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Kompromat 「(ロシアが握っているトランプの)弱み」「脅しのネタ」 [辞書に載っていない表現]

ロシアによるアメリカ大統領選挙への介入疑惑が取り沙汰される中、先の米ロ首脳会談ではトランプがプーチンを追及するどころか、逆に肩を持つような発言をしたため、アメリカ国内は一時騒然となったようだ。関連の英文記事に Kompromat という単語が使われていたので、取り上げてみたい。

以下はCNNの記事である。

- Does Russia have compromising information -- "Kompromat" -- on President Donald Trump?
The issue came up point-blank when both Putin and Trump sidestepped their way around it.
("Does Russia have Kompromat on Trump? Here's Putin's strange answer" CNN July 16, 2018)

見慣れない Kompromat だが、compromising information の同義として書かれているので意味がわかる。こうした compromising あるいは compromise は、注意が必要な単語としてずっと前に取り上げたことがある(→ 「妥協する」ではない compromise、→ compromising と uncompromising)。

Kompromat は私が使っている電子辞書には載っていなかったが、K- で始まる綴り、そしてロシアがからむ話であることから、ロシア語に関係があるのではないか、とあたりがつく。

ウェブで調べると、その通りだった。単語のうしろ半分の -mat は material だということもわかる。小文字で始める表記でも良いようだ。

- The term kompromat is a borrowing of the Russian KGB slang term компромат from the Stalin era, which is short for "compromising material" (компрометирующий материал). It refers to disparaging information that can be collected, stored, traded, or used strategically across all domains: political, electoral, legal, professional, judicial, media, and business. The origins of the term trace back to 1930s secret police jargon.
https://en.wikipedia.org/wiki/Kompromat

ということで、泣く子も黙るKGBに由来する言葉で、主にロシアがらみで「ゆすりに利用できるスキャンダル」を指すようだ。

そしてロシア疑惑に揺れるアメリカでいま Kompromat といえば、もっぱら「トランプはロシアに弱みを握られているのではないか?」「だからトランプはロシアに甘いのではないか?」という文脈で使われていることは想像に難くない。

以下はCNN以外のメディアが使っていた例である。

- The growing Trump-Putin kompromat question (ワシントン・ポスト紙、見出し)

- For many, the idea that the Kremlin may have kompromat on Trump went from a possibility to a near certainty on Monday, when at a joint press conference in Helsinki, the president of the United States kowtowed to the president of Russia, trashed America, and indicated that he values Putin’s denial re: election meddling over the findings of his own intelligence agencies.
(Vanity Fair July 17, 2018)

ロシアが握っているといわれるトランプの「ネタ」「弱み」がどのようなものであるかは、ネットでたやすく見つけることができるが、ここで書くのはお下劣なので差し控えたい。真偽のほどは不明である。

トランプとしては、先月の米朝首脳会談に続く外交的成功と思っていたら、逆に身内からも非難を浴びるなど厳しい反応が出たことに驚いたのか、記者会見で行ったある発言について「二重否定を言い間違えたものだ」と(苦しい)弁明をしたほどだ。

英語学習者としても興味深い弁明だったが、ここでは深入りしないので、この”言いまつがい”に興味がある方は、ネットで調べていただければ幸いである。

なお、冒頭に引用したCNNの記事は、トランプもプーチンも、記者会見で介入疑惑についての質問に答えたように見えて、実のところ明確な否定はしていないということを指摘する内容となっている。こちらもおもしろいので、全文を読んでいただければ、と思う。

プーチンは(記者会見で自ら言ったように)KGBの元メンバー、トランプは職業政治家ではなく「ディール」で動くビジネスマンあがり、出自は違えど、相手を煙に巻くのがうまい点では共通しているのだろう。


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コメント 2

Kawada

Kompromatですか。興味深いですね。
Kompromatの各国版も出てきそうで、面白そうです。英英辞典には載らなそうな語で、どちらかというと「言霊USA」的な感じですね。
by Kawada (2018-07-21 16:21) 

tempus fugit

Kawadaさん、コメントありがとうございました。「言霊USA」はたしか何かの雑誌の連載記事ですよね。本文では書きませんでしたが、Kompromatはロシア疑惑がらみで少し前から使われているので、もうこの単語も取り上げられているかもしれませんね。

by tempus fugit (2018-07-22 10:18) 

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