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leapfrog 「馬跳び」「(軍隊の)交互前進」 (ハインライン「宇宙の戦士」) [注意したい単語・意外な意味]

前回取り上げた frogmarch 「後ろ手に縛って連行する」からの連想で、leapfrog という単語について書いてみたい。字面通りだと「かえる跳び」という感じだが、そう考えていいだろうか。

私がこの単語を知ったのは、アメリカのSF作家ロバート・A・ハインラインが書いた「宇宙の戦士」という小説だった。宇宙を舞台にした少年兵の成長物語だが、東西冷戦のさなかに書かれたという時代背景もあってか、「力の礼賛」とも取れる内容が論議を呼んだという。

leapfrog は、作品が始まってすぐのところに出てくる。軍曹が主人公ら新兵に対して、敵がいる惑星に降下したあとの作戦を説明する場面だ。

- ... you smash-and-destroy whatever’s at hand until the flankers hit dirt. Once they hit — straighten out those lines! — equalize those intervals! Drop what you’re doing and do it! Twelve seconds. Then advance by leapfrog, odd and even, assistant section leaders minding the count and guiding the envelopment.
(Starship Troopers by Robert A. Heinlein)

・・・と引用してみたが、実は先に原書を読んだのではない。この小説には2つの翻訳があり、その訳の違いに気づいて原文を確かめ、結果的にこの単語を知った。

高校生の時に最初に読んだ旧訳では、leapfrog は「蛙跳び」となっている。数年前に同じ出版社から新しい翻訳が出たが、そこでは「交互前進」と訳されていた。

辞書を見ると「馬跳び」とある。かがんだ人の背を他の人が飛び越える、遊びや体育でおなじみの動作だ。frog だが日本語では「かえる」ならぬ「馬」だったわけである。

さらに軍事用語として「交互前進」(各部隊が交互に援護射撃をしながら前進する)という訳語も載っている。ミリタリー小説ともいえる「宇宙の戦士」では新訳の方がふさわしいといえそうだ。宇宙服を着た兵士がカエルのように手足を動かして跳ねるというのは、考えてみるとサマにならない。

同じ「かえる」でも、ぴょんと跳ぶことか、あるいは左右の脚を交互に出して前に進むことか、どちらの特徴に焦点を当ててなぞらえるかで違った意味が出てくるということだろうか、おもしろいものである。

leapfrog はこうした動作を行うことや、「(階級や障害物を)飛び越える」「追い抜く」「一気に上昇(飛躍)させる」「抜きつ抜かれつして進む」を表す動詞でもある。

英語圏の辞書からも引用しよう。

- n. A game in which one player kneels or bends over while the next in line leaps over him or her.
v.tr. 1. To jump over (someone) in leapfrog.
2. To advance or progress beyond (a competitor or an obstacle, for example) in dramatic fashion: hoping to leapfrog the competition with new technology.
3. To advance (two military units) by engaging one with the enemy while moving the other to a position forward of the first unit.
v.intr. 1. To move forward in leapfrog.
2. To move or progress in a discontinuous way: The virus leapfrogged from town to town.
(American Heritage Dictionary)

ついでに「蛙跳び」ならぬ「うさぎ跳び」はどう言えばいいかと思ったのでいくつかの和英辞典を引いたら、squat-hopping また to hop in a squatting position, to hop forward in a squatting position with one's hands behind one's back などの訳が掲げられていた。

なお、leapfrog に関しては旗色の悪い「宇宙の戦士」の旧訳だが、そうした細かい点に目をつぶれば、新訳よりも優れていると感じる点も多々あったことを付記しておきたい。あくまで個人的な感想であるが。

追記(2020年4月):
・追う者の強み ~ leapfrog #2
https://eigo-kobako.blog.ss-blog.jp/2020-04-30

ハインライン関連の過去の記事:
「ゼロ年代」は英語で何というか
「夏への扉」の新訳
最も長い英単語? floccinaucinihilipilification
辞書に載っていない three-dollar word
辞書に載っていない Barkis is willing.


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タグ:翻訳・誤訳
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