contested convention 「決戦は党大会!」 [辞書に載っていない表現]
今月15日が the Ides of March と呼ばれることは以前書いたことがあるが(→「3月15日に気をつけよ」 )、この表現を使った報道も見られた「ミニ・スーパーチューズデー」で、トランプ氏が代議員数を上積みした。これに関連して、最近目にすることが増えてきた contested (あるいは brokered) convention を取り上げたい。
かくいう私もトランプ旋風が起きるまで知らなかった言葉である。最初に気づいた記事が何だったか覚えていないが、文脈から何となく意味をつかむことができた。
トランプ氏の躍進には、同じ共和党の主流派が危機感を抱き、彼が党の候補に指名されるのを阻止しようとする動きすらみせている。
主流派が描くシナリオのひとつは、今後トランプ氏の勢いに多少のブレーキがかかり、このままトップを走っても代議員の過半数を獲得できないまま7月の共和党大会を迎えるというものだ。
その場合、党大会で複数の候補者について投票を繰り返し、その結果、トランプ氏以外の人物が指名されることもありうるのだという。これが contested convention である。決戦、いや決選の党大会ということか、日本語の決まった呼称があるのかどうかわからなかったが、とにかくこうした決め方があるのだそうだ。
ダントツの人気を持つ人物が党の候補に選ばれないとなると、党は分裂状態になりかねない。主流派の中には、そんな事態によって引き起こされる混乱や党のイメージダウンの方が、トランプ氏が候補になるよりもまだマシだという考えが生まれていることになる。
不可解と思えばいいのか、理解できると言うべきなのか、こちらも困ってしまうような状況だが、アメリカの政治・社会の分裂が進んでいることを示す例なのかもしれない。
それはともかく、この言葉が出てくる記事をあげよう。もともと the Ides of March を使っているミニ・スーパーチューズデーの記事を検索して見ていたら contested convention が出てきたので、そうだこれについて書こう、と思った次第である。
- With Trump capturing Florida’s 99 delegates and collecting more with wins in Illinois and North Carolina, there are two probable outcomes in this year’s Republican race, neither of which is likely to bode well for the party.
One is that Trump wins the nomination. The other is that he falls short of the 1,237 delegates needed for a majority and is denied the nomination at a contested convention in Cleveland.
("The Ides of March primaries: Our view" USA Today, March 15, 2016
http://www.usatoday.com/story/opinion/2016/03/15/donald-trump-hillary-clinton-primary-florida-ohio-editorials-debates/81844244/ )
また TIME 誌の記事は brokered convention という呼び方をしていて、実例を図解にしてその仕組みを説明している。例として取り上げているのは1952年の民主党大会での候補者決定プロセスだ(その結果指名されたのは、私もこのブログで何回か取り上げたことのあるスティーブンソン Adlai Stevenson だった)。私も実は仕組みをちゃんと理解してはいないので、よく読んでみるつもりだ。
その記事の冒頭部分である。
- As Donald Trump continues to rack up wins in the Republican primaries, the political class is increasingly debating whether he could be stopped at the party’s convention. In that scenario, which is known as a brokered or contested convention, Trump would enter the July gathering with the most delegates, but not enough to clinch the nomination, which would then free the party’s delegates to potentially select a different nominee.
( http://time.com/4252345/brokered-convention-graphic/ )
主流派が望みを託しているのは、政治経験の豊富なオハイオ州知事のケーシック Kasich 氏だという。New York Times 紙が共和党候補の中では彼への支持を表明した時に、恥ずかしながら私もようやく「そんな人物がいるんだ」と認識したのだが、今回地元を制して踏みとどまった。トランプ氏に代議員の数で追いつくことは到底不可能だが、先に書いたように過半数の獲得阻止に持ち込めば大逆転の目が出てくることになる。
奇しくも7月に共和党大会が開かれるのは地元クリーヴランドだ。15日の勝利宣言でケーシック氏は、
- We are going go all the way to Cleveland and secure the Republican nomination.
とぶちあげた。また、
- I will not take the low road to the highest office in the land.
と述べたが、これは以前、ジェブ・ブッシュ氏から放たれたネガティブキャンペーンに対してケーシック知事が "Jeb’s taken a very low road to the highest office in the land." と応じたコメントを再利用したものだろう。
地元でありながらクリーヴランドへの道のりは遠く険しいものになりそうだが、はたして今後の展開はどうなるだろうか。
参考・Adlai Stevenson 関連の過去の記事:
・アドレイ・スティーブンソンと大衆文化
・キューバ危機での「イエスかノーか」
・「たまご頭」とは何か (egghead)
・chaff を使った名言
かくいう私もトランプ旋風が起きるまで知らなかった言葉である。最初に気づいた記事が何だったか覚えていないが、文脈から何となく意味をつかむことができた。
トランプ氏の躍進には、同じ共和党の主流派が危機感を抱き、彼が党の候補に指名されるのを阻止しようとする動きすらみせている。
主流派が描くシナリオのひとつは、今後トランプ氏の勢いに多少のブレーキがかかり、このままトップを走っても代議員の過半数を獲得できないまま7月の共和党大会を迎えるというものだ。
その場合、党大会で複数の候補者について投票を繰り返し、その結果、トランプ氏以外の人物が指名されることもありうるのだという。これが contested convention である。決戦、いや決選の党大会ということか、日本語の決まった呼称があるのかどうかわからなかったが、とにかくこうした決め方があるのだそうだ。
ダントツの人気を持つ人物が党の候補に選ばれないとなると、党は分裂状態になりかねない。主流派の中には、そんな事態によって引き起こされる混乱や党のイメージダウンの方が、トランプ氏が候補になるよりもまだマシだという考えが生まれていることになる。
不可解と思えばいいのか、理解できると言うべきなのか、こちらも困ってしまうような状況だが、アメリカの政治・社会の分裂が進んでいることを示す例なのかもしれない。
それはともかく、この言葉が出てくる記事をあげよう。もともと the Ides of March を使っているミニ・スーパーチューズデーの記事を検索して見ていたら contested convention が出てきたので、そうだこれについて書こう、と思った次第である。
- With Trump capturing Florida’s 99 delegates and collecting more with wins in Illinois and North Carolina, there are two probable outcomes in this year’s Republican race, neither of which is likely to bode well for the party.
One is that Trump wins the nomination. The other is that he falls short of the 1,237 delegates needed for a majority and is denied the nomination at a contested convention in Cleveland.
("The Ides of March primaries: Our view" USA Today, March 15, 2016
http://www.usatoday.com/story/opinion/2016/03/15/donald-trump-hillary-clinton-primary-florida-ohio-editorials-debates/81844244/ )
また TIME 誌の記事は brokered convention という呼び方をしていて、実例を図解にしてその仕組みを説明している。例として取り上げているのは1952年の民主党大会での候補者決定プロセスだ(その結果指名されたのは、私もこのブログで何回か取り上げたことのあるスティーブンソン Adlai Stevenson だった)。私も実は仕組みをちゃんと理解してはいないので、よく読んでみるつもりだ。
その記事の冒頭部分である。
- As Donald Trump continues to rack up wins in the Republican primaries, the political class is increasingly debating whether he could be stopped at the party’s convention. In that scenario, which is known as a brokered or contested convention, Trump would enter the July gathering with the most delegates, but not enough to clinch the nomination, which would then free the party’s delegates to potentially select a different nominee.
( http://time.com/4252345/brokered-convention-graphic/ )
主流派が望みを託しているのは、政治経験の豊富なオハイオ州知事のケーシック Kasich 氏だという。New York Times 紙が共和党候補の中では彼への支持を表明した時に、恥ずかしながら私もようやく「そんな人物がいるんだ」と認識したのだが、今回地元を制して踏みとどまった。トランプ氏に代議員の数で追いつくことは到底不可能だが、先に書いたように過半数の獲得阻止に持ち込めば大逆転の目が出てくることになる。
奇しくも7月に共和党大会が開かれるのは地元クリーヴランドだ。15日の勝利宣言でケーシック氏は、
- We are going go all the way to Cleveland and secure the Republican nomination.
とぶちあげた。また、
- I will not take the low road to the highest office in the land.
と述べたが、これは以前、ジェブ・ブッシュ氏から放たれたネガティブキャンペーンに対してケーシック知事が "Jeb’s taken a very low road to the highest office in the land." と応じたコメントを再利用したものだろう。
地元でありながらクリーヴランドへの道のりは遠く険しいものになりそうだが、はたして今後の展開はどうなるだろうか。
参考・Adlai Stevenson 関連の過去の記事:
・アドレイ・スティーブンソンと大衆文化
・キューバ危機での「イエスかノーか」
・「たまご頭」とは何か (egghead)
・chaff を使った名言
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