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スヌーピーと"小説のマズい書き出し" (reverse-engineer) [英語文化のトリビア]

多忙続きで英語との接触もままならない状態なので、学習ノートにメモしていた reverse-engineer という言葉を紹介して久しぶりの更新とするが、その関連で偶然にも前回も取り上げたマンガ「ピーナッツ」にかかわるトリビアを知ったので、あわせて書いてみたい。

まず、reverse-engineer は、以前も取り上げたことがある(→こちら)ペーパーバックで拾ったものだ。多数の小説を統計学的に分析して使われている言葉の傾向や特徴について考察した、興味深い本である。

「印象深い書き出し」について取り上げた章に、次のようなくだりがあった。

- We may not be able to reverse-engineer the perfect opener, but what do we find if we look at the other end of the spectrum--at bad first sentences?
(Nabokov's Favourite Word Is Mauve by Ben Blatt)

reverse も engineer も基本的な単語だが、これが組み合わされると、どんな意味になるのだろうか。なかなか思いつかないので、辞書を見てみると、名詞形の reverse-engineering として、

- 逆行分析(他社の製品を分解・解析し、組み込まれている設計思想・原理・構造・技術などを自社製品に応用する手法)
(リーダーズ英和辞典)

- リバースエンジニアリング(Reverse engineering、直訳すれば逆行工学という意味)とは、機械を分解したり、製品の動作を観察したり、ソフトウェアの動作を解析するなどして、製品の構造を分析し、そこから製造方法や動作原理、設計図などの仕様やソースコードなどを調査することを指す。
(ウィキペディア)

文化系で現在は事務仕事しかしていない私なのでメモしておいたが、モノづくりをしている人には珍しくもない言葉なのかもしれない。

英語圏の辞書から reverse-engineering の説明と例文を引用しよう。

- the activity of examining and copying a product developed by another company in order to make your own product
The company for years engaged in the reverse engineering of semiconductors.
(Macmillan Dictionary)

- Reverse engineering is a process in which a product or system is analysed in order to see how it works, so that a similar version of the product or system can be produced more cheaply.
Not only did the group acquire reverse engineering skills in the process, it also gained entry into the global market.
(COBUILD Advanced English Dictionary)

ところで冒頭にあげた本では、引用した部分のあとに「マズい出だし」のトップとして、"It was a dark and stormy night." という文があげられていた。

最初にここを読んだ時に、あっと思った。前回のエントリでも触れたマンガ「ピーナッツ」で、小説家になったつもりのスヌーピーがタイプライターでよく書いている文であり、何度もお目にかかるものだったからだ。
s-darknight.jpg
上記の本によると、これは Edward Bulwer-Lytton というイギリスの小説家が1830年に書いた Paul Clifford という作品の冒頭に出てくるものだという。

さらにネットで調べたら、この文は、Wikipedia が「芝居がかった書き出しの例としてよく引き合いにされる」として、項目に立てているほどだということがわかった。

- "It was a dark and stormy night" is an often-mocked and parodied phrase considered to represent "the archetypal example of a florid, melodramatic style of fiction writing", also known as purple prose.

The status of the sentence as an archetype for bad writing comes from the first phrase of the opening sentence (incipit) of English novelist Edward Bulwer-Lytton's 1830 novel Paul Clifford.
https://en.wikipedia.org/wiki/It_was_a_dark_and_stormy_night

昔よく読んでいた「スヌーピー」のマンガで何の気なしに目にしていたおなじみの場面に、こうした背景があったことを何十年後になって知ったので、何とも驚いたしだいである。

なお上記の引用にある incipit とは「書き出しの部分」の意味で、以前取り上げたことがあるので、ご参考まで(→こちら)。

スヌーピーについては、以前、"Call me Ishmael" という有名な書き出しが出てきた例に触れたことがあるが(→こちら)、今回とあわせて、こうした背景を知らないと本当のおもしろみがわからないということになり、マンガといえども、いまマンガだからこそ、難しいところがあるものだ。

過去の参考記事:
incipit 「書き出しの部分の言葉」
「印象的な書き出し」紹介サイトで英語を学ぶ (famous opening lines) 
Call me Ishmael. 「まかりいでたのはイシュメールと申す風来坊だ」(メルヴィル「白鯨」)

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