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ウェブスター版「今年の言葉」 surreal の選定をめぐるシュールな展開 [Word of the Year]

各団体による「今年の英単語」選定の時期がやってきた。すでに発表されて日本でも紹介された言葉もあるが、それとは別に私が結果を見守っていたのが、利用者の検索数で決まる Merriam-Webster の選定である。少し前の時点では fascism が有力となっていて、これを阻止するための呼びかけがされるという異例の展開を見せていたからだ。

結果を先に書くと、最終的に選ばれたのは surreal だった。「シュールな」「シュールレアリズム」のように日本語にもなっていて、辞書的には「超現実的な」「非現実的な」ということだが、決定の背景として「メリアム・ウェブスター」があげているのは、相次いだテロ事件やアメリカ大統領選挙などである。「本当とは思えないような、しかし本当に起きた(出来事)」という感じに受け取れば良いだろうか。

- Surreal had three major spikes in interest that were higher in volume and were sustained for longer periods of time than in past years. In March, the word was used in coverage of the Brussels terror attacks. Then, in July, we saw the word spike again: it was used in descriptions of the coup attempt in Turkey and in coverage of the terrorist attack in Nice. Finally, we saw the largest spike in lookups for surreal following the U.S. election in November.
('Surreal' is our 2016 Word of the Year)

私が今回の選定に興味を持ったのは、11月にウェブスターが発したツイートがニュースで取り上げられているのに気づいたことである。

例えば、
Stop 'fascism' becoming word of the year, urges US dictionary
(The Guardian Dec.1, 2016)

などだが、この記事にも引用されているそのツイートとは、

- 'Fascism' is still our #1 lookup.
# of lookups = how we choose our Word of the Year.
There's still time to look something else up.
https://twitter.com/MerriamWebster/status/803674255732813825?ref_src=twsrc%5Etfw

つまり、「ファシズム」がその時点での最有力候補となっていて、「他の単語を検索する時間はまだあります」と、ウェブスター自身がこの単語が Word of the Year になるのを嫌っていると受け取れる呼びかけをしていたのである。私は「最近はやりのデマ記事ではないか」と思い、実際にツイッターを確かめてしまったほどだ。

結果を報じる記事でも、先月の呼びかけに言及していたマスメディアがあったのは当然といえるだろう。

- Merriam-Webster has succeeded in its attempt to stop “fascism” being named its word of the year: the dictionary publisher’s word of 2016 is “surreal”. (中略)
Last month, Merriam-Webster used its Twitter feed to suggest users look up alternatives to “fascism”, proffering the word “flummadiddle” – meaning, according to its own definition, “something foolish or worthless” – as a possible alternative.
("Word of the year 2016: for Merriam-Webster, 'surreal' trumps 'fascism'" The Guardian Dec. 19, 2016)

なおタイトルに使われている動詞 trump は、もちろんアメリカの次期大統領に引っかけたものだ(参考→ "Love Trumps Hate" ~トランプ氏と動詞の trump)。

ウェブスターの選定は、単純な検索数ではなく、対前年比などの要素も勘案されるという。そのへんの説明が次のサイトに書かれていたので、興味のある方はお読みいただきたい。
‘Surreal’ Beats Out ‘Fascism’ As Merriam-Webster’s Word Of The Year
(WBEZ91.5Chicago Dec. 19, 2016)

しかしウェブスターの先月のツイートのことを思うと、本当に surreal がトップだったのだろうか、と考えてしまう。何せ、疑い出すと何が本当なのか信じられなくなるのが今の時代だ。そこまで行かなくても、主催者自身があのような呼びかけをするのはどうにも奇妙に思えるのは、私が真面目すぎるのだろうか。

いずれにせよウェブスターの選定は、すでに発表された他の団体による「今年の単語」と同様、”時代の空気”を反映したものといえそうだ(参考→ zeitgeist 「時代のムード」)。オックスフォードが選んだのは、日本のマスメディアでも報じられた post-truth 「脱真実」(これについては後日書いてみたい)、また Dictionary. com の Word of the Year は xenophobia 「外国人アレルギー」だった。

年明けにはこうした選定の本家とも位置づけられている American Dialect Society の選定が発表になるが、はたして結果はどうなるであろうか。

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