dotard 「老いぼれ」「もうろく」 （北朝鮮、トランプ大統領を非難）

先日、トランプ大統領に関係のある記事を読んでいて目にとまったのが dotard である。見慣れない単語だが、記事でもすぐ後に説明をつけていたので、ネイティブスピーカーでもそう感じる人がいるのだろう。

といってもこの言葉を使ったのはトランプではなく、最近またもや情勢が不透明になってきた北朝鮮である。BBCの記事では、あわせて dotage という単語も遣われていた。発音はそれぞれ / ˈdoʊ tərd /、/ ˈdoʊ tɪdʒ / となる。

- North Korea has renewed its verbal attacks on President Trump, after he threatened military action.

The foreign ministry said if Mr Trump was confrontational, it "must really be diagnosed as the relapse of the dotage of a dotard".

The North first called Mr Trump a dotard, meaning old and weak, in 2017.
('Dotage of a dotard': North Korea renews attack on Donald Trump BBC, 6 December 2019)

北朝鮮は、２年前にも使った同じ dotard という言葉で、再びトランプ大統領を非難したわけである。

もちろん原語は英語ではないが、ウェブ上の情報によると、この単語は北朝鮮のメディアが英語版で使ったものなので、いわば「公式訳」といえるだろう。なお２年前に緊張が高まった時は、トランプが金正恩委員長を「ロケットマン」と呼んだことが話題となった（→こちら）。

今回のBBCは上記のように meaning and weak と直後に言い換えているが、さらに dotage とあわせてオックスフォードの辞書を引用して説明している。

- The Oxford English Dictionary defines a dotard as "a person whose mental faculties are impaired, specifically, a person whose intellect or understanding is impaired in old age".

Dotage, meanwhile, is defined as "having impaired intellect or understanding in old age", or in general use as "old age".
(ibid.)

ということで、dotage である人を dotard と呼ぶことがわかる。英和辞典を見ると、「ボケ（ている人）」「もうろく（している人）」「老いぼれ」といった訳語が並んでいる。いずれにせよ挑発的な言葉だ。

由来はどちらも dote 「もうろくする、ボケる」に、それぞれ -ard, -age という接尾辞をつけたものだそうだ。前者は「特に～する性質のある人」ということだが、ふつう侮蔑の意味で使い、他の例として coward, drunkard などが辞書にあげられている。なお -art も -ard と同じで、トランプとのからみでは braggart （自慢屋、ほら吹き）なんて単語も連想した。

「ロケットマン」と「老いぼれ」の応酬を経て結ばれたアメリカと北朝鮮の核をめぐる合意は、案の定、雲行きが怪しくなってきた。北朝鮮はまたも短距離ではあるがミサイルを飛ばすようになっているし、今回の記事にあるように言葉の応酬も再燃している。

素人考えだが、核合意が事実上無効となったとしたら、トランプとしては来年の大統領選挙で票を獲得するにはむしろ強い姿勢を取ったほうが得策だと考えるかもしれない。とんでもない事態にならなければいいのだが。

過去の関連記事：
・「ロケットマン」とは何か？ （トランプ、国連で北朝鮮を非難）
https://eigo-kobako.blog.ss-blog.jp/2017-09-22

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タグ：トランプ