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level-headed 「良識のある」「冷静な」 (ボブ・ディランのノーベル賞授賞に賛否の声) [音楽と英語]

今年のノーベル賞文学賞がボブ・ディランに決まったと聞いた時、へえっと思ったが、それ以上に深くは考えなかった。村上春樹と同じく毎年のように下馬評にあがっていると聞いていたし、1960年代の反戦運動や公民権運動で愛唱された彼の歌を、今の時代に重ね合わせたのだろうと想像した。

ところがその後、今回の授賞に対して海外では賛否の声があがっている、という記事をいくつか目にするようになった。そこであらためて選考委員会の決定理由を見ると、

- for having created new poetic expressions within the great American song tradition
https://www.nobelprize.org/nobel_prizes/literature/laureates/2016/press.html

となっている。つまり、あくまでアメリカ音楽への貢献を評価したもので、社会的な影響には言及していない。考えてみれば平和賞ではないので、たとえそうした背景があったとしても公式の理由にはしにくいのかもしれない。ただやはり「なぜディランが?」「なぜ作家ではないのか?」という違和感を持つ人には説得力が弱いと感じられるのではないか。

音楽が好きな私だが、ボブ・ディランはちゃんと聞いたことはない。中学生の時、英語の先生が「風に吹かれて」 Blowin' in the Wind を教材に使ったので少しは知っているし、この曲を収めたアルバム The Freewheelin' Bob Dylan はジャケット写真がすばらしく、誰でも一度は目にしたことがあるのではないだろうか。まあその程度の認識である。

フリーホイーリン・ボブ・ディラン

フリーホイーリン・ボブ・ディラン

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  • 出版社/メーカー: Sony Music Direct
  • 発売日: 2005/08/24
  • メディア: CD

その点では、同じく60年代に活躍したアーティストでも、われながら「聞きまくった」と言えるビートルズとは大いに違う。それは、ディランが寄り添っていた時代の空気 (参考→ zeitgeist 「時代のムード」)を私が肌で知っていないことと関係があるはずだ。逆に言えば、そうした共有がなくても聞いてしまうのがビートルズだった、ということになる。

前置きが長くなったが、こうしたいきさつから「ディラン授賞への疑問の声」を取り上げた英語の記事を探していくつか読んでみた。そのひとつから、level-headed 「分別のある」「穏健な」という単語を取り上げよう。

筆者 Nate Brown 氏は、ノルウェーの選考委員会が決めているノーベル平和賞について、選定結果が論議を呼ぶことがあったと指摘したうえで、スウェーデンの選考委員会が担当している文学賞について次のように書き進めている。

- By contrast, the Swedes have traditionally made what appear to be more level-headed picks. This year, though, in picking a wealthy, globally famous celebrity as the literature laureate, the Swedish Academy has inadvertently sidestepped one of the prize’s most welcome outcomes: that a writer of literature, known or unknown, will find a broader readership.
("The Case Against Bob Dylan's Nobel Prize Win" Men's Journal)

level は日本語にもなっていて「レベル」「水準」ということだが、「水平(の)」「均等(な)」「平衡(の取れた)」という意味もある。「てんびん座」の Libra と同じように、balance を意味するラテン語に関係がある。

英語圏の辞書にある level-headed の説明を見てみよう。

- calm and sensible in making judgments or decisions
opp hot-headed
(LDOCE)

- having or showing an even temper and sound judgment; sensible
(Webster’s New World College Dictionary)

- behaving in a calm and sensible way, even in a difficult situation
(Macmillan Dictionary)

ところで今回の決定についての疑問の声は、「音楽の歌詞をノーベル文学賞の対象に含めることが果たして適切なのか」、あるいは、シンガーソングライターとしてのボブ・ディランの偉大さは認めながらも、「ノーベル文学賞は、文学の振興や作家を知ってもらうことに資するべきであり、ディランのような功成り名を遂げた有名人に与えるのは筋違いだ」という内容が多かった。

引用した記事も後者の視点から論じているが、「ニューヨーク・タイムズ」紙の署名記事では、筆者の Anna North 氏が同様の論点から、

- Bob Dylan does not need a Nobel Prize in Literature, but literature needs a Nobel Prize.
("Why Bob Dylan Shouldn’t Have Gotten a Nobel" New York Times Oct. 13, 2016)

と書いていた。「ディランはノーベル賞を必要としていないが、文学はノーベル賞を必要としている」という端的な文とあって、日本の新聞にも引用されている(聞いたことがあるような形の言い回しだが、元になった言葉があるのだろうか)。

一方、従来のノーベル文学賞の枠にとらわれない選考として決定を評価する記事もあった。ディランの曲のタイトルを流用すれば「時代は変わる」 The Times They Are A-Changin' ということになるだろうか。

ディラン本人は、発表のあと開かれたコンサートでも今回の授賞についてまったくコメントしなかったという。ミュージシャンであることを誇りにしている彼のこと、文学の賞は受け取らないのではないかという記事すらあった。そんな憶測を呼ぶことを含めて、いかにも体制や周囲に媚びないことで知られるディランらしい。

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