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Close, but no cigar. 「惜しい」「あと一歩」 (続・“第9惑星”が存在か?) [単語・表現]

本物の第9惑星が存在するかもしれないという研究が発表されたことについて先日書いたが(→jaw hits the floor 「あごがはずれるほど驚く」)、これを報じる英文にもうひとつおもしろい表現があったので取り上げたい。研究を行ったカリフォルニア工科大学が出した記事にあった close, but no cigar である。

太陽系の外縁にある6つの小天体が理屈にあわない軌道で太陽の周りを回っていることがわかり、研究を進めていた Caltec の2人の学者は、未知の惑星から影響を受けているのであれば説明がつくと考えた。6つの小天体の軌道を収めるように公転する惑星を想定してシミュレーションをしてみたが、ほんのわずかではあるが完璧とはいえない点が残った。この時に研究者のひとりが発したのが、今回の表現である。

- Batygin says that almost works but does not provide the observed eccentricities precisely. "Close, but no cigar," he says.
("Caltech Researchers Find Evidence of a Real Ninth Planet"
https://www.caltech.edu/news/caltech-researchers-find-evidence-real-ninth-planet-49523)

続いて2人は、6つの天体の軌道とは外れる形で公転する大型の惑星を想定してシミュレーションしたところ、今度はピッタリの結果が得られた。そこで「第9惑星」が存在する可能性がある、と発表する運びとなったわけである。

前置きが長くなったが、この表現は「もうあと一息のところだった。惜しい」「もうちょっとでうまくいったのに」という意味であり、ゲームなどの賞品として葉巻が出たことに由来する、という記述が辞書に載っている。

- North American informal (Of an attempt) almost, but not quite successful.
(Referring to a cigar received in congratulation)
Despite demographic changes, all signs are that it will be another case of close but no cigar.
These fall into the ‘close but no cigar’ category.
It's a worthy effort: close but no cigar.
(Oxford Dictionaries)

- Cliche Some effort came close to succeeding, but did not succeed.
(Alludes to not quite winning a cigar as a prize.)
Jill: How did you do in the contest?
Jane: Close, but no cigar. I got second place.
(McGraw-Hill Dictionary of American Idioms and Phrasal Verbs)

- (American & Australian humorous) something that you say to someone if what they tell you or what they do is nearly correct but not completely
Usage notes: A cigar (= a type of thick cigarette) was sometimes used as a prize in games and competitions people paid to play.
'Is his name Howard?' 'Close, but no cigar. It's Harold.'
(Cambridge Idioms Dictionary)

最近はタバコ類をたしなむ人が減ってきたが、喫煙が当然だった時代に生まれた表現は今も使われているということになるだろうか。

なお Caltec の英文記事は、わかりやすさを心がけて記述しているという印象を受ける。日本の JAXA のサイトも親しみやすい。こうした、学術論文のスタイルを避けて一般向けであることを意識した広報に力を入れる研究機関が増えているのだろう。

こうした傾向は政府機関にも見られるもので、例えばアメリカの省庁のウェブサイトを見ていると、自分たちの施策について、新聞社や通信社の記事としてそのまま通用しそうな英文が掲載されていることがある。

ありがたいことではあるが、そこに盛り込まれている要素や視点はあくまで当事者が選んだものであり、一種の情報操作であることを忘れてはなるまい。

過去の参考記事:
close shave 「深ぞり」「危機一髪、命拾い」 (「007 ゴールドフィンガー」)

タグ:科学・技術
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コメント 3

Kawada

tempus fugitさま
インターネットでClose, but no cigarを調べてみました結果、The Phrase Finderなるサイトに、「『ゲームなどの賞品としてタバコ渡したところから来た表現』と言われているが、未だ確固たる証拠はつかめていない」とありますが、その点はどうなのでしょうか。
by Kawada (2016-01-28 19:05) 

tempus fugit

なるほど、どうなのでしょうね。私は今回Phrase Finderにもあたらず辞書の記述を引用するにとどめましたが、ぜひ調べていただき、何かわかりましたら教えていただけましたらうれしいです。

一般論として、言葉の由来には異説がつきもので、辞書に書いてあったから正しいとは限らない場合もあるでしょう。専門家でない私はその正確性や真偽を云々できないので、話の種・ブログの副次的なネタとして楽しむのが精一杯というところでしょうか。
by tempus fugit (2016-01-30 10:41) 

Kawada

tempus fugit様
なるほど、そのような楽しみ方もあるのですね。
私がブログを立ち上げ、辞書、インターネット等を使っても確実な情報が得られなかった場合、tempus fugit様の手法を利用させていただきます。
改めて、ブログの創造性が分かりました。
お忙しい中、どこの馬の骨とも知らぬ私のコメントのために、貴重なお時間を割いてくださり、ありがとうございます。
これからも、よろしくお願いします。
by Kawada (2016-01-30 17:10) 

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