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cockeyed optimist 「根っからの楽天家」 [辞書に載っていない表現]

このところ楽観/悲観的な人を表す言葉を取り上げているが、今回は cockeyed optimist という表現を紹介したい。これも手元にある英和辞典にはいずれも載っていなかった表現で、実例に触れて知った言い回しである。

まずは、自分の英語学習ノートにメモしていた実例を書いてみよう。

- “Look on the sunny side of life.”
“Turn your face toward the sun, and the shadows will fall behind you.”
“Every day may not be good, but there is something good in every day.”
See the glass as half-full, not half-empty.

Researchers are finding that thoughts like these, the hallmarks of people sometimes called “cockeyed optimists,” can do far more than raise one’s spirits. They may actually improve health and extend life.
("A Positive Outlook May Be Good for Your Health" The New York Times, March 27, 2017)

上記のタイトルはウェブ版のものだが、私がこれを読んだのは、よく利用している図書館で手に取った「ニューヨーク・タイムズ」の紙版で、記憶に間違いがなければ、そちらのタイトルにはこの cockeyed optimist (あるいは optimism)が入っていた。

そもそもこの記事を読んだのも、新聞のページをめくっていたらタイトルにあるこの言葉が目にとまり、おもしろい表現だなと思ったのがきっかけだったと思う。ただコピーを取ったりはしなかったので、本当にそうしたタイトルだったかは確かではない。

それはともかく、cockeyed (または cock-eyed)を英和辞典で見ると、「傾いた、ゆがんだ」「斜視の、やぶにらみの」、さらには「風変わりな、ばかげた」などの訳語が載っている。

そんなことから、私も「ゆがんだ楽観主義」「斜に構えた楽天家」のように受け取ったが、ちょっと記事のトーンとあわないような気がした。

引用符がついていることから、この2語を組み合わせたお決まりの表現かと思い、手持ちの辞書を引いたが見当たらなかった。

そこでインターネットで調べてみたら、これはロジャーズ=ハマースタインによる名作ミュージカルで映画にもなった「南太平洋」 South Pacific のナンバーのひとつであることがわかった。なので「この表現なら知っている」という方もいるだろう。邦題は「やぶにらみの楽天家」が定訳のようだ。



歌詞の冒頭は次のようになっている。

- When the sky is a bright canary yellow
I forget ev'ry cloud I've ever seen
So they called me a cockeyed optimist
Immature and incurably green

ここでは「ゆがんだ」「ばかげた」という訳語に過度に引っ張られる必要はなく、「”おばかさん”といえるほどのどうしようもない楽天家」くらいに取ってもいいのではないか。

文脈によっては、文字通りの「愚かな楽天主義者」という意味あいで使われることもあるのだろうが、最初に引用した記事も「南太平洋」に沿ったニュアンスで使っているように思う。

あるいは、本来 cockeyed view 「歪んだものの見方」のように使う cockeyed を optimist と組み合わせたところにおもしろさがあり、この形で使われるようになったのかもしれない。

さらには、optimist は optic や optical と何となく音の響きが似ているのものの、語源も意味もまったく関係ないが、その連想から”視覚”にかかわる eye の入った cockeyed を思いついて組み合わせたのだろうか、というのは私の妄想である。

ウェブで調べると cockeyed optimist はそれなりのヒットがあり、確かにこの形で使われていることがうかがえるが、英語圏の辞書でも見出しに取り上げているものはあまりないようだ。

例外的に見つかったものとしては、

- cliché Someone who, perhaps foolishly or absurdly, always believes in the best or most hopeful outcomes.
I appreciate your cheery attitude, Tom, but I don't need a cockeyed optimist as an advisor—I need someone a bit more grounded in reality.
A: "You really think that you can win them over with this idea?" B: "What can I say? I've always been a bit of a cockeyed optimist."
I try to be a cockeyed optimist, but even I don't see them actually pulling out a win here.
(Farlex Dictionary of Idioms)

cockeyed 単独では、squint や slanted, crooked の意味のほかに、今回の表現に沿った次のような説明が見つかる。

- somewhat confusing, foolish, absurd, or impractical
a cockeyed scheme/idea
Call me a peacenik, a cockeyed optimist, a technology fanboy—I've been called worse—but I see the opportunity in engaging, in negotiating, and in connecting these cultures …
(Merriam-Webster)

なお cockeyed は文字だけだと「コック・アイド」のように読みたくなりそうだが、音としては「カカイド」(イギリス風なら「コカイド」)といった感じになることが「南太平洋」の歌からもわかる。また強勢は第一音節に置くのが標準のようだ。実際の発音を確かめることの大切さを示すちょっとした実例ともいえそうだ。

過去の参考記事:
cautiously optimistic? (oxymoron について)

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TM

面白い表現ですね。cockeyedという形容詞ありきと思います。ミュージカルの歌にある表現はRodgers+Hammersteinの黄金コンビが作り出したものでしょう。この映画を知っている人にはピンとくる表現のように思いますが、若い人には通じないかも知れません。それにしても、アメリカのミュージカル黄金時代の名作には後世に残る面白い歌詞が多いなと感心した次第です。
by TM (2024-08-09 16:56) 

tempus_fugit

来歴まではちゃんと調べられなかったのですが、やはりこのコンビが考え出したものなのだろうと私も思いました。こうした表現、他にもいろいろあるのでしょうね。
by tempus_fugit (2024-08-10 23:16) 

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