皮肉や反語の thank you(トランプ、GMの国内事業縮小に怒る) [注意したい単語・意外な意味]
自動車メーカーGMがアメリカ国内での生産削減を決めたことに対して、トランプ大統領が「もう補助金は出さない」と息まいている。その怒りのツイートを材料に thank について短く書いてみたい。
このニュースを最初に目にしたのは次の記事だったが、少し引用しよう。
- トランプ氏はツイッターでGMが米国3州の工場を止めることに「とても失望した」と述べ、補助金停止に言及した。米政府が経営破綻したGMに公的資金を注入した過去の経緯にも触れ「米国はGMを救った。これが我々が受け取るお礼だ!」と皮肉を込めながら怒りをあらわにした。
(「トランプ氏、GMへの補助金停止を検討 リストラに反発」日本経済新聞 2018年11月28日)
ゼネラル・モーターズが閉鎖する工場があるのはオハイオ州やミシガン州、つまりトランプ大統領や共和党の票田である「ラストベルト」だ。ということで、私のような素人にも大統領の”脅し”に政治的な意図が見て取れるような気がする。
そうした内容とは別に、私が言葉の面で興味を持ったのは「お礼だ!」の部分だった。原文ではどうなっているのだろうか。
ちなみに他の新聞では、
- 「米国はGMを救ったのに、これがその『お礼』なのか!」(朝日新聞)
- 「米国は(経営不振の)GMを救済したが、我々の受け取った感謝がこれだ!」(読売新聞)
- 「米国がGMを救ったというのに、そのお返しがこれか」 (CNN日本版)
- 「米国はGMを救ったのに、その返礼がこれとは!」 (ロイター日本版)
などとなっていた・・・といっても、実は原文を見た後でウェブを検索して見つけたものだが、この中では読売新聞がもっとも原語に近いといえそうだ(というよりほぼ直訳である)。
ということで、2つに分けてアップされた @realDonaldTrump の原文である。前回も触れたが、びっくりマークをつけない文章をトランプは書かない、といえるくらいになってきているようだ。
- Very disappointed with General Motors and their CEO, Mary Barra, for closing plants in Ohio, Michigan and Maryland. Nothing being closed in Mexico & China. The U.S. saved General Motors, and this is the THANKS we get! We are now looking at cutting all @GM subsidies, including....
....for electric cars. General Motors made a big China bet years ago when they built plants there (and in Mexico) - don’t think that bet is going to pay off. I am here to protect America’s Workers!
普通なら感謝を表す Thank you. は、状況や口調によって皮肉など逆の意味を表しうることは、たやすく想像ができるように思う。今回のツイートも、名詞ではあるが同じように考えればいいのだろう。さらに THANKS とすべて大文字にしていて、強調というか怒りを表しているようだ。
これだけで終わりにするのは寂しいので、関連で続けると、辞書には動詞 thank について次のような記述が載っている。
- (通例、未来時制)(特に強い要請または皮肉を込めた非難を表して)<人に>(...を)お願いする;<人に>(...することを)頼む、頼むから...してくれ
I will thank you for the salt. 塩をこちらにお回しください
I will thank you to leave me alone. 構わないでもらいたいですね
I'll thank you to keep your opinions to yourself. 口を差し挟まないでもらいたい
(ランダムハウス英和大辞典)
- (通例will~の形式で)(皮肉・反語)<人>に<...して>もらいたい (to do)
I'll thank you to keep out of my affairs. 私のことはほっといて
I will thank you to mind your own business! 余計な世話を焼かないでもらいたい
(皮肉)(...については)...のせいにする、...に責任がある (for)
You have only yourself to thank (for your failure).(君の失敗は)自業自得だよ
(研究社新英和大辞典)
- I'll thank you to do sth spoken formal
used to tell someone in an angry way not to do something because it is annoying you:
I'll thank you to mind your own business.
only have yourself to thank (for sth) spoken
used to say that you are responsible for something bad that has happened to you:
She has only herself to thank if she doesn't have any friends.
(LDOCE)
例文のような表現に出会ったら、状況から何となくニュアンスをつかめるとは思うが、辞書のこうした説明を読むと、あらためて「なるほど」と思う(ただ、事実上「~しないでくれ」「~してもらっては困る」ということを表す、などと明記してもらってもいいような気はするが)。
また「強い要請」という意味については、日本でも電車などの英語アナウンスで Thank you for your cooperation.を日常的に耳にするようになったが、これも日本的な感覚で「協力してくれるとうれしいな」といったていねいな言葉と考えるのではなく、もっと強い「ちゃんとやってくれよ」というように取るべきなのだろうか?
そういえば、ビジネスメールの締めなどに使われる Thank you in advance.という表現は、人によっては押しつけがましいと受け取られる、と読んだことがある。これは上記のような thank とは意味合いが違うかもしれないが、やはり注意すべきなのかもしれない。
こう考えると thank you という言葉も気軽に使えなくなりそうだ―なんてことはさすがにないが、単純な言葉であっても、そのニュアンスを十全に掴むことはできないのが外国語の難しさなのだろう。
にほんブログ村
このニュースを最初に目にしたのは次の記事だったが、少し引用しよう。
- トランプ氏はツイッターでGMが米国3州の工場を止めることに「とても失望した」と述べ、補助金停止に言及した。米政府が経営破綻したGMに公的資金を注入した過去の経緯にも触れ「米国はGMを救った。これが我々が受け取るお礼だ!」と皮肉を込めながら怒りをあらわにした。
(「トランプ氏、GMへの補助金停止を検討 リストラに反発」日本経済新聞 2018年11月28日)
ゼネラル・モーターズが閉鎖する工場があるのはオハイオ州やミシガン州、つまりトランプ大統領や共和党の票田である「ラストベルト」だ。ということで、私のような素人にも大統領の”脅し”に政治的な意図が見て取れるような気がする。
そうした内容とは別に、私が言葉の面で興味を持ったのは「お礼だ!」の部分だった。原文ではどうなっているのだろうか。
ちなみに他の新聞では、
- 「米国はGMを救ったのに、これがその『お礼』なのか!」(朝日新聞)
- 「米国は(経営不振の)GMを救済したが、我々の受け取った感謝がこれだ!」(読売新聞)
- 「米国がGMを救ったというのに、そのお返しがこれか」 (CNN日本版)
- 「米国はGMを救ったのに、その返礼がこれとは!」 (ロイター日本版)
などとなっていた・・・といっても、実は原文を見た後でウェブを検索して見つけたものだが、この中では読売新聞がもっとも原語に近いといえそうだ(というよりほぼ直訳である)。
ということで、2つに分けてアップされた @realDonaldTrump の原文である。前回も触れたが、びっくりマークをつけない文章をトランプは書かない、といえるくらいになってきているようだ。
- Very disappointed with General Motors and their CEO, Mary Barra, for closing plants in Ohio, Michigan and Maryland. Nothing being closed in Mexico & China. The U.S. saved General Motors, and this is the THANKS we get! We are now looking at cutting all @GM subsidies, including....
....for electric cars. General Motors made a big China bet years ago when they built plants there (and in Mexico) - don’t think that bet is going to pay off. I am here to protect America’s Workers!
普通なら感謝を表す Thank you. は、状況や口調によって皮肉など逆の意味を表しうることは、たやすく想像ができるように思う。今回のツイートも、名詞ではあるが同じように考えればいいのだろう。さらに THANKS とすべて大文字にしていて、強調というか怒りを表しているようだ。
これだけで終わりにするのは寂しいので、関連で続けると、辞書には動詞 thank について次のような記述が載っている。
- (通例、未来時制)(特に強い要請または皮肉を込めた非難を表して)<人に>(...を)お願いする;<人に>(...することを)頼む、頼むから...してくれ
I will thank you for the salt. 塩をこちらにお回しください
I will thank you to leave me alone. 構わないでもらいたいですね
I'll thank you to keep your opinions to yourself. 口を差し挟まないでもらいたい
(ランダムハウス英和大辞典)
- (通例will~の形式で)(皮肉・反語)<人>に<...して>もらいたい (to do)
I'll thank you to keep out of my affairs. 私のことはほっといて
I will thank you to mind your own business! 余計な世話を焼かないでもらいたい
(皮肉)(...については)...のせいにする、...に責任がある (for)
You have only yourself to thank (for your failure).(君の失敗は)自業自得だよ
(研究社新英和大辞典)
- I'll thank you to do sth spoken formal
used to tell someone in an angry way not to do something because it is annoying you:
I'll thank you to mind your own business.
only have yourself to thank (for sth) spoken
used to say that you are responsible for something bad that has happened to you:
She has only herself to thank if she doesn't have any friends.
(LDOCE)
例文のような表現に出会ったら、状況から何となくニュアンスをつかめるとは思うが、辞書のこうした説明を読むと、あらためて「なるほど」と思う(ただ、事実上「~しないでくれ」「~してもらっては困る」ということを表す、などと明記してもらってもいいような気はするが)。
また「強い要請」という意味については、日本でも電車などの英語アナウンスで Thank you for your cooperation.を日常的に耳にするようになったが、これも日本的な感覚で「協力してくれるとうれしいな」といったていねいな言葉と考えるのではなく、もっと強い「ちゃんとやってくれよ」というように取るべきなのだろうか?
そういえば、ビジネスメールの締めなどに使われる Thank you in advance.という表現は、人によっては押しつけがましいと受け取られる、と読んだことがある。これは上記のような thank とは意味合いが違うかもしれないが、やはり注意すべきなのかもしれない。
こう考えると thank you という言葉も気軽に使えなくなりそうだ―なんてことはさすがにないが、単純な言葉であっても、そのニュアンスを十全に掴むことはできないのが外国語の難しさなのだろう。
にほんブログ村
タグ:トランプ
にほんブログ村← 参加中です
コメント 0