jar 「一杯のビール」 (刑事コロンボ「魔術師の幻想」) [刑事コロンボ]
前回と前々回は、TVドラマ「刑事コロンボ」で使われていた ajar と、それにからんで jar を取り上げたが、このシリーズの別のエピソードを続けて観たら、違う意味の jar が出てきた。まったくの偶然ではあるが、おもしろいので触れておこう。
「魔術師の幻想」 Now You See Him というエピソードで拾ったものだ。
- A: One night, George, just you and I together, we'll go out and have a couple of jars.
B: You're on, sir.
jar は「広口びん」「つぼ」ということだが、辞書を見ると「一杯の酒」「(特にビールの)グラス一杯」という訳語も載っている。「そのうち飲みにいこう」「一杯やろう」と(英語は a couple of jars と複数形だが)誘っているわけである。
下記を含めいくつかの辞書の説明には「イギリス英語」とある。「魔術師の幻想」でこのセリフを言う登場人物はヨーロッパからの移民という設定だ(演じているのはアメリカ人俳優だが)。ロサンゼルスが舞台の「刑事コロンボ」で使われているので、アメリカでも通じる表現ということになろうか。
- 1. a wide-mouthed container that is usually cylindrical, made of glass or earthenware, and without handles
2. Also: jarful. the contents or quantity contained in a jar
3. (British, informal) a glass of alcoholic drink, esp beer
"to have a jar with someone"
Word Origin
C16: from Old French jarre, from Old Provencal jarra, from Arabic jarrah large earthen vessel
(Collins English Dictionary)
なお、jar は「ジャー」として日本語になっているが、「魔法びん」という意味はなく、これを言う場合は thermos を使えという注記をしている英和辞典もある。
ついだが、返答の You're on. は相手からの申し出などに同意・了承を表すインフォーマルな表現で、このドラマの2人は立場に差があるが、いわゆる「ため」の関係だったら「いいね!」とか「乗った!」という感じだろうか。
「魔術師の幻想」は「刑事コロンボ」第5シーズンの一作だ。シリーズ5年目ともなるとさすがに息切れしたような作品も目立ってくるが、これは結構いい出来だ。
このシリーズの決まりごとである、毎回エピソードの冒頭で見せる犯行とそのトリック・動機は、時にこみいったものもあるが、今回は非常にわかりやすい。屋内シーンが多いものの、犯人がマジシャンでショーもしっかり描かれるので飽きずに観ることができる。
原題の Now You See Him は、マジックで使われる決まり文句をもじったもので、その言葉については以前書いたことがある(→"Now you see it, now you don't." [辞書に載っていない表現])。ネイティブはタイトルを目にしただけで「マジックと関係がある話か」と思うのだろう。
Santini という犯人が「落ちた」あとのコロンボとの会話もいい。ネタバレになるが、
- Santini: I thought I'd performed the perfect murder.
Columbo: Perfect murder, sir? I'm sorry, there is no such thing as a perfect murder. That's just an illusion.
illusion は「幻想」「幻覚」また「錯覚」「思い違い」、さらに「大がかりな演出の手品」という意味もある。Santini は水槽を使った得意のマジックを water tank illusion と呼んでいた。
その彼が perfect murder だったと思ったのに、と言ったのに対し、コロンボは「完全犯罪なんてものはない、そんなものは illusion にすぎない」とこの単語をうまく使って応じている。「魔術師の幻想」はこの部分からヒントを得たのだろうか、邦題もうまいタイトルだと思う。
なお、先日の ajar 「ドアが半開き」では、「ドアをちょっと開ける」ことを crack ということに触れたが、酒についての jar からも crack を連想するので、これについて以前書いたエントリを紹介したい(→ビールの缶を開ける crack)
さらに、ビールのジョッキなどを示す jug と mug という単語について書いたことも参考として挙げておきたい(→ダニエル・クレイグの耳 (007「カジノ・ロワイヤル」))(→顔写真 (mug shot))
ここまで来たらついでなので、「一杯の酒」で思いつく過去の記事もいくつか:
・one for the road (ボズ・スキャッグス「シルク・ディグリーズ」)
・イッキ飲み (chug-a-lug, binge)
・six-pack 「6缶パック」「割れた腹筋」
「魔術師の幻想」 Now You See Him というエピソードで拾ったものだ。
- A: One night, George, just you and I together, we'll go out and have a couple of jars.
B: You're on, sir.
jar は「広口びん」「つぼ」ということだが、辞書を見ると「一杯の酒」「(特にビールの)グラス一杯」という訳語も載っている。「そのうち飲みにいこう」「一杯やろう」と(英語は a couple of jars と複数形だが)誘っているわけである。
下記を含めいくつかの辞書の説明には「イギリス英語」とある。「魔術師の幻想」でこのセリフを言う登場人物はヨーロッパからの移民という設定だ(演じているのはアメリカ人俳優だが)。ロサンゼルスが舞台の「刑事コロンボ」で使われているので、アメリカでも通じる表現ということになろうか。
- 1. a wide-mouthed container that is usually cylindrical, made of glass or earthenware, and without handles
2. Also: jarful. the contents or quantity contained in a jar
3. (British, informal) a glass of alcoholic drink, esp beer
"to have a jar with someone"
Word Origin
C16: from Old French jarre, from Old Provencal jarra, from Arabic jarrah large earthen vessel
(Collins English Dictionary)
なお、jar は「ジャー」として日本語になっているが、「魔法びん」という意味はなく、これを言う場合は thermos を使えという注記をしている英和辞典もある。
ついだが、返答の You're on. は相手からの申し出などに同意・了承を表すインフォーマルな表現で、このドラマの2人は立場に差があるが、いわゆる「ため」の関係だったら「いいね!」とか「乗った!」という感じだろうか。
「魔術師の幻想」は「刑事コロンボ」第5シーズンの一作だ。シリーズ5年目ともなるとさすがに息切れしたような作品も目立ってくるが、これは結構いい出来だ。
このシリーズの決まりごとである、毎回エピソードの冒頭で見せる犯行とそのトリック・動機は、時にこみいったものもあるが、今回は非常にわかりやすい。屋内シーンが多いものの、犯人がマジシャンでショーもしっかり描かれるので飽きずに観ることができる。
原題の Now You See Him は、マジックで使われる決まり文句をもじったもので、その言葉については以前書いたことがある(→"Now you see it, now you don't." [辞書に載っていない表現])。ネイティブはタイトルを目にしただけで「マジックと関係がある話か」と思うのだろう。
Santini という犯人が「落ちた」あとのコロンボとの会話もいい。ネタバレになるが、
- Santini: I thought I'd performed the perfect murder.
Columbo: Perfect murder, sir? I'm sorry, there is no such thing as a perfect murder. That's just an illusion.
illusion は「幻想」「幻覚」また「錯覚」「思い違い」、さらに「大がかりな演出の手品」という意味もある。Santini は水槽を使った得意のマジックを water tank illusion と呼んでいた。
その彼が perfect murder だったと思ったのに、と言ったのに対し、コロンボは「完全犯罪なんてものはない、そんなものは illusion にすぎない」とこの単語をうまく使って応じている。「魔術師の幻想」はこの部分からヒントを得たのだろうか、邦題もうまいタイトルだと思う。
なお、先日の ajar 「ドアが半開き」では、「ドアをちょっと開ける」ことを crack ということに触れたが、酒についての jar からも crack を連想するので、これについて以前書いたエントリを紹介したい(→ビールの缶を開ける crack)
さらに、ビールのジョッキなどを示す jug と mug という単語について書いたことも参考として挙げておきたい(→ダニエル・クレイグの耳 (007「カジノ・ロワイヤル」))(→顔写真 (mug shot))
ここまで来たらついでなので、「一杯の酒」で思いつく過去の記事もいくつか:
・one for the road (ボズ・スキャッグス「シルク・ディグリーズ」)
・イッキ飲み (chug-a-lug, binge)
・six-pack 「6缶パック」「割れた腹筋」
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