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「わたしは『ある』という者である」 (I am who I am, the Great I Am) [聖書・キリスト教と英語]

前回紹介した Newsweek 誌のカバー特集 "Father Knows Best" に、旧約聖書にちなんだ興味に深い表現があった。記事のひとつ "Can Bush Sr. and His Team Save Son’s Presidency?" に、現大統領の父親であるブッシュ前大統領について、こんな記述がある。

- He is not given to boasting about or bragging on his family; he still hears his mother's voice warning him to avoid "the Great I Am."
( http://www.newsweek.com/id/44581 )

しばしばすべて大文字で記される I am は、旧約聖書の「出エジプト記」 Exodus で、神の名前を尋ねたモーゼに対して神が答えた言葉に由来するようだ。出エジプト記を見ると、モーゼの問いに対して、

- God said to Moses, "I am who I am."
(King James Version では "And God said unto Moses, I AM THAT I AM.")

とある。ここから、the Great I Am とすると、この「全能の唯一の神」を意味するほか、「偉ぶった人」、俺様は凄いんだ、といった態度を取る人のことも指すという。今回の Newsweek も、そういった意味で使っているのだろう。

ところで旧約聖書・ユダヤ教の神は、ふつう英語では Yahweh や Jehovah、日本語では「ヤハウェ 」「エホバ」 などというが、これは "I am who I am" の元のヘブライ語を英語のアルファベットで表した "YHWH" に由来するそうだ。

私もイスラエルやアラブ圏の国を訪れたときに知って驚いたのだが、ヘブライ語とアラビア語は、基本的に母音は文字として表記しない。そして「神の名をみだりに唱えてはいけない」と「十戒」に定められていることもあり、YHWH の母音をどのように発音したかわからなくなってしまい、呼称にいくつか異なった流儀が生まれたという。

関係のない余談だが、漫画の「ポパイ」の決まり文句が "I yam what I yam." であった。

さて Newsweek の記事に戻ると、"the Great I Am" のすぐ後に、こんな記述がある。

- If so, then the incumbent may recall the Song of Moses: "Remember the days of old, consider the years of many generations; ask thy father, and he will show thee; thy elders, and they will tell thee."
Ask thy father, and he will show thee: advice that, at long last, George W. Bush seems to be taking.

引用符の部分について、「モーゼの歌」を頼りにネットで調べてみたら、「申命記」 Deuteronomy に出てくるものだとわかった。

Newsweek の筆者は、現職のブッシュ大統領に対する父親の助太刀について述べるにあたって、息子の信心深さにからめて、旧約聖書を引っぱってきてまで筆を進めているわけである。

ニュース雑誌のこうした技法は、キリスト教徒ではない極東の一読者には、理解して味わうにはなかなか手ごわい。とはいえ、こうした背景知識が増えていくのは、別に何か得になるわけではないが、それだけで快い刺激になる。

タグ:ブッシュ
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コメント 4

yokizuki

日本語は,スローガンなどで強調するときには,否定形としなければならないようです。例としては,以下をあげることができます。

Remember Perl habor! : 真珠湾を忘れるな
Think Victory! :勝利以外何も考えるな

日本語に翻訳するときは,”強調するときには否定形”という日本語の癖を頭に入れておかないと,訳の分からない日本語になりがちです

上記の日本語のクセを考慮すると, I am who I am は,

”私でない者は,私ではない”
⇒”私ではない者が私であるはずがない”

となります。つまり,意味的には”私は唯一の存在である” ということです。したがって,「

"the Great I Am 

は,”私でないものが,偉大であるはずがない”といった凄まじい意味となります。

以上のように,日本語は,強調するときに否定形を多用するので,2重否定となる表現が非常に多くなります。



by yokizuki (2019-09-21 08:08) 

tempus fugit

10年以上の前の記事ですが、たいへん参考になるコメント、ありがとうございました。最近、大量のスパムのコメントがほぼ連日来ていることもあり、気づくのが遅れてすみません。

タイトルの訳はわけのわからない日本語ですが、確か聖書関係の何かの文章にあったものを拝借したと記憶しています。説明を拝読して腑に落ちたように思います。今後もお気づきの点がありましたら教えて下さい。

by tempus fugit (2019-09-26 23:01) 

yokozuki

私がコメントした2重否定に興味をもってくさり,ありがとうごさいます。

細かいことで恐縮ですが,

「わたしは『ある』という者である」

というフレーズは,申命記ではなく,出エジプト3章14節にある言葉です。

日本語での2重否定による強調で有名なフレーズに,

「平家でないのは,人でない」

というのがあります。これは,後世の政治的なnegative propagandaで,真実ではないとは思いますが……。私は,上記の論法に従い,このフレーズの英訳を,

persons that the Heike are

としています。ここでは,人をpersonとしました。

by yokozuki (2019-10-03 14:02) 

tempus_fugit

コメントありがとうございました。なお本文の最初の方で、私も「出エジプト記」の言葉であると書いております。「申命記」は、本文の後半で紹介している別の言葉(The Song of Moses)です。

by tempus_fugit (2019-10-08 09:19) 

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