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stand tall 「堂々としている」「毅然とした態度を取る」 [ニュースと英語]

前回はトランプ大統領によるコミーFBI長官の解任劇を素材に、「目立ちたがり屋」を意味する showboat と grandstander を取り上げたが、そのコミー氏、身長が2メートル以上あるそうだ。関連記事を読んでいたら、その巨漢ぶりにひっかけたと思われる表現を目にした。

コミー長官は解任されたあとにFBIの幹部職員にあてて書簡を出したが、それを報じるオンライン記事に、次のようなくだりがあった。

- FBI Director James Comey is doing his best to stand tall after being mercilessly fired by Trump.
("James Comey Releases His First Statement Since Donald Fired Him – It’s Not What You Think!" RealtimePolitics May 11, 2017)

書簡は、解任について無念さをうかがわせながらも、落胆や恨み節を述べるようなことはせず、職員に対してアメリカ国民と憲法を護るため引き続き力を尽くしてほしい、と呼びかける内容になっている。そうした冷静な大人の態度を取ろうとつとめたコミー氏を stand tall と表現したのだろう。

これだけなら別にどういうことはないが、コミー氏の身長は6フィート8インチ、つまり203センチで(188センチのトランプ大統領よりさらに高い)、それがよく話題になっていたことを他のいくつかの記事を読んで知った。であれば、意図的にこの表現を使ったのではないだろうか。

さらにネットを見ていたら、コミー氏を長官に任命した時に当時のオバマ大統領がこの言い回しを使って次のように述べていたことを知った。

- Now I think Bob (=前任長官の Robert Mueller) will agree with me when I say we have the perfect person to carry on this work in Jim Comey, a man who stands very tall for justice and the rule of law,"

オバマ氏(ちなみに身長185センチ)が使った stand tall (for justice) は「背筋をしっかり伸ばして正義・司法に尽くす」「毅然とした態度で司法の課題に取り組む」というように解釈すればいいのだろうが、いずれにせよコミー氏が「背丈がそびえるように高い」ことにかけていることは間違いあるまい。今回の記事も、このオバマ氏の言葉を念頭に、いわば再利用した可能性があると思う。

それはともかく、この stand tall は知っている人も多いだろうし、そうでなくても意味を想像しやすい表現といえそうだが、英和辞典には「頭を高くあげている」「胸を張っている」「堂々としている」「自信を持って立つ」「注意をひくようになる」などの訳語が並んでいる。英語圏の辞書を見ると、

- to be brave and proud.
I can still stand tall. I'm innocent.
Our athletes stand tall in the knowledge that they did their best.
(McGraw-Hill Dictionary of American Idioms and Phrasal Verbs)

- to exhibit courage, strength, or calm especially in the face of adversity
(Merriam-Webster.com)

- stand/walk tall
to be proud of yourself and confident of your abilities
For the first time in living memory, we have a leader who can stand tall in international gatherings.
(Cambridge Idioms Dictionary)

上記3つ目の記述のように walk tall という言い方もあるが、私自身はこちらを何かで見て stand tall よりも先に覚えていた。

また walk tall and carry a big stick という言い回しを見た記憶があるが、これは20世紀初めにセオドア・ルーズベルト大統領が「棍棒外交」を打ち出した際に述べた "Speak softly and carry a big stick." にも影響されて出来たのではないだろうか。speak softly なら「口調は静かに」だが、wall tall だと「そこのけそこのけ」と突き進む感じがする。手に大きな棍棒を持っていることに変わりはないのだが。

ということで、同じ stand/walk tall でも、コミー氏のように逆境にめげない大人の態度を見せることから、邪魔者はどけとばかりに傲岸な姿勢を示すことまで、状況によって異なるイメージで使うことができそうである。

そのコミー氏をクビにしたトランプ大統領は、ロシアとの関係が疑われるフリン前補佐官への捜査をやめるよう圧力をかけていたという報道も飛び出した。ますます混迷が深まりそうだ。

なお余談だが、「アメリカでは身長を測る際に靴を脱がないので不正確だ」「いや脱ぐように言われた」、という両方の情報や実体験がネットに載っていておもしろかった。いかにも多様性のある連邦国家、というより、身長は命にかかわるような数値ではないので細かいことには構わない、とことなのかもしれない。


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コメント 2

mori

こんにちは。

また wall tall and carry a big stick という言い回しを見た記憶があるが、、、、とありますが、ここは単に walk tall and ,,, の間違いですね? 

by mori (2017-05-28 18:38) 

tempus fugit

moriさん、ご指摘ありがとうございました。typoでした。お恥ずかしいかぎりです。訂正します。

by tempus fugit (2017-05-28 21:14) 

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