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with an asterisk 「ただし書きがつく」 (イチローが通算安打記録) [辞書に載っていない表現]

海外で最近相次いでニュースになった日本人として、先日は舛添知事について書いたが、もうひとりはもちろんイチローである。ピート・ローズの記録を抜いたといっても、土俵の違う日米での安打の合計だ、とクギを刺すトーンがアメリカのメディアには感じられた。インタビューでのイチローも、そのへんを意識してかクールな印象を受けた。

アメリカ側のそんな受け止め方は、ネットの記事につけられた下記のようなタイトルにも現れているように思う。

- "Ichiro's feat astounding, but Rose rules hit parade"
- "Ichiro Suzuki Moves Past Pete Rose, With an Asterisk"

後者は「ニューヨーク・タイムズ」紙の記事だが、この with an asterisk という表現が本文でも使われている。

- Suzuki’s mark, however, does come with an asterisk: His 2,979 hits in Major League Baseball are supplemented by the 1,278 he compiled when he played for the Orix BlueWave of the Japan Pacific League at the start of his career.

While Suzuki’s chase of Rose’s mark has been big news in Japan, Rose himself, while praising Ichiro’s talent, has been dismissive of the feat.
(http://www.nytimes.com/2016/06/16/sports/baseball/ichiro-suzuki-ties-pete-rose-with-an-asterisk.html?_r=0)

asterisk は「星じるし」、* のマークである。star を意味するギリシャ語やラテン語に由来するのは asteroid 「小惑星」「ヒトデ (starfish)」と同じだ。

参照すべき注釈がついていることを示すほか、省略や検索でのワイルドカード、さらに疑念を表すのに使い、文法的に正しくないことを示す場合につけるのは、英語を学んでいる人にはおなじみかもしれない。

上記の文は、「イチローの記録には補足説明が必要である」ということだが、さらには疑念・非文のアステリスクと共通するニュアンスも込められているのではないだろうか。

つまり、「イチローの記録は日米両方のヒット数をあわせたものだから、厳密には大リーグだけのローズの記録と同列に比較できるものではない」というわけである。本文では come with... として does までつけて強調しているので、なおさらそうした印象を与えるように思う。

with an asterisk はイディオムという扱いにはならないのか、手持ちの辞書では「星印のついた」という意味の例文しか載っていなかったが、ネットで調べると、「手放しでそうとはいえない」「額面通りには受け取れない」「訳あり」というようなニュアンスを漂わせた使い方も確かにあるようだ。まずは見出しだけを拾ってみよう。

- Myanmar is a Democracy With An Asterisk
- Five star - but with an asterisk
- Obama offers optimism with an asterisk

さらに、ゴルフ関係のサイトで見つけた記事には asterisk が多用されていた。おもしろいので、長くなるが一部を引用しよう。

- The U.S. Golf Association and R&A have proposed a ban on anchored strokes, effective Jan. 1, 2016. The stroke, most notably made with the putter, will be legal until that time. But should victories with an anchored putter attained between now and then – and even prior – come with an asterisk?
(中略)
Asterisks are useful grammatical tools when conveying messages such “*Void where prohibited by law”
(中略)
And now we’re talking about placing an asterisk next to guys who win with an anchored putter prior to it being deemed illegal? Maybe some people just don’t know their punctuation.
(中略)
Tiger Woods is among many players who think it’s wrong to anchor a putter. Now, regardless of when the rule kicks in, they’re justified believing that their suspicions have been confirmed. Really, what's legal and what's proper are now two different questions. There won't actually be an asterisk in the record books(後略)
("Should wins with anchored putters get an asterisk?" GolfChannel.com)

この記事には、他にも come with questions that serve as unspoken asterisks とか deserve an asterisk、また There are no official asterisks on... さらにはおなじみ?の俗語をもじった Kiss my asterisk. といった表現が出てきて、参考になる。

ところで非文法的な文には * をつけるという決まりだが、私は英語を学び始めたころ、専門家が書いた文章を読むと、誤用の例には決まって星印がつけられ、「* は文法的に正しくないことを示す」などと説明も書いてあったので、自然と学んでしまった。

初学者が手に取るようなレベルであっても手を抜かずにそうしていた例として、約40年前、私が中学2年生の時に聞いていた「NHK続基礎英語」のテキストに、当時の講師(安田一郎・成城大学教授)が書いていた連載の一部をお目にかけよう。非文のひとつひとつに、律儀に * がついている。

s-続基礎英語.jpg

ところが最近は、大学の先生が書いた英語の学習書であっても、間違いを示す文に * をつけていないケースが目につくような感じがして、ちょっと気になっている。

別に学術論文ではないし、誤った例であることを明記しているのが常なので * がなくても問題はない、むしろアステリスクをつけると重複感がある(いま風にいえば「うざい」)ということかもしれない。

しかし中学生の時から「誤りには * がつく」として育った私としては逆に居心地が悪く、失礼ながら、どうにも「プロっぽくないなあ」と感じてしまう。 自分は * ばかりつくような英語しか話せないアマのくせに、と思うと、われながら生意気である。

過去の参考記事:
気をつけたい so-called 「いわゆる」の意外なニュアンス
quote-unquote 「いわば、いってみれば」
air (scare) quotes ~「いわゆる」を表す二本指のジェスチャー

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