英語を学んで半世紀が過ぎた [英語学習]
今回は申し訳ないが年寄りの回顧談である。この4月1日で、英語を学び始めてからちょうど50年になった。
なぜ日付まであげることができるのかというと、聞き始めたNHKのラジオ講座「基礎英語」の第1回のレッスンがこの日だったからだ。
海外や外国語とまったく縁のない平凡なサラリーマンの家庭に生まれ育った私にとって、これが英語とのつきあいの始まりだった。この講座のことは小学校を卒業したころに何かで知ったのだろうが、覚えていない。
放送は朝6時5分からで、目覚まし時計の助けを借りて早起きした。眠かった一方で、初めて学ぶ外国語とあって、cliché だが”期待に胸をふくらませて”ラジオをつけた。
どのような講座だったかは以前書いたことがあるが(→こちら)、それには多くのコメントをいただき、熱心に聞いていた同年代の方々がいることを知って嬉しくなった。本当にすばらしい内容の講座だったと思う。
初日の放送で今も印象的に覚えているのは、ネイティブ出演者 (Karen Reynolds という米人女性)の
- Open your textbooks to page(数字).
という言葉だった。
もちろん、この英語を聞き取って理解できたわけではない。直後に講師の大野一男・桜美林大学教授が、「テキストの◯ページを開いてください」と続けたので、意味を知ることができた。
それで「オープン」や「テキストブック」とかろうじて結びつけることができたが、こうしたカタカナと "Open your textbooks to page..." はまったく音がかけ離れていて、いかにも異国の言葉だなあ、と強い印象を持った(なお Karen Reynolds さんは「基礎」の講座だからとことさらにスピードを落として話すようなことはせず、かなり自然な速さで発話していたと思う)。
そしてその時、こうした音をちゃんと聞き取って理解できるようになりたい、と思った・・・というのは、もしかしたら何日か後になって考えたことかもしれないが、そうした思いを持ち続けながら、毎朝6時に起きて放送を聞き、また夜の時間帯の放送もなるべく聞くようにして、1年間完走した。
毎回のレッスンで耳にすることになった "Open your textbooks to page..." だが、生徒(聴者)たちという意識があるためか textbooks と複数形になっていること(ただし単数形でも良いそうだ)、前置詞は到達点を示す to が使われること(イギリス英語では at)を示す実例といえるだろうが、そうしたことを知ったのは、もちろんさらにずっと後になってからだった。
また講座では、英語圏では誰でも知っている「英語の歌」が毎月2つ、2週替わりで毎回のレッスンで流れた。roam や seldom, discouraging ("Home on the Range"「峠のわが家」)といった、公立中学1年生の教科書ではまずお目にかからない単語を音で覚えてしまったのもこの講座のおかげだ。
なお、当時の講座は同じ内容を2年続けて放送していて、私が聞いたのは前年度の再放送だったが、毎回のレッスンでネイティブが読み上げる曜日と日付は、私の年度の Lesson 1 なら "Monday, April 1st" のように、ちゃんとその年に合っていた。
つまり、この部分だけ翌年向けに別途収録して編集し直していたわけで、細かい目配りに感心したのも覚えている。なお後年、別の講師に変わった時にたまたまこの講座を聞いたら、単に "Lesson 1" というだけで曜日と日付の読み上げはなくなり、こうした手間をかけなくなっていたことがちょっと残念だった。
そんなことをなつかしく思い出す講座と出会い、英語とのつきあいが始まってから半世紀が過ぎた。
50年前に始めた「英語を身につけたい」という歩みは、たとえて言えば、暗い道のかなたに見える小さな光が少しずつ明るくなってきたような気がする一方で、光自体は遠ざかっていくのか、いつまでたってもそこにたどり着けないというもどかしさも募っていく感じである。
そんな希望と絶望のいり混じった気持ちを抱いているうちに、いつの間にか自分の残りの時間を意識する年齢になってしまったが、それでも、光源との距離が実際には縮まっているはずだという希望の方を強く持つように心がけながら、これからも英語とのつきあいを続けていくことになるのだろう。
過去の参考記事:
・昔の「基礎英語」は今より音声面に力を入れていた
https://eigo-kobako.blog.ss-blog.jp/2018-04-10
・「基礎」とは思えない「基礎英語1」
https://eigo-kobako.blog.ss-blog.jp/2013-04-15
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なぜ日付まであげることができるのかというと、聞き始めたNHKのラジオ講座「基礎英語」の第1回のレッスンがこの日だったからだ。
海外や外国語とまったく縁のない平凡なサラリーマンの家庭に生まれ育った私にとって、これが英語とのつきあいの始まりだった。この講座のことは小学校を卒業したころに何かで知ったのだろうが、覚えていない。
放送は朝6時5分からで、目覚まし時計の助けを借りて早起きした。眠かった一方で、初めて学ぶ外国語とあって、cliché だが”期待に胸をふくらませて”ラジオをつけた。
どのような講座だったかは以前書いたことがあるが(→こちら)、それには多くのコメントをいただき、熱心に聞いていた同年代の方々がいることを知って嬉しくなった。本当にすばらしい内容の講座だったと思う。
初日の放送で今も印象的に覚えているのは、ネイティブ出演者 (Karen Reynolds という米人女性)の
- Open your textbooks to page(数字).
という言葉だった。
もちろん、この英語を聞き取って理解できたわけではない。直後に講師の大野一男・桜美林大学教授が、「テキストの◯ページを開いてください」と続けたので、意味を知ることができた。
それで「オープン」や「テキストブック」とかろうじて結びつけることができたが、こうしたカタカナと "Open your textbooks to page..." はまったく音がかけ離れていて、いかにも異国の言葉だなあ、と強い印象を持った(なお Karen Reynolds さんは「基礎」の講座だからとことさらにスピードを落として話すようなことはせず、かなり自然な速さで発話していたと思う)。
そしてその時、こうした音をちゃんと聞き取って理解できるようになりたい、と思った・・・というのは、もしかしたら何日か後になって考えたことかもしれないが、そうした思いを持ち続けながら、毎朝6時に起きて放送を聞き、また夜の時間帯の放送もなるべく聞くようにして、1年間完走した。
毎回のレッスンで耳にすることになった "Open your textbooks to page..." だが、生徒(聴者)たちという意識があるためか textbooks と複数形になっていること(ただし単数形でも良いそうだ)、前置詞は到達点を示す to が使われること(イギリス英語では at)を示す実例といえるだろうが、そうしたことを知ったのは、もちろんさらにずっと後になってからだった。
また講座では、英語圏では誰でも知っている「英語の歌」が毎月2つ、2週替わりで毎回のレッスンで流れた。roam や seldom, discouraging ("Home on the Range"「峠のわが家」)といった、公立中学1年生の教科書ではまずお目にかからない単語を音で覚えてしまったのもこの講座のおかげだ。
なお、当時の講座は同じ内容を2年続けて放送していて、私が聞いたのは前年度の再放送だったが、毎回のレッスンでネイティブが読み上げる曜日と日付は、私の年度の Lesson 1 なら "Monday, April 1st" のように、ちゃんとその年に合っていた。
つまり、この部分だけ翌年向けに別途収録して編集し直していたわけで、細かい目配りに感心したのも覚えている。なお後年、別の講師に変わった時にたまたまこの講座を聞いたら、単に "Lesson 1" というだけで曜日と日付の読み上げはなくなり、こうした手間をかけなくなっていたことがちょっと残念だった。
そんなことをなつかしく思い出す講座と出会い、英語とのつきあいが始まってから半世紀が過ぎた。
50年前に始めた「英語を身につけたい」という歩みは、たとえて言えば、暗い道のかなたに見える小さな光が少しずつ明るくなってきたような気がする一方で、光自体は遠ざかっていくのか、いつまでたってもそこにたどり着けないというもどかしさも募っていく感じである。
そんな希望と絶望のいり混じった気持ちを抱いているうちに、いつの間にか自分の残りの時間を意識する年齢になってしまったが、それでも、光源との距離が実際には縮まっているはずだという希望の方を強く持つように心がけながら、これからも英語とのつきあいを続けていくことになるのだろう。
過去の参考記事:
・昔の「基礎英語」は今より音声面に力を入れていた
https://eigo-kobako.blog.ss-blog.jp/2018-04-10
・「基礎」とは思えない「基礎英語1」
https://eigo-kobako.blog.ss-blog.jp/2013-04-15
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タグ:ラジオ・テレビの英語講座
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今日のコラムは、中学で英語と出会った往時のことが詩音ばれました。
Carpenters, Beatles, QueenのLPを買って、ひたすら英語の歌詞を追いかけていました。惜しむらくは、ノンシャランな性格なため、ラジオ講座を途中で投げ出したことです。
昔の私に、Constant dripping wears away the stone. と助言したいものです。
by marimann (2024-04-02 20:01)
50年は大きなマイルストーンですね。私はTFさんより7~8歳ほど年上と思われますが、なつかしさがこみあげてくる内容です。自分は基礎英語はあまり聞いたことがなく、続基礎英語と英語会話でした。番組の内容は違えど、何とも言えないワクワク感で聞いたものでした。ラジオから聞こえるOpen your textbook...等々、学校の英語クラスで聞けない表現は耳に残りましたね。K. Reynoldsさんは他のNHKの番組にでておられたように記憶しています。たまに聞き逃しても当時はソノシートという代物があって、救われました。また、カセットテープも普及しだしたので、録音して繰り返し聞きました。テキストは捨ててしまいましたが、本に再録したものを読み直してみると感心するような表現がのっています。当時どこまで理解できていたのかは疑問ですが、今読み返してみると心に響くものがあります。あれから50数年たって今でも英語とかかわっている自分が誇らしくもある(大げさですが)。このあたりの感情は大昔にラジオやテレビといったメディアで勉強した人に共通のものかも知れません。書き出すときりがないのでこれくらいにしますが、なつかしい思い出があって、それでこれからは?ということになります。楽しみながら、前に進んでいきたいと思います。今回もありがとうございました。
by TM (2024-04-03 18:17)
marimannさんと同様、私も洋モノの歌詞(タイトルも含めて)を通じてずいぶんと英語に親しみました。それで覚えた単語表現もこれまでいくつか取り上げましたし、私が使っている tempus fugit もそのひとつと言えます。今回はラジオ講座について書きましたが、想い出深い英語の歌についてももっと触れてみたいと思いました。
by tempus_fugit (2024-04-03 23:52)
私も「続基礎英語」が英語力の基礎を築いてくれたと思っていて、ある意味「基礎英語」よりも思い出深いのですが(「続基礎」は小遣いをソノシートにも割いて「転換練習」を繰り返し、マゾ的快感を味わっていました)、今回は区切りのいい日を迎え、また「これがすべての始まりだった」という意味で「基礎」に絞って書きました。
昔懐かしさも確かにありますが、外国語に身近に接する機会がほとんどなかったという当時の状況が、ラジオ・テレビの講座をいっそう輝かしいものにしていたようにも思います。
by tempus_fugit (2024-04-04 00:02)
ラジオやテレビの番組とならんで、英語の歌も忘れられませんね。上記のアーティスト以外にはSimon & Garfunkel, Rolling Stones, Led Zeppelin, Janis Joplinなどロックの大御所がたくさんいます。歌詞は表現面では千差万別で、意味と同時に発音が大切な要素でした。当然激しいのは口真似するのも無理な話で、ゆっくりめの静かな曲でずいぶん発音やイントネーションをまねて悦に入っていました。学校では教えてもらえるのはごくわずか。それも退屈なものばかり。最近はストリーミングで何でも聞けるし、歌詞も読めるので、聞き直しと歌いなおしで楽しんでいます。長々と失礼しました。
by TM (2024-04-06 22:48)
いまでも英語の歌を通して英語に親しみ、英語のレベルアップにつなげている若い世代の人がいるはずだと思うのですが、以前ほどそうした話を聞かないように感じるのは、自分が気づかないだけで、ただトシを取ったせいなのか、とも思います。
by tempus_fugit (2024-04-11 23:03)