meltdown ~ セリーナ・ウィリアムズ選手がブチ切れる [ニュースと英語]
先週末からアメリカを賑わせた話題のうち、前回取り上げたトランプ政権高官の大統領批判を「硬」とすれば、「軟」の代表格は、全米オープンで大坂なおみに敗れたセリーナ・ウィリアムズの猛抗議だろうか。このニュースから meltdown を取り上げたい。
日本では大坂選手の快挙が大々的に伝えられたのは当然だが、メディアのサイトを見る限り、アメリカではウィリアムズ選手の言動の方がより大きい扱いだったという印象を受ける。
審判に猛然と食ってかかった態度や暴言、さらに、「性差別だ」というその主張をどうとらえるかについて、賛否両面さまざまな見方が取り上げられていた。となると、これも「軟」というより、りっぱな「硬」のニュースといえるだろうか。
それはともかく、インターネットラジオやウェブの記事では meltdown という単語がやたらと使われていて、海を隔てた東アジアの一英語学習者である私も否応なく気がつくほどだった。
- Serena Williams had an extraordinary on-court meltdown as she lost the US Open final against Naomi Osaka, after umpire Carlos Ramos penalised the former champion after he declared she had been given illegal prompts from her coach Patrick Mouratoglou.
("'I'm not a cheater' - Serena Williams in extraordinary on-court meltdown as she loses US Open final" Independent.ie Sept. 8, 2018)
- Playing for a place in history at the US Open, Serena Williams has imploded in an emotional meltdown in a final that will now forever be known for its outburst.
("US Open tennis: Serena Williams coach admits signalling to her during loss to Naomi Osaka" The Autralian Sept. 9, 2018)
meltdown といえば、日本人にとっては(残念なことだが)やはり「炉心溶融、メルトダウン」だろう。この単語はこのほか「(株・市場の)暴落」「(組織の)崩壊」を指す。ここ止まりの辞書もあるが、もう少し新しい英和辞典を見ると「冷静さ(自制心)を失うこと」といった意味が載っている。
ただウィリアムズ選手の例を見ると、「冷静さを失う」では文字通り冷静に過ぎ、もうちょっと強い言葉に訳した方がいい場合もあるように思う。今回など「怒り狂う」くらいに訳してもいい-いや最近は「狂う」って言葉は使うとまずいんだったっけ。
英語圏の辞書から引用しよう。
- informal An outburst of severe emotional distress; a nervous breakdown.
They wondered what could have triggered her meltdown.
(Oxford Dictionaries)
- chiefly US, somewhat informal : a very fast loss of emotional self-control
After a long day at the beach, our toddler had a major meltdown in the car on the way home.
(Merriam-Webster Learner's Dictionary)
なお動詞は melt down となる。
ウィリアムズ選手をめぐっては、オーストラリアの新聞に載った風刺画が「人種差別・性差別だ」という非難を招き、これに対して新聞側が作者を擁護するなど、騒ぎはまだ続いている。それだけインパクトが強かったということだろう。
そのせいで大坂なおみ選手が霞んでしまった、というほどではないかもしれないが、ちょっと残念だったのは否めない。彼女のキャラクターがそんな後味の悪さを救ったのもまた確かだろう。今後の一層の活躍を期待したいものである。
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日本では大坂選手の快挙が大々的に伝えられたのは当然だが、メディアのサイトを見る限り、アメリカではウィリアムズ選手の言動の方がより大きい扱いだったという印象を受ける。
審判に猛然と食ってかかった態度や暴言、さらに、「性差別だ」というその主張をどうとらえるかについて、賛否両面さまざまな見方が取り上げられていた。となると、これも「軟」というより、りっぱな「硬」のニュースといえるだろうか。
それはともかく、インターネットラジオやウェブの記事では meltdown という単語がやたらと使われていて、海を隔てた東アジアの一英語学習者である私も否応なく気がつくほどだった。
- Serena Williams had an extraordinary on-court meltdown as she lost the US Open final against Naomi Osaka, after umpire Carlos Ramos penalised the former champion after he declared she had been given illegal prompts from her coach Patrick Mouratoglou.
("'I'm not a cheater' - Serena Williams in extraordinary on-court meltdown as she loses US Open final" Independent.ie Sept. 8, 2018)
- Playing for a place in history at the US Open, Serena Williams has imploded in an emotional meltdown in a final that will now forever be known for its outburst.
("US Open tennis: Serena Williams coach admits signalling to her during loss to Naomi Osaka" The Autralian Sept. 9, 2018)
meltdown といえば、日本人にとっては(残念なことだが)やはり「炉心溶融、メルトダウン」だろう。この単語はこのほか「(株・市場の)暴落」「(組織の)崩壊」を指す。ここ止まりの辞書もあるが、もう少し新しい英和辞典を見ると「冷静さ(自制心)を失うこと」といった意味が載っている。
ただウィリアムズ選手の例を見ると、「冷静さを失う」では文字通り冷静に過ぎ、もうちょっと強い言葉に訳した方がいい場合もあるように思う。今回など「怒り狂う」くらいに訳してもいい-いや最近は「狂う」って言葉は使うとまずいんだったっけ。
英語圏の辞書から引用しよう。
- informal An outburst of severe emotional distress; a nervous breakdown.
They wondered what could have triggered her meltdown.
(Oxford Dictionaries)
- chiefly US, somewhat informal : a very fast loss of emotional self-control
After a long day at the beach, our toddler had a major meltdown in the car on the way home.
(Merriam-Webster Learner's Dictionary)
なお動詞は melt down となる。
ウィリアムズ選手をめぐっては、オーストラリアの新聞に載った風刺画が「人種差別・性差別だ」という非難を招き、これに対して新聞側が作者を擁護するなど、騒ぎはまだ続いている。それだけインパクトが強かったということだろう。
そのせいで大坂なおみ選手が霞んでしまった、というほどではないかもしれないが、ちょっと残念だったのは否めない。彼女のキャラクターがそんな後味の悪さを救ったのもまた確かだろう。今後の一層の活躍を期待したいものである。
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文脈にはありませんが、この試合中にブーイングもあったことからすると、会場全体がin extraordinary meltdownであったと解釈することは可能でしょうか。
by Kawada (2018-09-13 07:35)
Kawadaさん、返信が遅くなってすみません。その時の状況をどう見るかは個人次第ですから、Kawadaさんがそうだと解釈したのだったらそう表現してもいいのではないでしょうか。
by tempus fugit (2018-09-17 09:30)
このニュースに関連しては「勝ってごめんなさい」と大阪が言ったという報道があり、さらにこれが日本人的だ、などというコメントもありました。不自然さを感じていましたが、彼女の台詞がI'm sorry it had to end like this.であり、私の見た限りでは複数の識者がこれを上のように訳すのは誤訳で、単純に「試合がこのような形で終わったのは残念」というような意味だ、と指摘しており得心した次第です。このmeltdownは私のMerriamにもa collapse of sth (as one's self-control)が出ていましたね。
by 英語学習者 (2018-09-18 01:40)
大坂選手の「ごめんなさい」については、ちょうどこれについてのエントリを用意していたところで、先ほどアップしました。よろしければお読みください。
by tempus fugit (2018-09-18 08:55)