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undercount ~新型コロナウイルスの感染者はもっと多い? [ニュースと英語]

先日 out-Herod Herod という表現や out- がつく動詞について書いたが(→こちら)、新型コロナウイルスに関係する記事を眺めていると under- がつく動詞や名詞が目にとまることがある。その形だと under- がつく元の言葉には及ばない・足りない・劣る、という意味になる。

いくつか実例をあげてみよう。まず、何日か前の「ニューヨーク・タイムズ」紙に undercount という言葉が出ていた。「(アメリカでの死者数を)実際の数より少なく数えている」「数え落としがある」ということを表している。

- Dr. Anthony S. Fauci, the nation’s top infectious disease expert, told lawmakers this month that the overall toll was likely an undercount. “I don’t know exactly what percent higher but almost certainly it is higher,” he said at a Senate health committee hearing.
("Trump Suggests Virus Death Count Is Inflated. Most Experts Doubt It"
The New York Times May 22, 2020)

なお同じ記事には、逆の意味である overcount も出てくる。

- He said it was unlikely that there was any kind of overcount.
(ibid.)

「実際より少ない」といえば、日本では実施されている検査が他国と比べるとぐっと少ないので、新型コロナウイルスの感染者の数も少なく出ているのではないか、つまり実際はもっと多いのではないか、と言われている。

「ニューヨーク・タイムズ」紙の少し前の記事は、これについて underreport 「実数より報告数が少ない」という言葉で伝えていた。

- For now, Japan has managed to limit outbreaks and has not reported high numbers of deaths or overburdened intensive-care units.
Skeptics warn that Japan may be vastly underreporting infection rates because it is not testing people nearly as much as other countries. They worry that the number of severe illnesses and deaths could rise drastically, particularly among Japan’s disproportionately older population.
("What to Call 2021 Olympics? Just One of Many Challenges for Japan"
The New York Times March 25, 2020)

またアメリカの「フォーリン・ポリシー」誌は今月、「日本政府が取っているコロナ政策は的はずれなのに、なぜか感染者が抑えられている」というトーンで取り上げ、日本のメディアでも紹介されていたが、そこでは understate 「実際よりも少なく述べる」「控え目に表現する」が使われていた。

- These almost miraculously low figures come despite Japan being close to China, with a large number of tourists. It is also the world’s fastest-aging society—yet has escaped, it seems, being severely hit by a virus that is particularly deadly to older people. While Japanese medical experts admit that the official count may understate the real total, they say other related causes of death, such as pneumonia, have not seen any unexpected surge.
("Japan’s Halfhearted Coronavirus Measures Are Working Anyway"
Foreign Policy May 14, 2020)

たとえ捕捉数が少なかったとしても死者の数が少ないのだから、日本では感染が抑えられているといっても間違いではないだろうが、それはなぜなのか。日本人の国民性や衛生習慣をあげる人もいれば、BCGの予防接種に効果があるのではという声もある。山中伸弥先生は、その理由を「ファクターX」と呼んでいるほどだが、それが何なのかは今のところわかっていない。

国民性や衛生意識の高さのおかげだといわれると悪い気はしないが、当の日本人自身も実のところ、「強制力のない緩い対策しか取れないのに、どうして少ないのだろう」と不思議に思っている人が多いのではないだろうか。

と思っていたら、緊急事態宣言が完全解除されて間もないのに、第2波の懸念が出てきたところがある。専門家会議の分析では、感染のピークは実は4月1日ごろだったというし、私が住む東京圏では、宣言解除の少し前から人出が明らかに増えた感がある。

ふたたび感染者が急増し、「ファクターX」など実は存在しなかった、感染者が少なかったのは単に運がよかっただけだった、ということにならなければ良いのだが。


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