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majority-minority area「マイノリティが多数を占める地域」(バイデン新大統領就任) [辞書に載っていない表現]

バイデン氏がアメリカ大統領に就任してまもなく1週間になる。日本時間の未明に行われた式典は、私も当日テレビの中継で見た。就任演説で印象に残ったのは、やはり国民の団結を繰り返し呼びかけていたことである。

前任のトランプ氏については非難はもちろん、具体的な言及も避けるのではないか、と私は予想していたのだが、やはりそうだった。これ以上の分断を避けるためには抽象的な言い方にならざるを得ないだろうし、それが最も無難なやり方だろう。

ただ、表現を変えてはいるものの、ここまで何度も結束を呼びかけるとは思わなかった。アメリカの特質である前向きな楽観主義を信じる、というようなことも言っていたが、割いた時間の長さと相まって、かえって事態の深刻さを浮き彫りにし問題解決への道のりの険しさを感じさせるものになったのではないか。

そして、個々の表現を聞くと印象的なのだが、全体としては正直言って「長いな」と感じてしまったのも否めない、というと不謹慎だろうか。

「退屈」というのはさすがに言い過ぎか、と思っていたら、就任演説についての「タイム」誌の記事で次のようなくだりが目にとまった。

- It was, as television at least, a little bit dull. (中略) But hey, maybe an address that had us checking our watches every other minute was the perfect way to shake off the curse of living in interesting times. By the end of Biden’s remarks, one sentiment had become so common on Twitter that it almost qualified as a meme: what a relief to be bored by the President!
("Joe Biden’s Inaugural Events Made a Spectacle of Normalcy. Is That What America Needs Now?" TIME, January 21, 2021)

この記事の筆者も、演説は "a little bit dull" だったと書いているのを見て、「なるほどやはりそうか」と思ったのだが、その先を読んで、また違った意味で「なるほどそうか」と思った。

つまり(記事のタイトルでも normalcy を使っているように)「大統領に退屈さを感じることができるのは、むしろ普通で正常なことで安堵すべきであり、これまでのトランプ時代の方が異常で普通ではなかったのだ」という形で論を進めている。

カリスマ性に欠け調整型であるバイデン氏を擁護しようとしている、と意地悪な見方もできなくはないが、少なくとも、一部で目にした「近来にない名就任演説だった」というような持ち上げ方よりも好ましいと感じた。また記事を読み進めると、筆者も単純に楽観視しているわけではないこともわかる。

さて今回は、上記の記事で目にとまった majority-minority という言葉を取り上げたい。

- “Today, we celebrate the triumph not of a candidate, but of a cause, the cause of democracy,” Biden declared in his address. Yet all around him, extreme security measures enacted in the wake of the Jan. 6 uprising had closed off much of Washington, D.C.—a majority-minority city recently under siege by white supremacists. A fence topped with razor wire, which was visible in footage of the inauguration despite the cameras’ focus on a smattering of masked dignitaries, surrounded the Capitol.
(ibid.)

文脈から、またワシントンD.C.について多少の知識もあれば、意味はすぐに見当がつくだろう。社会的には少数派の人々が、数の上では多数派を占めている、ということを表しているはずだ。

首都ワシントンではアフリカ系アメリカ人が住民の最大多数を占めている。私もその昔この都市を訪れたことがあるが、中心部にある官公庁などを外れた地区に行くと、なるほど黒人が多いなと感じたものだった。

この表現は英語圏の辞書でも見当たらなかったが、数少ない例外として下記があった。なお2つ目のWikipedia では、アメリカだけでなく各国の例も紹介されている。

- relating to a population in which more than half represent social, ethnic, or racial minorities, and in which fewer members of the more socially, politically, or financially dominant group are represented:
majority-minority public schools.
(Dictionary.com)

- A majority-minority or minority-majority area is a term used to refer to a subdivision in which one or more racial, ethnic, and/or religious minorities (relative to the whole country's population) make up a majority of the local population.
https://en.wikipedia.org/wiki/Majority_minority

上記 Wikipedia は名詞の前につける限定的用法で説明しているが、majority-minority だけで叙述的に使うこともできる。Wikipedia は別の項目で首都ワシントンについて次のように説明している。

- The District of Columbia reached a majority Black status during the latter stages of the Great Migration. Although the district is still majority-minority, Black people made up only 44.2% of the population in 2019. The shift has mainly been driven by an influx of Hispanics and non-Hispanic whites.
https://en.wikipedia.org/wiki/Majority_minority_in_the_United_States

さて、TIME誌のウェブサイトを見ると、最新号の表紙として下記の画が載っている。紙版が日本でもすでに書店に並んでいるのか確かめていないが、たぶんアジア版も同じカバーになるだろうし、今回紹介した記事もこの号に収められているのではないかと思う。

トランプ氏が、大統領執務室 the Oval Office の中に書類を積み上げたり床に散らかしたりとメチャメチャにして去り、その後を引き継ぐことになったバイデン氏が(背を向けているので顔の表情ははっきり描かれていないものの、たぶん)呆然と窓の外を見て思案に暮れている。新大統領が置かれた状況と前途に横たわる多難を見事に表した表紙だと思う。

Biden.Oval_.Cover_.jpg

ワシントンD.C.についての過去の参考記事:
アメリカ版永田町 the Beltway
ホワイトハウスの the Grand Foyer (「ホワイエ」)


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