使用が減ったか、~ residence? 「~さんのお宅ですか?」という表現 (「NHKテレビ英語会話初級」) [単語・表現]
高橋留美子の名作「めぞん一刻」の英語版から、映画「カサブランカ」やシェイクスピアの名セリフを下敷きにした英訳をこのところ紹介してきたが、このマンガは携帯やスマホがなかった1980年代が舞台で、相手と思うように連絡が取れないことが物語の展開で大きな意味を持っている。
前回もちょっと書いたが、当時は相手がいる場所の固定電話にかけるしかなかった。たとえそこに相手がいたとしても、最初に受話器を取ったのが家族などだったら、誰から電話がきたのか他人にわかってしまう。今よりプライバシーの感覚がゆるかったのも無理はないかもしれない。
そんな時代なので、「めぞん一刻」にも家庭の電話や公衆電話がひんぱんに登場する。そして英訳版を読んでいると、家の電話が鳴った時に最初に出た人が "Chigusa residence." などと応えているシーンが出てくる。そうしたセリフを目にして、何ともなつかしい気持ちになった。
携帯やスマホが主流となった今、こうした言い方は英語圏でも使われる頻度は減っているのだろうか、とも思った。さらにプライバシーの概念が強まってきた社会変化の影響か、私自身、相手が誰だかわからなければ「失礼ですがどちら様ですか」と尋ねることが増えたと感じている。
そもそも固定電話の利用が減っているうえ、電話をかけた方がまず名乗るべき、という傾向が一般的になっているのなら、英語圏でも"...residence"と受け手が応えることは減ってきているのかもしれない、とも想像した。実際のところはどうなのだろうか。
ところで、「なつかしい気持ち」と書いたのは、単に固定電話で応対していた当時を思い出したからだけではない。"...residence"というのは私が中学生の時にテレビの講座「NHK英語会話初級」で覚えた表現なので、英語学習のうえでも思い出深いものがあるからだ。
「電話での会話」が通しのテーマだった4月のレッスンのひとつだが、幸い当時のテキストが残っているので掲げよう。
英語の電話とはまったく無縁の中学生の私だったが、この番組で「~さんのお宅ですか?」という言い回しを覚えた。この "Is this the ...residence?" を含め、そこで覚えた表現を私が実際に使ったのはそれからずっとずっと後のことだが、そうした機会があるたびにこのテレビ講座を思い出した。
「テレビ英語会話初級」は、いま思い返しても「学習」と「楽しさ」という反発しがちな要素を見事に両立させた番組だったと思う。
講師の田崎清忠教授はテレビ映りがよく、楽しい雰囲気の中で毎回のレッスンを進めていたが、英語教育で知られるミシガン大学で視聴覚教育を修めた専門家とあってか、”タレント教授”とは似て非なる先生だった。
「理屈抜きでこのフレーズを覚えましょう」「聞こえた通りに発音しましょう」といった手抜き?指導ではなく、上記に掲げたテキストでもわかるように、英語についてツボを押さえたていねいな説明がされていた。
それだけに永年講師をつとめた田崎先生が降板した時は残念だった。その後ラジオ・テレビの講座は改編を繰り返し、タイトルもいつからか「英会話」になってしまったが、かつての番組はまさに「英語会話」と呼ぶのがふさわしい内容だったと思う。
田崎先生はすでに現役を退かれているが、ネットで調べたところ今もご健在であることを知り、うれしく思った。以前取り上げたことがある「英語会話中級」講師の國弘正雄氏とともに、感謝の念で一杯である。
下記の動画は田崎先生の近年の講演の様子だが、この中に短いが「英語会話初級」の映像も出てくる。なお番組でアシスタントのひとりとして映っているのは、後にNHKの英語講座で活躍することになるマーシャ・クラッカワーさんである。
若い頃に読んだマンガを再読しているためか、今回は英語についての情報ではなく、年寄りめいた回顧談になってしまったが、暑い夏場の箸休めとしてご容赦いただきたい。
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前回もちょっと書いたが、当時は相手がいる場所の固定電話にかけるしかなかった。たとえそこに相手がいたとしても、最初に受話器を取ったのが家族などだったら、誰から電話がきたのか他人にわかってしまう。今よりプライバシーの感覚がゆるかったのも無理はないかもしれない。
そんな時代なので、「めぞん一刻」にも家庭の電話や公衆電話がひんぱんに登場する。そして英訳版を読んでいると、家の電話が鳴った時に最初に出た人が "Chigusa residence." などと応えているシーンが出てくる。そうしたセリフを目にして、何ともなつかしい気持ちになった。
携帯やスマホが主流となった今、こうした言い方は英語圏でも使われる頻度は減っているのだろうか、とも思った。さらにプライバシーの概念が強まってきた社会変化の影響か、私自身、相手が誰だかわからなければ「失礼ですがどちら様ですか」と尋ねることが増えたと感じている。
そもそも固定電話の利用が減っているうえ、電話をかけた方がまず名乗るべき、という傾向が一般的になっているのなら、英語圏でも"...residence"と受け手が応えることは減ってきているのかもしれない、とも想像した。実際のところはどうなのだろうか。
ところで、「なつかしい気持ち」と書いたのは、単に固定電話で応対していた当時を思い出したからだけではない。"...residence"というのは私が中学生の時にテレビの講座「NHK英語会話初級」で覚えた表現なので、英語学習のうえでも思い出深いものがあるからだ。
「電話での会話」が通しのテーマだった4月のレッスンのひとつだが、幸い当時のテキストが残っているので掲げよう。
英語の電話とはまったく無縁の中学生の私だったが、この番組で「~さんのお宅ですか?」という言い回しを覚えた。この "Is this the ...residence?" を含め、そこで覚えた表現を私が実際に使ったのはそれからずっとずっと後のことだが、そうした機会があるたびにこのテレビ講座を思い出した。
「テレビ英語会話初級」は、いま思い返しても「学習」と「楽しさ」という反発しがちな要素を見事に両立させた番組だったと思う。
講師の田崎清忠教授はテレビ映りがよく、楽しい雰囲気の中で毎回のレッスンを進めていたが、英語教育で知られるミシガン大学で視聴覚教育を修めた専門家とあってか、”タレント教授”とは似て非なる先生だった。
「理屈抜きでこのフレーズを覚えましょう」「聞こえた通りに発音しましょう」といった手抜き?指導ではなく、上記に掲げたテキストでもわかるように、英語についてツボを押さえたていねいな説明がされていた。
それだけに永年講師をつとめた田崎先生が降板した時は残念だった。その後ラジオ・テレビの講座は改編を繰り返し、タイトルもいつからか「英会話」になってしまったが、かつての番組はまさに「英語会話」と呼ぶのがふさわしい内容だったと思う。
田崎先生はすでに現役を退かれているが、ネットで調べたところ今もご健在であることを知り、うれしく思った。以前取り上げたことがある「英語会話中級」講師の國弘正雄氏とともに、感謝の念で一杯である。
下記の動画は田崎先生の近年の講演の様子だが、この中に短いが「英語会話初級」の映像も出てくる。なお番組でアシスタントのひとりとして映っているのは、後にNHKの英語講座で活躍することになるマーシャ・クラッカワーさんである。
若い頃に読んだマンガを再読しているためか、今回は英語についての情報ではなく、年寄りめいた回顧談になってしまったが、暑い夏場の箸休めとしてご容赦いただきたい。
めぞん一刻 文庫版 コミック 全10巻完結セット (小学館文庫)
- 作者: 高橋 留美子
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2011/03/01
- メディア: 文庫
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長い解説でとても勉強になっています。更新を楽しみにしています。
by 南方 (2017-09-27 20:27)
南方さん、うれしいコメントどうもありがとうございます。
最近多忙でなかなか更新できませんが、これからもよろしくお願いいたします。
by tempus fugit (2017-09-27 21:35)
最近「名探偵ポワロ」(主演: デビッド・スーシェ)の「謎の盗難事件」を観ました。
ミス・レモン(演: ポーリン・モラン)が
Hercule Poirot residence?
と言って電話をとっているシーンがありました。
それでTempus fugit様の投稿を思い出しました。
取り急ぎご報告させていただきます。
by Kawada (2020-05-27 13:32)
ポワロには詳しくないのですが、時代的にあっておかしくないセリフですね。現代の推理ものではもう耳にすることがなさそうに思えますよね。
by tempus_fugit (2020-05-28 00:40)