systemic racism 「人種差別的な社会の仕組み」

このところアメリカの人種問題にちなむ英語表現を取り上げているが、このテーマについての記事を読んでいてちょくちょく目にするのが systemic racism という言葉だ。

辞書を見ても見出し語としては載っていないが、この２語の組み合わせでよく使われる言葉あるいは概念だと言っても差し支えないだろう。

例えば次のような実例がある。

- My parents wanted to teach us that the America they loved harbored injustices and systemic racism, yet it was a union we had a duty to try to perfect.
("Washington, D.C., Deserves Statehood" The New York Times, June 9, 2020)

- Robert O’Brien, President Donald Trump’s national security adviser, told CNN on May 31st that though “there are some bad cops that are racist” he did not think there was “systemic racism”. But systemic racism does not mean that all officers are racists or bad people; it means that the system operates in a racially biased manner regardless of individual motivations.
("How to fix American policing" The Economist June 4, 2020)

systemic racism を「体系的な人種差別」とか「組織制度的な人種差別」と辞書的に考えると何だかわかりにくいが、この言葉が出てくる記事を読むと、あからさまな言動や規則としての人種差別ではなく、結果的に人種差別をもたらす社会構造や仕組みを指すようだ。詳しくご存じの方はご教示いただけたら幸いである。

私が読んだもので例としてあげられていたのが、アメリカの都市圏では富裕層の住む行政区と貧困層の住む行政区がわかれているところが目立つことだ。単に場所の棲み分けがあるだけでなく、公共サービスは地域の税収によってまかなわれるので、それが低い貧困地区では、そうでない他の地域と比べて治安や教育などの面で差が生まれる。

その結果、こうした地区の人々は、はじめから格差に直面して育ち、貧困から抜け出せず、十分な教育を受けることができず、非行にも走りやすくなるという。そして残念ながら、そうした地区に多く住むのが黒人をはじめとする有色人種であるのが現状だ。

私はアメリカに詳しいわけではなく、もちろん住んでもいないので、こうした問題に実感を持つことができないのが残念である。ただ、ひところ行われていたような激しいデモは伝えられなくなったものの、すぐに解決できる問題ではないことは容易に想像がつく。そして、今後も systemic racism を目にし続けることになるだろうということも想像に難くない。次は先月の「タイム」誌のカバーストーリーにあった一節である。

- More broadly, the notion of “systemic racism,” once confined to academic and activist circles on the left of the spectrum, has become the phrase du jour, with Google searches for the term rising a hundredfold in a matter of months and mainstream conservatives like former President George W. Bush joining historically moderate Democrats like Joe Biden in embracing the term to call for a national reckoning.
("America's Long Overdue Awakening to Systemic Racism" TIME June 11, 2020)

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