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「ロケットマン」とは何か? (トランプ、国連で北朝鮮を非難) [ニュースと英語]

トランプ大統領が国連の演説で北朝鮮のキム・ジョンウン委員長を「ロケットマン」と呼んだことが話題となったが、以前、北のミサイルにからんで rocket man が使われた実例をこのブログで書いたことがあり、トランプ氏が最初ではないはずだ。

しかし記憶が定かではないので検索すると、ブログを始めたばかりの10年以上も前のこと、先代の最高指導者について英エコノミスト誌が使ったのを取り上げたのだった(→ Hermit Kingdom(「北朝鮮」の別称))。

その時には、「エルトン・ジョンの同名のヒット曲にひっかけたものか」と書いた。私は Elton John の大ファンというわけではないが、洋楽好き世代として何曲かは知っていて、Rocket Man もそのひとつである。1970年代の作品だ。

「ロケット・マン」という言葉は、この他にも音楽や映画、さらに日本のマンガのタイトルなど、いろいろなところで使われているが、トランプ氏の国連演説について書いたCNNの記事も、これが本家ということだろうか、エルトン・ジョンにからめたものと取っていた。

- What do you do if you have just a single catchphrase -- like, say, "You're fired!" -- and you need something fresh, something resonant, to hold the public's interest?

If you are President Trump, you borrow a song title from Elton John -- "Rocket Man" -- and start using it as a nickname for North Korea's leader Kim Jong Un even though it doesn't make any sense at all and makes you sound like someone's awkward dad trying to be cool.
("'Rocket man' is awkward Dad Trump's attempt to be cool" CNN Sept. 20, 2017)

トランプ氏は今回の国連演説に先立って、韓国のムン・ジェイン大統領と北朝鮮情勢について電話会談したが、実はそれについて発したツイートですでに「ロケット・マン」を使っていた。この記事は国連演説の文言とあわせてそのツイートも紹介しているので、さらに引用しよう。

- Trump first tried out Rocket Man on Twitter, announcing, "I spoke with President Moon of South Korea last night. Asked him how Rocket Man is doing. Long gas lines forming in North Korea. Too bad!"

Then he used the nickname in his first-ever address to the United Nations, saying "Rocket Man is on a suicide mission for himself."
(ibid.)

エルトン・ジョンの歌とからめた記事は他にも見つかる。例えば「ワシントン・ポスト」紙に載っていた下記の記事もそうだ。

長くなるので詳しい内容は実際にお読みいただきたいが、宇宙飛行士を称えていると受け取れる歌詞なので、トランプ氏の思惑とは逆にキム委員長をほめていることにもなる、という説明がおもしろい。

- The song’s lyrics describe a lonely astronaut on a long mission in space, reflecting on the difference between his public and personal personas.
(中略)
So the nickname could be taken as a compliment, depending on how Kim’s interpreters decide to play it. They could tell Kim that Trump described him as a hero, like the late, beloved John Glenn.
("‘Rocket Man’: Was that a slam of Kim Jong Un — or a compliment?" The Washington Post Sept. 20, 2017)

ということで、トランプがエルトン・ジョンの歌からこの言葉を借用したのだとしても、歌詞の意味や、それが相手にどう受け取られるかを考えたうえでのことではあるまい、と書いている。そして、次のような皮肉で記事を締めくくっていた。

- Maybe Stephen Colbert was right when he tweeted that he was “90% sure Trump nicknamed Kim Jong Un ‘Rocket Man’ because he forgot his name.”
(ibid.)

「ワシントン・ポスト」の記事はまた、ピアノを演奏しているエルトン・ジョンの顔をキム・ジョンウンにして Elton Jong Un と銘打ったコラ画像を転載していて笑ってしまう。

さらにこの記事には、エルトン・ジョンの歌は、私も好きな作家レイ・ブラッドベリの短編集「刺青の男」に収録されている The Rocket Man にインスパイアされて書いた、という作詞者の話も載っていた。

エルトン・ジョンの歌が本家かと思ったが、実はブラッドベリだった、というべきなのかもしれない。原題に定冠詞がついているこちらの「ロケット・マン」は、読んだことだけを覚えていたが、本棚にある翻訳を久しぶりに引っ張り出して再読した。名作である。

最後に、日本語の「ミサイル」は「ロケット」とは別物に取れるが、英語の rocket とは厳密に線引きができるものではないらしい、ということについて以前書いたことがあるので、ご参考まで(→ ミサイルと rocket は違うのか)。

エルトン・ジョンやブラッドベリの「ロケット・マン」は「ロケット乗り」だったが、トランプにとってのキム・ジョンウンは「ミサイル・マン」ということになるだろうか。

参考記事:
ブラッドベリの「火星年代記」に新版



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