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dead cert ~トランプ氏「本命」は揺るがず? [ニュースと英語]

選挙戦を競馬にたとえるのは洋の東西を問わないのか、来年のアメリカ大統領選挙について最近の英誌「エコノミスト」がそんな形の記事を書いており、その中に dead cert という表現が出てきたので、取りあげてみたい。

記事は下記のように冒頭から競馬のたとえで始まり、共和党の候補者レースでトランプ前大統領がダントツのリードを保っていることをまず伝える。

- As a horse race, the contest to be the Republican Party’s nominee for president is as much of a walkover as they come. Donald Trump has been far ahead all year, and his lead has steadily lengthened.
("A messy contest is coming to a head behind Donald Trump" The Economist, December 6, 2023)

ここにある walkover は簡単そうに見える単語だがピンと来ず、文脈から競馬用語かと思って辞書を見ると、やはり「(競馬)他に出走馬がいないので、コースを並足で歩くこと、単走」とのことで、また「不戦勝」「楽勝、圧勝」も意味する。

これに続いて、

- However, just as in a horse race, the primaries’ front-runner can stumble, or be tripped up by the voters in Iowa and New Hampshire.
(中略)
Momentum in politics can change, and a dead-cert can suddenly start losing ground.
(ibid.)

と、競馬と同じように選挙も”番狂わせ”がありえないことはないとして、数字のうえで2位と3位につけているデサンティス・フロリダ州知事とニッキ―・ヘイリー元国連大使の2人にスポットをあてていく。

選挙は水もの、何が起きるかわからないとはいえ、両候補ともトランプ氏にここまで水をあけられ遥か後塵を拝している状況では、ちょっと無理な感じがしなくもないが、ここに出てくるのが dead cert だ(記事はハイフンを入れた表記にしている)。

想像がつく人もあるかと思うが、cert は certain, certainty のことで、「絶対確実なもの」「本命」を指す。この dead は、dead center 「ど真ん中」と同じような強調の意味だろう。

私にとって、この表現とはひさびさの対面である。若いころ、イギリス人作家ディック・フランシスが書いた数々の競馬ミステリが日本でも評判となっていたが、そのひとつに「本命」という作品があった。私が読んだのはもちろん翻訳だが、原題が Dead Cert であることをその際に知った。

私は当時、競馬にちょっと手を出して馬券を買ったことがあったがじきに止めてしまい、フランシスも数作を読んで楽しんだものの、愛読者というほどにはならなかった。

というわけで、残念だがこれ以上書けることは何もないので、英語圏の辞書からこの言葉についての記述を引用してお茶を濁そう。

- UK informal
someone who is quite certain to get or do something, or something that is quite certain to happen:
With all her experience she's a dead cert for the job.
The pair appear to be dead certs to win the gold medal.
(Cambridge Dictionary)

- British, informal
: something that is very likely
He's a dead cert for player of the year.
(Merriam-Webster)

ディック・フランシスはイギリス人(元競馬ジョッキー)で、「エコノミスト」もイギリスのメディアだが、ここにあるように、イギリス英語の表現であった。

なお、やはり「当選確実と目される人」「本命」を表す単語に shoo-in があり、このブログを始めた当初(もう20年近くも前!)、今は亡き安倍晋三氏に関連して取り上げていた(→こちら)。

shoo-in はアメリカ英語で、競馬に由来するものの、「八百長レース」から来ているという記述があるので笑ってしまうというか、そのへんがアメリカ的というべきか。

しかし今回のアメリカ大統領選挙の方は、トランプ氏が共和党の候補者のみならず本選挙でも shoo-in となりそうな勢いで、こちらは個人的にはとうてい笑えない事態になりつつある。

そういえば「エコノミスト」誌は、こうした状況について別の号で、クリスマスの時期を迎えたこととからめて、

- Faster than you can say “Ho! Ho! Ho!” the prospect of Donald Trump returning to power in America has gone from a can-you-imagine-if to a what-should-we-do-when scenario.
(The Economist, November 30, 2023)

と、うまい表現を使って書いていた。 なお “Ho! Ho! Ho!” とは、サンタクロースの笑い声として定着しているオノマトペ(擬音語)である。

過去の参考記事:
scion, shoo-in など
「ぶっちぎり」の runaway
favorite 「優勝候補」「本命」

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