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exurb「準郊外」「衛星都市」 [ニュースと英語]

ある記事で目にとまった exurb という言葉を取り上げたい。一見難しそうな単語だが、記事の内容から suburb と縁がありそうだと見当がつく。

最近の英誌「エコノミスト」が、台湾総統選挙について書いた記事に出てきたものだ。野党・国民党 (Kuomintang, KMT) とその候補、新北市長の侯友宜氏についての記述である(なお選挙前の記事であり、その後の投開票の結果、当選したのは台湾独立志向の強い与党・民進党 Democratic Progressive Party の頼清徳氏だった)。

- The former mayor of New Taipei City (the exurbs of Taiwan's capital) is preferred in Beijing. The nationalist KMT is the Chinese Communist Party’s old enemy: its leaders fled to Taiwan after losing a civil war in 1949. But it at least shares the party’s belief in one China (even if the KMT wants a democratic one).
("America braces for Taiwan’s election—and vice versa" The Economist, January 4, 2024)

新北市は台北市の exurb だとしてつながりがうかがえるし、ex- を sub- に置き換えるとおなじみの suburb になる。

想像できる通り、新北市は台北市に隣接しており、私がかつて台湾を旅行した時に訪れた場所の中にも、当時は気に留めていなかったか忘れてしまったのか、実は台北ではなく新北市が含まれていたことに今さらながらに気づいた。

英和辞典で exurb をひくと、「準郊外」「郊外周辺住宅地」「suburb よりさらに都心を離れた住宅地域;通例、富裕な人たちが住む」などと書かれている。

この「準郊外」を今回のタイトルにも使ってみたが、表意文字の漢字を使う日本語の特徴というか落とし穴というか、言葉の字面を見て何となく意味がわかった気分になるが、では何のことかちゃんと説明しろと言われれば詰まってしまう場合がけっこうあるのではないだろうか。

「準郊外」がどのくらいよく使われる用語なのか私にはわからないが、この言葉を当てはめるだけで exurb が何のことかわかるものだろうか、具体的な内容までおさえないとこの単語を知ったことにはならないのでは、と思う。

今回の exurb は実際には上記のような具体的な記述をしている辞書が多かったが、英和辞典には、訳語の羅列を超えた意味の説明をもっと多くの単語につけてほしいと求めたくなるのである。最近の辞書は昔よりはそうした要素が見られるようになっているようだが、またまだ不十分だろう。

ある程度の英語力がついたら英英辞典(英語圏の辞書)を使え、とは英語の専門家が学習者によく与えるアドバイスだろう。それは一義的にはさらに英語力を高めるため、ということだろうが、私としては、英和辞典に並んでいる日本語の訳語だけに頼っていても、単語の意味やイメージを的確につかむことは厳しい、そのためには英語圏の辞書が有益、というように考えている。

・・・と理屈っぽい話になったところで、英語圏の辞書が exurb をどう記述しているか引用しよう。なお発音は /'eksərb/ あるいは /'egzərb/ で、強勢は suburb 同様、最初の音節に置かれる(日本人学習者にみられるクセとして、つい後ろに置きたくなる人もいるだろうが)。

- a residential area beyond the suburbs of a city
Today the American Dream survives in the exurbs well outside major cities or suburbs
(Collins English Dictionary)

- a region or settlement that lies outside a city and usually beyond its suburbs and that often is inhabited chiefly by well-to-do families
(Merriam-Webster)

- (N. Amer.) a prosperous area beyond city's suburbs:
The exurbs have certainly grown faster than the inner-ring suburbs.
exurban adjective
exurbanite noun & adjective
ORIGIN 1955: coined by A.C. Spectorsky, American author, either from Latin ex 'out of' + urbs 'city', or as a back-formation from the earlier adjective exurban.
(Oxford Dictionary of English)

なお suburb は俗に burb と詰めて使われることがあるそうで、ネットで見つけた下記の記事の一節にはそれと suburbs, そして exurb の形容詞がまとめて出てくる。

- Battleground burbs
The nation’s suburbs figure to be the key battleground in these states, considering the bulk of changes in these areas have come from the diversifying suburbs around some of the nation’s biggest cities. In these Republican-controlled states, past redistricting fights have divided up metropolitan areas and joined them with more Republican exurban and rural areas, thereby diluting the Democratic advantage in these areas.
("How the Trump era made redistricting more complicated" CNN, April 18, 2021)

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TM

台湾総統選挙の記事は読んだつもりでしたが、exurbは見落としていました。書いておられるように、urb, suburb, exurbと中心部から離れていくようですが、歴史的に見ると、都市化が進んで、中心部から郊外へ人口が移動する、そしてそこから街へとcommute(鉄道が多い)するというのが共通点のようです。米では郊外化の例としてBoston, New Yorkなどが挙げられています。Wikiには細かな定義が書かれています(en.wikipedia.org/wiki/Exurb)。郊外化が進むのは、戦後多くの帰還兵、ベビーブーム、中産階級の増大、大衆消費社会の拡大などによる住宅供給ニーズの高まりと宅地開発が大きく関係しているようです。日本(語)では英語的なsuburb, exurbの概念は弱いように思います。かつて知り合いの米人に、日本にはsuburbはないと言われ、?と思ったのですが、この記事も含めてようやくその意味が分かったように思います。とはいえ、日本でのそれも高度成長期の団地・宅地開発と関係しているのは同じ。当たり前の話ばかりで、あまり良い解説になっていませんがお許しください。
by TM (2024-01-23 22:57) 

tempus_fugit

その昔、アメリカの学者だったかと思いますが、「東京は欧米的な単一の大都市ではない。下町や官庁街はあるがひとつの中心的な downtown はなく、上野”ムラ”、新宿”ムラ”、渋谷”ムラ”、など、それぞれ違った特徴のある”ムラ”が集まったものだ」というようなことを(うろおぼえですが)書いていたように思います。
「都市」の概念は文化によって違いがありそうで、面白いテーマなのでしょうね。
by tempus_fugit (2024-01-24 23:58) 

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