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ルーズヴェルト大統領を引用した?安倍総理の記者会見(新型コロナウイルスで非常事態宣言) [ニュースと英語]

前回に続いて新型コロナウイルスにからんで書く。「緊急事態宣言」について安倍総理が今夜行った会見をテレビの中継で見ていたら、ルーズヴェルト大統領の名言が首相の口から飛び出したので、飲んでいたお茶を思わず吹き出しそうになった。

はやくも会見の全文をアップしていた新聞社のサイトがあったので読んでみると、確かにそうしたくだりがあった。

- 最も恐れるべきは恐怖それ自体です。SNSで広がったデマによって、トイレットペーパーが店頭で品薄になったことは、皆さんの記憶に新しいところだと思います。ウイルスという見えない敵に、大きな不安を抱くのは、私も皆さんと同じです。
そうしたとき、SNSは本来、人と人の絆を深め、世界の連帯を生み出すツールであり、社会不安を軽減する大きな力を持っていると信じます。しかし、ただ恐怖に駆られ、拡散された誤った情報に基づいて、パニックを起こしてしまう。そうなると、ウイルスそれ事態のリスクを超える甚大な被害を、私たちの経済、社会、そして生活にもたらしかねません。
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/200407/mca2004072008047-n1.htm より)

これはどう考えても、アメリカのフランクリン・ルーズヴェルト大統領が就任演説で述べた、「われわれが恐れなくてはいけない唯一のものは、恐れそのものである」などと訳されれている言葉のパクリではないだろうか。

1933年の第1回就任演説の中で使われ、世界恐慌に襲われたアメリカの再建に向けた決意を示したものだが、世界史やアメリカなどに関する本で出会ったことがあるという人も多いはずだ。

原文は次のとおりである。先の日本語訳に比べると、ずっと簡潔で締まった言い方であるのに驚く。

- This is preeminently the time to speak the truth, the whole truth, frankly and boldly. Nor need we shrink from honestly facing conditions in our country today. This great Nation will endure as it has endured, will revive and will prosper. So, first of all, let me assert my firm belief that the only thing we have to fear is fear itself--nameless, unreasoning, unjustified terror which paralyzes needed efforts to convert retreat into advance.

大恐慌の際にルーズヴェルト大統領が発した言葉を引き合いにして、新型コロナウイルスという国難の重大さを強調したかったのであろうか。

それにしては、SNS上のデマに惑わされないように、という文脈で使われていて、確かにたいへん重要なことではあるものの、直後に「トイレットペーパー」について語られることもあってか、ルーズヴェルト演説に比べると、なんだかスケールが乏しく感じてしまう。例の「アベノマスク」、布マスク2枚も連想してしまった。

会見の冒頭発言を書いた側近が考えたのか、それとも安倍氏本人が入れたのか。まさか、ルーズヴェルト―アメリカの歴代大統領でも常にトップ3に入る評価を得ている人物―が大恐慌に立ち向かうさまに自分自身をなぞらえたわけではあるまいな。そう思ってしまったほどだった。

私だったら、こうした言葉を引用すること自体、恥ずかしくてできることではないが、そんな羞恥心があるようでは、とうてい政治家など務まらないのだろう。

それよりも、安倍首相には、もっと自分の言葉で話してもらいたいものだとつねづね感じている。いつも、他人が書いたと思われる、情緒的な話と細かい情報がごっちゃに詰め込まれた原稿を、というより目の前のプロンプターに映し出される字を一生懸命読んでいる、という感じが拭えず、個人的にはどうも印象に残らない。

その点では、小池東京都知事の方が、さすがニュースキャスター出身とあってうまいものだが、それはそれで逆に何だか芝居がかっているというか、作り物っぽい印象を受けてしまうことがあるのは、私が天の邪鬼なのだろうか。

それと、小池都知事は横文字が多いのがどうにも気になって仕方がない。「ロックダウン」もそうだが、今夜の会見でも外出自粛の要請で「ステイ・ホーム」という言葉を使っていた。あれ、先日は「ステイ・アット・ホーム」って言っていたのではなかったっけ、と余計なことに気がそれてしまう。

外国語が達者な知人から、「外国語がうまい人ほど、やたらに外国産のカタカナ言葉を使うことはしないものだ」と言われて、私もカタカナ語をなるべく避けるようにしていた。しかしそうしたからといって英語がうまくなるわけではない、「逆は真ならず」、という当然のことを身をもって感じた愚かな私だが、はて、小池さんは外国語が達者ではなかったか、常に例外は存在するということだろうか、と思ったりもする。

英語学習のブログなのに今回はまともな情報は書けなかったが、新型コロナウイルスに対する漠然とした「恐れ」を和らげるため、たまにはこうしたこともいいかな、と言いわけしてみる次第である。

なお、ルーズヴェルト(あるいはルーズベルト)大統領 Franklin Delano Roosevelt は /ˈroʊzəvəlt/, /-vɛlt/ と発音されるので、「ローズヴェルト」の方がより原音に近いといえるだろうし、実際にそういう表記も目にするが、ここでは長く慣用的に使われている「ルー~」の表記にした。


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