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a Pollyanna 「底抜けの楽天家」, Pollyanna syndrome 「現実を直視しないこと」 [固有名詞にちなむ表現]

前々回の Jeremiah前回の Cassandra は不幸や凶事を唱える人物だが、同じく固有名詞に由来し、しかし真逆の「楽天家」を指す a Pollyanna という言葉を連想したので書いてみたい。

私がこの言葉に最初に出会ったのはずっと昔の若い頃だったが、その時は意味を調べずに素通りしてしまった。

英語の本や新聞などではなく、何かのプライベートな英文でたまたま目にしたという記憶がある。そのためか、スラングか何かだろう、どうせ辞書を引いても見当たらないだろう、と決めつけたらしい。

実際には、たいていの辞書に載っているはずで、その時に調べるべきだった。

それでも字面をおもしろく感じたのだろう、潜在意識には残っていたらしく、ずっと後に再会したときに、すぐに「これはあの時の言葉だな」と記憶が蘇った。

この「ポリアンナ」は、20世紀初めにアメリカの Eleanor Porter という作家が書いた児童向け物語に出てくる主人公で、逆境にあっても "The Glad Game" という”幸せ探し” をする前向きな少女だそうだ。

私自身は読んだことはないが、日本では「少女パレアナ」という違う名前にした訳書も出ており、アニメにもなっているので、ご存じの方も多いのではと思う。

私の英語学習ノートには、次のような実例がメモしてあった。出典は書いていなかったが挙げておく。

- And I don't want to be a Pollyanna but it's not impossible all these changes that we are now seeing in the Middle East might some day make that more possible.

ウェブの辞書や電子辞書で目にとまった例文も、形容詞の Pollyannaish を含めて挙げておこう。

- Robinson Crusoe is a prototype Pollyanna, comparing what is bad with what might have been much worse.
- Does this mean that we all should be brainless Pollyannas, cheerfully accepting whatever comes down the line?
- It may seem Pollyannaish to find anything positive about the current political landscape, but this could be seen as a moment of opportunity for progressives.

また Pollyanna principle という言葉があり、悪いことよりも良いことの方をよりよく覚えていることを意味する。Pollyanna effect は、ネガティブな言葉や情報よりもポジティブなものの方がより大きな影響を持つ傾向を指すそうだ。

さらに Pollyanna syndrome は、自分に都合の良い面だけを見て現実の問題を直視しないという、行き過ぎた楽観主義のマイナス面を指す言葉だという。おもしろいことに金融市場についても使われるとの記述を見つけたので、長いが引用しよう。

- Named after this charming girl, the "Pollyanna principle" in psychology refers to the fact that we tend to look at the past with rose-tinted spectacles.
The term "Pollyanna syndrome" has also been used, although it isn't a clinical syndrome as such. It is instead a state of mind, one in which the subject remains stubbornly optimistic and upbeat regardless of the external circumstances.
The concept has been applied to the financial markets, to illustrate the fact that being carried away with optimism when the circumstances don't warrant it can have disastrous consequences.
("The Dark Side of Constant Optimism" Psychology Today, Posted October 11, 2022)

こうした専門的な用語について書くにはもっと調べる必要があるが、今はその余裕がないのでこの程度にする。

最後に英語圏の辞書から Pollyanna についての記述をいくつか抜き書きしておこう。

これまでに挙げた実例からもわかるように、「直面する問題から目をそらす」「現実に目を向けない」といったニュアンスで使われることがあり、下記の Wikipedia にはそうした内容も書かれている。

どこまでも明るい少女が由来となっているが、複雑な現代社会では無邪気のままではいられないという現実を反映しているようで、ちょっと哀しい気持ちになる。

- A person regarded as being foolishly or blindly optimistic.
[After the heroine of the novel Pollyanna, by Eleanor Hodgman Porter (1868-1920), American writer.]
(American Heritage Dictionary of the English Language)

- a person characterized by irrepressible optimism and a tendency to find good in everything
I'm no Pollyanna, but I do think some good will come out of this.
(Merriam-Webster)

- As a result of the novel's success, the adjective "Pollyannaish" and the noun "Pollyannaism" became popular terms for a personality type characterised by irrepressible optimism evident in the face of even the most adverse or discouraging of circumstances. It is sometimes used pejoratively, referring to someone whose optimism is excessive to the point of naïveté or refusing to accept the facts of an unfortunate situation.
https://en.wikipedia.org/wiki/Pollyanna

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TM

人名シリーズ、今回も勉強になります。原典の小説は英語の世界では古典なのでしょう。英語ネイティブにはピンと来るのかもしれません。上記Wikiからの引用中、influenceの項にガーシュインの曲の歌詞に使われているとのこと。But Not for Meという曲の歌詞に"I never want to hear from any cheerful pollyannas/who tell me fate supplies a mate/that's all bananas" (performed by Judy Garland in the 1943 movie Girl Crazy).ボーカルファンにはなじみのあるスタンダードです。ジャズでもインストで録音されたもの多数。こんなに広がりがあることに感心しました。またまた深さと広がりを教えていただいて感謝です。
by TM (2024-07-15 23:31) 

tempus_fugit

 But Not for Me はチェット・ベイカーの歌やマイルス・デイヴィスの演奏で私も好きな曲ですが、引用した Wikipedia にある
"This pejorative use can be heard in the introduction of the 1930 George and Ira Gershwin song "But Not For Me" (中略) (performed by Judy Garland in the 1943 movie Girl Crazy).
の記述について、私はこの introduction を歌詞ではなく、映画でジュディー・ガーランドが歌を紹介する前フリのセリフと考えてしまいました。
 しかしTMさんのご指摘で改めて調べてみたら、実はこれはヴァース verse (前奏の詞)に出てくるもので、つまり確かに歌詞に使われているのですね。また「前フリ」であるのなら introduction to となるのかなとも思いました。
 ヴァースの音楽は作品によっては印象が薄く、省かれて演奏される場合がけっこうあり、Chet Baker の録音でも歌われていませんが、いずれにせよ自分で取り上げておきながら、調べや読みが甘かったことを気付かされました。どうもありがとうございました。
 余談ですがスタンダード・ナンバーでヴァースがすばらしいと思うのは「スターダスト」Stardust で、この作品はverseを省いてchorus(サビ)だけの演奏だとまったく満足できません。
by tempus_fugit (2024-07-18 00:12) 

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