionary)

この表現の意味を尋ねる質問もネットにあり、同じ内容の答えだったので、間違いはなさそうだ。「腰を抜かす」ならぬ「アゴが床にぶつかる」ほどビックリする、という表現がどのようにできたのか、由来などの説明を見つけることはできなかったが、それにしてもオーストラリア英語のスラングだったとは。

これを使った Michael Brown 博士はアメリカ人で、この人については過去の関連記事でも触れたことがあるが(→さよなら冥王星 (dwarf planet))(→幻の「第10惑星」の名前決まる)、言葉遣いが巧みでユーモアあふれる人物のようだ。その才を発揮して、英語とはいえ自国のものではない言い回しを使ったのか、あるいはこの表現自体、オージーイングリッシュの枠を超えて使われる、または通じるようになっているということか。いずれにしろおもしろい言い方なので、スラングではあるが取り上げてみたしだいである。

ところでこのブラウン先生、10年前に冥王星を惑星の座から引きずり下ろした張本人として、いまだに恨みを買っているらしい(これも以前の記事で書いたことだが、冥王星を発見したのはアメリカ人のためか、彼の国ではこの星に対する思い入れが強いという)。

しかしそんな冷たい眼にめげるような先生ではなかった。冥王星の降格について書いた自著に How I Killed Pluto and Why It Had It Coming というすごいタイトルをつけている(have it coming は「当然の報いを受ける」「自業自得」)。

それだけではない、ご自分のツイッターのアカウントに、なんと plutokiller という言葉を使っていることを知った。今回の Planet Nine (仮称)の研究を紹介するのに、マスメディアがこの言葉を放っておくはずがなく、次のような見出しをつけた記事があった。

- Has “PlutoKiller” discovered a new ninth planet?
(http://www.euronews.com/2016/01/21/has-plutokiller-discovered-a-new-ninth-planet/)

- To be or not to be: @Plutokiller finds Planet Nine
(http://astrobiology.kiwi/to-be-or-not-to-be-plutokiller-finds-planet-nine/)

ブラウン先生自身が今回の研究についてアップしたツイートも下記のようなユーモラスなもので、いろいろなメディアに引用されていた。

- OK, OK, I am now willing to admit: I DO believe that the solar system has nine planets.

- And, by the way, Planet Nine is definitely a "planet."

あとは、この「第9惑星」が実際に発見されるのを待つばかり、ということになりそうだ。ハワイにある日本の「すばる望遠鏡」も探索に参加する予定だという。“予言”どおり発見に至って、私もこのブログで取り上げることができる日を今から楽しみにしている。

過去の参考記事:
2006年流行語大賞は「冥王星する」
さよなら冥王星 (dwarf planet)
幻の「第10惑星」の名前決まる
trickle 「ちょろちょろとした流れ」 (冥王星に探査機が到達)

How I Killed Pluto and Why It Had It Coming

How I Killed Pluto and Why It Had It Coming

  • 出版社/メーカー: Spiegel & Grau
  • 発売日: 2010/12/07
  • メディア: Kindle版


タグ:科学・技術
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Kawada

jaw hits the floorで、連想したのが、「トムとジェリー」でした。アニメでしかこのような現象はあり得ないと思っておりましたが、まさか本当にこのようなフレーズがあることは存じ上げなかった次第です。
by Kawada (2016-01-26 13:40) 

tempus fugit

Kawada さま、コメントありがとうございました。なるほど、実際にはかなり認知されている表現なのかもしれませんね。
先日インターネットラジオを聞いていたらこの話題が取り上げられていて、Brown博士へのインタビューも使われていましたが、やはり "My jaw hit the floor." と言っていました。先生お気に入りの表現なのでしょうか。

by tempus fugit (2016-01-27 01:05) 

Keeyo

NPR July 12, 2015の放送:Joaquin El Chapo Guzmanが脱出の際に使ったトンネルの説明を受けるレポーターたちについて、NPRのCarrie Kahnが ”Their Jaws are on the ground here.” とレポートしていました。jaws+floorでもうほぼ定番なのではないでしょうか。
by Keeyo (2016-03-03 12:19) 

tempus fugit

Keeyoさん、実例を紹介していただきありがとうございました。もう広く使われているのでしょうね。今更ながら、辞書の情報は現実に追いつくことはできないとの感を深くします。

by tempus fugit (2016-03-04 10:07) 

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