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「この10年の英単語大賞」は「性別を問わない単数の they」 [Word of the Year]

アメリカ英語学会 The American Dialect Society は、年の初めに前年の Word of the Year を選んでいる。今年はあわせて10年に一度の Word of the Decade の選定も行われ、単数を表す they に決まった。

奇しくも、前回のエントリでちょっと触れた「メリアム・ウェブスター」辞典の「2019年の英単語」と同じである。アメリカ英語学会もすでに2015年の Word of the Year として単数の they を選んでおり、当時このブログでも取り上げていた(→ こちら)。

英語には he と she のいずれかにも使える単数の代名詞がない。このため ze という代名詞、あるいは Mx という敬称が考案されたことについて以前書いたことがあるが、普及しているとは言い難いだろう。

実は they を he or she として使うことはそれなりに前から行われていたらしいが、近年はLGBTの動きなどを受けて、gender-neutral、non-binary の観点からより積極的な意味合いを持つようになったようである。

そして、こうした社会の流れは The American Dialect Society の「2019年の英単語」の選考にも反映された。選ばれたのは (My) Pronouns だった。

- In its 30th annual words of the year vote, the American Dialect Society voted for (my) pronounsas its Word of the Year (2019) and singular “they” as its Word of the Decade (2010-2019).
“(My) pronouns” was recognized for its use as an introduction for sharing one’s set of personal pronouns (as in “pronouns: she/her”), while singular “they” was recognized for its growing use to refer to a known person whose gender identity is nonbinary.
https://www.americandialect.org/2019-word-of-the-year-is-my-pronouns-word-of-the-decade-is-singular-they

正直言って、この発表文を読んだ時は意味がつかめなかったのだが、ウェブで調べるとすぐにわかった。このところアメリカなどでは、トランスジェンダー受容を示す動きとして、自己紹介の際、どの代名詞で呼んでほしいかを明示する傾向が生まれているのだという。

例えば、次のようなバッジやタグの画像がウェブで見つかった。2つ目のネームタグには、選択肢として they はないが、上で触れた ze が選べるようになっている。

images.png

gender-neutral-name-badge.jpg


ちなみに、前回の Word of the Decade は10年前に取り上げたが、検索することを表す動詞の google 「ググる」だった(→ こちら)。それに象徴されるように、21世紀初頭の Word of the Year は、ITに関係する単語が選ばれる年が多かった感がある。

それに対してここ数年は、トランプ大統領に象徴されるような、何が真実かが揺らいでいる状況を表す言葉が選ばれてきた。しかし、そうした単語ではなく、性別に縛られない単数の they が直近10年間の Word of the Decade となったのは、英語自体の変化を示すものとして、また人間の意識や社会に起きている変化を反映するものとして、より大きな意味を持っているという考えが選考メンバーにあったのだろうか。


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