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lack of oversight 「監督不行き届き」 (「欅坂46」のナチス風衣装で秋元康氏が謝罪) [日本のニュース]

このところ仕事疲れでじっくり英語に取り組む時間も気力もない。それでも「欅坂46がナチスの軍服に似た衣装を着て海外からも非難を浴びた」という軟派系のニュースには興味をそそられ、ウェブの記事をいくつか読んでみた。そうしたら英語についてちょっとおもしろく感じたことがあったので、メモしておきたい。

そのAP通信の記事から、該当部分を引用しよう(国際通信社もこの騒ぎを報じているのだ!)。

- Producer Yasushi Akimoto (中略) apologized in a note posted late Tuesday on the group's website. He said he was unaware of the outfits before the performance, and blamed his "lack of oversight."
He also said he doesn't think the designers were trying to make something reminiscent of the Nazis, but he would like to prevent a recurrence through staff education and having everything checked in advance.
("Producer sorry for Japanese 'idol' group's Nazi-like outfits" AP, Nov. 2 2016)

国内でも「あれはおかしいんじゃないか」という声があがったそうだが、ユダヤ人団体の「サイモン・ヴィーゼンタール・センター」が抗議する騒ぎに発展した。その公式サイトには、こんなことがなければ場違いな感じがするはずの日本のアイドルグループの名前が躍っていて(ローマ字表記だが)、笑い事ではないのになんだか可笑しい。
Simon Wiesenthal Center Urges Producer and Sony Music to Apologize over the use of Nazi-themed Costumes by Japanese Girls Group, “Keyakizaka46

誤解を受けかねない服装だったことに気づかなかったとは、なんと国際常識に欠けていることよ、と関係者の無知を嘆くべきか。一方で、日本では寺を表すのに使われるなど由緒ある東洋の印である卍(まんじ)を、ナチスの Hakenkreuz ハーケンクロイツ(逆卍)と同一視する西洋人がいるらしいので(英語ではどちらも swastika という単語だ)、そうした誤解に直面したら毅然とした態度を取りたいものだ、と考えもした。

前置きが長くなったが、取り上げたいのは lack of oversight である。oversight は oversee 「~を監督する」の名詞形と考えれば覚えやすいだろうか、それに欠けるということで「監督が至らないこと」という意味に取ることができる。

記事にある秋元康氏の言葉はもちろん日本語が原語なので「欅坂46」の公式サイトに行ってみると、下記のようなお詫びが(現時点では)どーんと表示されるようになっている。

- ニュースで知りました。ありえない衣装でした。
事前報告がなかったので、チェックもできませんでした。
スタッフもナチスを想起させるものを作った訳ではないと思いますが、プロデューサーとして、監督不行き届きだったと思っております。
大変申し訳なく思っています。(以下略)

個人的にはちょっと情けない謝罪文だと感じたが、それはそれとして、「監督不行き届き」の英訳として、lack of oversight は特に不思議な点があるわけではない。

にもかかわらず「おもしろい」と思ったのは、oversight という単語を私は最初に「見落とし」として覚えたという記憶があるからだ。その一方で、「監督」という意味があることも知っている。そこで、今回の lack of... という表現を見ていたら、「あれ、『見落とし』を lack したこと、と取ったら、意味が真逆のようになってしまうことにはならないか?」と考えたのである。

しかし、実際にはそんなことはまず起きないはずだ。それは、人はこうした言葉を読んだり聞いたりする時に、必ず内容に即して解釈するものだからだろう。「言葉は文脈を離れて単独では存在しえない」といったことを読んだような記憶があるが、こうした実例に接すると、なるほどと思う。

また、lack of... は、だいたい望ましくないことに使うように感じる。そうであれば、「監督不行き届き」の意味で使うのが人間の感覚に沿ったもので、「見落としの不足」と考えるのは天邪鬼だろう。そう思いつつ、念のため lack を辞書で確かめたら、「ジーニアス英和大辞典」に

- (必要な・望ましいものが)不足していること

という親切な記述があった。

なお似たような単語に overlook がある。「見下ろす」のほか、こちらも「見落とす」「見逃す」、また「大目に見る」、さらに「監督する」「監視する」「世話をする」といった意味があり、ちょっとややこしい。

以上、高度な英語力を持つ人からみると、「そんな当たり前のことに今ごろ感心して、何を大層に書いているのだ」と言われそうだが、そう思ったのだから仕方がない。ことほどさように英語上級者への道は遠いようだ。

ということで、英語力を高めるために、oversight の説明をあらためて辞書で確かめて終わりにしよう。lack of oversight を使った例文もあり、このまとまった組み合わせで覚えておくのもよさそうだ。

- 1. 不注意な誤り、過失、手抜かり、手落ち
My bank statement is full of oversights.
2. 見落とし、怠慢、不注意
through some oversight 何かの見落としで 
Owing to my oversight, the letter was sent unsigned.
3. 監督、監視
a person responsible for the oversight of the organization 組織に目を配るのが任務の人
(ランダムハウス英和大辞典)

- 1 An unintentional failure to notice or do something.
‘he said his failure to pay for the tickets was an oversight’
[mass noun] ‘was the mistake due to oversight?’
Software doesn't create oversights and mistakes; the human beings who create the software do.’
2 The action of overseeing something.
‘effective oversight of the financial reporting process’
‘This lack of regulatory oversight can affect both international and domestic confidence in our market.’
(Oxford Dictionaries)

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