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evict ~「きよしこの夜」(サイモン&ガーファンクル) [音楽と英語]

クリスマスの時期になると、思い出したように聞きたくなることがあるのが、サイモン&ガーファンクルの「7時のニュース/きよしこの夜」という曲である。もう50年以上前に発表された作品だ。

ピアノの伴奏で、おなじみの "Silent Night" の調べが静かに歌い出されるが、ほどなくして、その美しいデュエットの背後にニュースのアナウンスメント(英語)が流れてくる。最初は低い音量レベルだが、だんだん大きくなり、ついには2人の歌声と拮抗するくらいになる。

そして、歌詞の最後の "Sleep in heavenly peace." に重なるようにアナウンサーが "That’s the 7 o’clock edition of the news. Good night." と sign off して終わる。

この曲が収められているアルバム "Parsley, Sage, Rosemary and Thyme" (このタイトルはイギリス民謡「スカボロー・フェア」Scarborough Fair から取ったもの)の終曲に置かれていて、全体の締めくくりとしても印象的だ。



Simon & Garfunkel は、私が子供の頃に人気のあったアメリカのデュオグループで、わが家のラジオからもそのヒット曲の数々がよく流れていたが、この "7 O’Clock News/Silent Night" を聞いた時は、子供心にもびっくりしたのを覚えている。

静かで美しい「きよしこの夜」にニュースがかぶさっているのが、何とも不思議というか、何かただならぬ雰囲気も感じたからだろう。

当時の私には、英語のニュース部分が何を言っているのか当然理解できなかったが、後年になって、公民権運動やベトナム戦争反対活動、あるいは大量殺人事件など、アメリカが揺れた当時1960年代半ばの出来事を伝える内容であることを知った。言葉がわからなくても、アナウンサーの声から、そうした暗い世相の雰囲気が伝わったのかもしれない。

そしてこの曲は、時代を経て今に至るまで聴き継がれていることが、ネットの書き込みなどからわかる。歌にかぶせられたニュースはすでに過去のものになっているのに、時代を超えた作品になっているということだろう。

ニュースの内容自体は違えど、社会や市民がさまざまな問題に直面していることは今もいっこうに変わらない。そうした状況の中で、せめて「きよしこの夜」の静謐な調べに慰めを見出そうということか。あるいは逆に、年の終わりにこうした清らかな音楽が流れても、実際の人間社会は相も変わらぬ苦しみと矛盾を抱えていることを感じさせるからか。

今年の年末はとりわけ、国内は政治の混乱や少子高齢化、物価や各種負担の上昇など厳しさは増す一方、また海外ではウクライナやガザ、そして中国をめぐる問題など、先行きが見えず気持ちが落ち込むような状況が続いている。私がまたこの曲を聞きたいという気分になったのも、必然だったのかもしれない。

さて英語についてのブログなので、この曲で私が覚えた単語について短く触れたい。ニュースの部分に出てくる evict である。

- In Washington the atmosphere was tense today as a special subcommittee of the House Committee on Un-American activities continued its probe into anti-Vietnam war protests.
Demonstrators were forcibly evicted from the hearings when they began chanting Anti-war slogans.

つまり、「ベトナム戦争反対を叫んでいたデモの参加者たちが議会から強制的に立ち退かされた」という内容である。

evict には「(法的な手続きによって)退去させる」「追い立てる」「(一般的に)追い払う」といった訳語が辞書に並んでいる。e- で始まるが、そうした単語によくあるように発音は /ɪˈvɪkt/ となる。名詞は eviction である。

- evict somebody (from something)
to force somebody to leave a house or land, especially when you have the legal right to do so
A number of tenants have been evicted for not paying the rent.
The council has tried to get them evicted.
Police had to evict demonstrators from the building.
(Oxford Learner's Dictionaries)

- to tell someone legally that they must leave the house they are living in
evict somebody from something
They were unable to pay the rent, and were evicted from their home.
be/get evicted
They refused to leave and were forcibly evicted (=evicted by force).
attempts to have them evicted
—eviction noun [countable, uncountable]
The family now faces eviction from their home.
(Longman Dictionary of Contemporary English)

サイモン&ガーファンクルの曲は、上記のように "That's the 7 o'clock edition of the news. Good night." というアナウンスで終わるが、その直前に流れるニュースは、

- Nixon also said opposition to the war in this country is the greatest single weapon working against the U.S.

というもので、「反戦活動はアメリカ合衆国に対する最大の攻撃手段であると(当時の)ニクソン大統領は述べた」という内容である。

これとあわせて、先にあげたデモ参加者の強制退去を伝えるニュース、またその中に出てくる un-American activities といった単語を聞いていると、いやでも現在のトランプ元大統領とアメリカの分断を連想せざるを得ない。トランプ氏は来年のアメリカ大統領選挙で勝利する勢いを保っていると伝えられている。

クリスマス関係の過去の記事:
クリスマスの名文 Yes, Virginia, there is a Santa Claus.
giddyup (続・ルロイ・アンダーソンの「そりすべり」)
crooner と「ホワイト・クリスマス」
"The Night Before Christmas" (「クリスマスのまえのばん」)
「サンタは今どこにいる?」 Track Santa
落語調で訳した「クリスマス・キャロル」 (dead as a doornail)
ピカード艦長の「クリスマス・キャロル」~ before you can say Jack Robinson 「あっという間に」
once bitten, twice shy #2 (「ラスト・クリスマス」のジョージ・マイケル死去)
mistletoe 「(クリスマスで使われる)ヤドリギ」

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TM

evictという単語を久々に聞いたような気がします。単語もしかりですが、今回の出典、大変興味深く思いました。S&Gもなつかしいですが、歌の後ろに流れるニュースが秀逸ですね。このアルバムが1966年作で、その年のある日のニュースということでしょうが(おそらく8月)、ニュースの中でLenny Bruceが亡くなったというくだりを大学生のころに聞き取ってうれしくなったのでした。丁度ダスティンホフマン主演の同名映画を見たころ(1975年頃)でした。他にもML Kingやらジョンソン大統領、ニクソンなどのあの頃の公民権運動、ベトナム戦争などの時代を象徴す出来事ばかり。大変なつかしく読ませてもらいました。何回も聞きなおしました。ありがとうございました。
by TM (2023-12-25 20:41) 

TM

追加のコメントですが、Committee on Un-American Activitiesは米下院にあった委員会ですね。Wikiに詳しい解説があります。「House Committee on Un-American Activities非米活動委員会、HUAC)は、かつて存在したアメリカ合衆国下院の特別委員会。冷戦時代、いわゆる「赤狩り」の舞台となった。・・・」1975年に廃止されたとのこと。冷戦時代の象徴でしたが、時代の流れには勝てなかったようです。
by TM (2023-12-25 21:36) 

tempus_fugit

タイトルは一般向けに単に「きよしこの夜」としましたし、また今ではネットでこの作品の歌の部分だけを単体で聞くことができるようになり、それはもちろん非常に素晴らしいのですが、やはり「7時のニュース」があるからこそ名作になったといえると思います。

これも一般向けということで、本文ではニュース部分については深入りはしませんでしたが、ニクソンのほか、おっしゃるようにキング牧師やレニー・ブルースなど、激動の時代や世相を盛り込んだ内容になっていますよね。

私はレニー・ブルースという人物はダスティン・ホフマンの映画で初めて知ったのですが、内容はよく覚えていないものの彼の演技が印象深かったという記憶があります。ホフマンといえば、同じサイモンとガーファンクルのヒット曲「ミセス・ロビンソン」が出てくる映画「卒業」でブレイクしたのですよね。

その「卒業」がらみでは、当ブログで十数年前に「結婚式をドタキャン (runaway bride)」なんて記事を書いていましたので、よろしければお読みくださいませ。

とりとめのない返信となりすみません。

by tempus_fugit (2023-12-26 00:27) 

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