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アメリカ版「自粛警察」~ vigilante, public shaming [ニュースと英語]

少し前の「ニューヨーク・タイムズ」紙を読み返していたら、新型コロナウイルス対策に従わない人たちを吊し上げる行動について取り上げた記事があった。その中で vigilante 「自警団員」が使われているのを見て、なるほどこういう場合にも使えるのか、と思った。

私がこの単語を印象づけられたのは、若いころ、アメリカンコミックスや映画のスーパーヒーローものが日本でもそれなりに話題になった時期があり(といっても、「DC」や「マーベル」という言葉を普通に目にするほどにはならなかったので、今は隔世の感があるが)、関連する英文を読むと時折り目にしたからだ。

スーパーヒーローたちは、正規の治安組織には属さず、誰からの指図も制約も受けない。あくまで自分が正しいと思う考えに従って超人的な力を行使するわけで、その力を私利私欲のために使う恐れもあるし、そこまで行かなくても、個人の信念が公衆の考えに必ずしも一致しないこともありうる。その意味ではまさに「自警団」のような存在なのだ。

そうした、「単純に”正義の味方”と言えるのか?」という視点を取り入れることによって、最初は単なる子供向けのマンガとして始まった作品が、大人の鑑賞にも耐える映画やグラフィック・ノベルを生みだし、発展していくことになる。一連の「バットマン」のシリーズなど、その好例といえるだろう。

前置きが長くなったが、私が読んだ記事には、コロナ禍における「アメリカ版自粛警察」ともいうべき事例がいくつか紹介されていた。

そのひとつは、経済活動の禁止令に抗議する集会に参加した医師の写真がフェイスブックで広まり、その医師が勤務先の病院から1週間の業務停止を食らった、というものだ。

きっかけは、「密」の場にマスクをせずに参加している医師の写真を同郷の人がフェイスブックで見つけたことだった。"Go to his hospital at your own risk." とコメントしてシェアしたところ大きな反響を呼び、病院には電話が相次いだという。このくだりに vigilante が出てくる。

- Dr. Murdock became one of the most public casualties of a growing crowd of social distancing vigilantes, Americans frustrated by fellow citizens violating government orders to wear masks, close nonessential businesses and refrain from gathering in groups.
("Social Distancing Informants Have Their Eyes on You"
The New York Times May 4, 2020)

日本と同じく、ビラを貼りつけて公の場でさらし者にするという行為も見られ、記事では public shaming という言葉で表現していた。

- Some people are resorting to anonymous acts of public shaming. The tone is nasty at times.
In Manhattan’s East Village, profanity-laden posters have been tacked to telephone poles chastising people for not wearing face masks. In Long Beach, Washington, a popular weekend getaway for Seattleites that had been closed, a flyer left on car windshields said, “Your vacation is not worth our lives.”
(ibid.)

アメリカの自治体の中には、「通報しました」という行為を”コロナ対策破り”の取り締まりに役立てようと、通報受けつけ専用の電話窓口やアプリを作ったところもあるという。日本と違って強制力や罰則のあるロックダウン、シャットダウンとはいえ、「そこまでやるか」と思ってしまったが、この記事は vigilantism という言葉が使って紹介していた。

- In some cities and counties, vigilantism has been encouraged by municipalities that have set up special phone numbers, apps or online forms to report violations.
(ibid.)

ついでにと、日本の「自粛警察」についての英文を探してみたら、この言葉を次のように表現した記事があった。上で取り上げた単語も出てくる。

- But Japan does have its own share of vigilantes. Dubbed jishuku keisatsu (self-restraint police), these self-righteous individuals aggressively monitor the internet and hunt for cars traveling from outside the prefectures where they were registered, in a collective bid to shame anyone flouting stay-at-home requests and potentially putting others at risk.
("Japan's 'virus vigilantes' take on rule-breakers and invaders"
The Japan Times May 13, 2020)

記事を読んでいると、このような行動に走る人がいるのは洋の東西を問わないのだな、とちょっと悲しい気持ちになってくる。

余談だが、日本政府が出している英文を見ると、「三密」が英語で Three Cs と表現されている。下記の画のように、Closed spaces, Crowded places, Close-contact settings の頭文字を取ったものだ。

うまいものだと思ったが、検索してみるとヒットする英文はどれも日本のサイトにあるものばかりで、日本政府が独自に考えて使っている表現らしい。

ということで、英語圏でもこの言葉が普通に使われているかといえば疑問で、説明なしに単に 3Cs と言ったり書いたりしただけでは、まず通じないのではなかろうか。

Three Cs.jpg


過去の参考記事:
飛行機の利用はカッコ悪い~flight shame 「飛び恥」
mano a mano, mano y mano (映画「バットマン」)


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