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「股下の寸法」は英語で何というか [和英表現]

日本に暮らすサラリーマンなので、私が英語に接するのは自分に関係・関心のある分野が中心だ。生活用語系には弱いとの自覚があるし、過去の海外経験からも、そうした単語は必要になったら覚えればいいと開き直っている。とはいえ、このところ毎回表現を拾っている本 The Unknown Unknown で「股下の長さ」にあたる英語を知ったので、せっかくだから取り上げてみたい。

こうした言葉に強い人からは「何をいまさら」と言われそうだが、まずはその部分を引用しよう。

- Internet dating allows you to name the exact specifications of the man or woman that you wish to acquire. Height, weight, income, shoe-size, star sign, blood-type, allergies, favourite horror movie, inside-leg measurement, political leanings and preferred breakfast cereal.
(The Unknown Unknown by Mark Forsyth)

ここでの internet dating とは「異性紹介サイト」「出会い系サイト」での交際ということだろうと思うが、軽妙な内容を楽しんで読んでいたら、簡単な単語が組み合わさっただけの inside-leg でつまずいた。

inside といっても体内にかかわる生物・医学用語とは思えない。脚の内側ということで「歩幅」のことかと乱暴な想像もしたが、これもつきあう相手を選ぶ際の条件・情報としてはどうも腑に落ちない。

精読する場合を除いて、英語は辞書に頼らずに読み進めることにしている私だが、まったく見ないというほどの潔癖主義者でもない。ここは迷わず辞書を引いた。

- (人・ズボンの)股下(寸法)
(リーダーズ英和辞典)

- The length of a person's leg from crotch to ankle, or of the equivalent part of a pair of trousers.
Carl Stuart has made him a pair of trousers with an inside leg of 44 in and an outside leg of 60 in.
(注・この用例については後述)
Could you tell us your inside leg measurement to help with the search?
(Oxford Dictionaries)

- the measurement from the top of your inner leg to your ankle
(Cambridge Advanced Learner's Dictionary)

- British
another name for inseam
(Collins English Dictionary)

上記「コリンズ」の記述にあるように inside leg はイギリス英語で、オンライン辞書でこの言葉を載せているのもイギリス勢ばかりだ。

アメリカ英語では inseam ということもわかった。ここに含まれる seam は「縫い目」で、日本語でも最近「シームレス」(縫い目や継ぎ目のない→途切れのない、一貫した)として耳にするようになってきた言葉だ。

英和辞典で inseam を引くと、「内縫い目、股下の縫い目」という訳語しか載っておらず、股下の丈について使うことを明記していない辞書もあり残念だった。以下は英語圏の辞書からの引用である。

- 1. The inside seam of a pant leg.
2. The length or measurement of such a seam.
(American Heritage Dictionary)

- North American
The seam in a pair of pants from the crotch to the bottom of the leg, or the length of this.
The most important measurements you should know beforehand are: shoe size; waist and inseam measurements for pants; neck and sleeve sizes for shirts.
(Oxford Dictionaries)

一連の定義や用例を見ていると、inside leg も inseam も、measurement をつけてもつけなくても「寸法」を示すことができるようだ。なお強勢はイギリス版股下が in- と leg の両方に、アメリカ版は第一音節の in- に置かれる。

ところで最初にあげた「オックスフォード」の用例は悩みの種だった。まず an inside leg of 44 in とは「44インチ」ということだろうが、考えてみるとこれは1メートルを越えており、短足である私のヒガミを差し引いてもえらく長いと感じる。

続いて出てくる outside leg とはズボンの全長らしいとあたりがつくが、ズボンだけで60インチ=150センチ超とは、いくらなんでも巨人すぎやしまいか。さらに、この寸法を日本語で何というのか、情けないことに思い浮かばない。

ネットでまず後者を調べると「総丈」「脇丈」とあり、これが outside leg に相当すると思われる。続けて巨人の謎を解くべくこの用例の主語 Carl Stuart でいろいろ検索したら、英国ウェスト・ヨークシャーにある同名の洋服仕立て業者が、世界一背が高いという中国人 Xi Shun さんのためにズボンを作ったという10年以上前のローカル紙の記事を見つけた。この人は何と230センチを越す身長だという。

- The outsized pants, with an inside leg of 44ins and an outside leg of 60ins, required extra stitching and were sent to the firm via an exclusive London clothiers based on Savile Row.
("We are making giant strides" Yorkshire Evening Post, Oct. 15, 2005)

この記事はタイトルにある giant strides もそうだが、文中にも tall order 「無理難題」という表現が出てきて、.大男にひっかけて使っている。

謎が解けてすっきりしたついでに、「股上」は何というのかと和英辞典を引くと a rise とあり、jeans with a low rise, low-rise jeans などの用例が添えられていた。また私が最初に想像した「歩幅」の方は walk with long steps とか lengthen one's stride また a pace といった言葉が辞書に載っている。

最後に余談だが、私が英語の基礎を学んでいたその昔、「日本の英語教育では日常生活で使う言葉が学べない。だからダメなんだ」という声が一部の評論家や英会話のセンセイ方などから出されていた(今でもそうかもしれない)。

しかし、そうした単語は、日本で日本語を使って生活している限り知らなくても支障はないし、海外で生活するなど必要な状況に投げ込まれれば、イヤでも覚える。わからなければ辞書やその手の単語を集めた本を利用すればいい。生活用品は日本語との1対1の対応度も高いので、誤解を受ける心配もまずない。

別にそうした言葉を学ぶ必要はないと言いたいわけではない。興味があるのなら、どんどん覚えればいい。かなり前にも書いたことだが、私はむしろ、単語は多く知っていれば知っているほどいいという考えだ(参考→ 「やっぱり単語力だ」 )(→ 語彙力なら達人やネイティブに勝てる)。ただ、「だから日本の英語教育はダメなんだ」というのはお門違いだと思うのだが、いかがだろうか。


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