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pie in the sky 「絵空事」の sky は「天国」を指していた [英語のトリビア]

このところ blue-sky 「非現実的な」にからめて何度か書いてきたが、似た意味を持ち、かつ sky が使われた表現で思いつくのが pie in the sky だ。よく知られたイディオムだろうから取り上げるつもりはなかったが、由来を知らなかったので調べてみたら、ちょっとおもしろいことに気づいたのでメモしてみたい。

「絵に描いた餅」「絵空事」「空頼み」「空手形」「空約束」・・・など、英和辞典もそれらしい日本語をあてて訳語に工夫をしているイディオムである。

私は何となく、「腹が減った時に空に浮かんでいるパイを思い浮かべる」というようなことから出来たものだろうと想像していた。あるいは、日本語の「虚空」のような、”虚”というイメージが sky にもあるのかもしれない。

しかし、本当にそうなのかと思って今回調べてみると、どの記述も由来について明確なエピソードを示していた。人気番組「チコちゃんに叱られる!」の「※諸説あります」ではないが、由来が定まらないイディオムが目につく感がある中で珍しい。

そうした記述はどれも結構長いのだが、例外的に短くまとまっている説明を引用しよう。

- The phrase is originally from the song “The Preacher and the Slave” (1911) by Swedish-American labor activist and songwriter Joe Hill (1879–1915), which he wrote as a parody of the Salvation Army hymn “In the Sweet By-and-By” (published 1868). The song criticizes the Salvation Army for focusing on people’s salvation rather than on their material needs:

You will eat, bye and bye,
In that glorious land above the sky;
Work and pray, live on hay,
You’ll get pie in the sky when you die.
(Wiktionary)

他の記述も参考にして補足すると、 20世紀初めに Industrial Workers of the World (略称 Wobblies)という無政府主義を掲げる労働者団体がアメリカで活動していた。こうした団体が皆の団結を強めるために歌を歌うのはよくあるようだが、Wobblies もそうした歌集を持っていたそうだ。

そしてメンバーである上記 Joe Hill という人物が1911年に作った歌は、キリスト教の慈善団体 Salvation Army で歌われている歌のパロディだった。「救世軍」は日本でも年末に行っている社会鍋の街頭募金で知られている。

Wobblies は、救世軍が「現世で従順であれば来世に幸せになれる」と説いているとして批判していた。元歌の歌詞は "In the sweet by and by / We shall meet on that beautiful shore." というものだが、Joe Hill はそれをひねって上記のような歌詞にして皮肉っている。

パロディ歌のタイトルである The Preacher and the Slave もトゲのあるものになっている。元歌とパロディの by (bye), sky, pie, die が韻を踏んでいるのは言うまでもない。

ということで、パロディに出てくる pie in the sky の sky は、これまで書いた blue skies のような現世の空ではなく、来世の空、定冠詞のついた「天国」という意味で使われている、ということになるはずだ。

聖書やシェイクスピアなどの”由緒ある”由来ではなく、出来てからたかだか100年ちょっとしか経っていない”新参者”でありながら、イディオム集の類でよく目にするような表現になったのがおもしろい。いわば”成り上がり者”なのだ。

元歌とパロディは、いずれもウェブで聞くことができるが、このうち後者については、名作「花はどこへ行った」 Where Have All the Flowers Gone で知られるピート・シーガー Pete Seeger が歌ったものが、ライブで聴衆の笑い声も入っていて愉しめる。



なお彼は "...when you die" のあとに "That's a lie." と付け加えて歌っているが、この歌についての Wikipedia の記述によると、この部分は "The chorus is sung in a call and response pattern." つまりコーラスがつける「合いの手」なのだそうだ。
https://en.wikipedia.org/wiki/The_Preacher_and_the_Slave

最後に、英語圏のオンライン辞書にある記述や例文を抜き書きしておこう。

- An impossible, unlikely, or fanciful idea or plan. Often hyphenated.
He keeps talking about how he'll move to Los Angeles to be a famous actor, but it's just pie in the sky if you ask me.
If you'd spend more time working and less time coming up with these pie-in-the-sky fantasies, you might actually get somewhere in life!
(Farlex Dictionary of Idioms)

- If you describe an idea, plan, or promise of something good as pie in the sky, you mean that you think that it is very unlikely to happen.
Synonyms
a false hope
a fantasy
an illusion
a mirage
a delusion
a pipe dream
a daydream
an unrealizable dream
a castle in the sky
(Collins English Dictionary)


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