「中世の東海道をゆく」 [日本の文化]
最近の新書は、「手軽に読める」というべきか、「お手軽な内容」というべきか、そんな傾向を強めているように思う。この本も、古典などを引用して古き日本に読者をいざなう、といった肩の凝らない内容を想像して手に取ったが、いい意味で裏切られた。小さいが中身の詰まった、かつての新書を彷彿とさせる、読みごたえのあるものだった。
13世紀のある人物が遺した日記に基づいて、その旅程を追いながら、当時の東海道がどのような風景だったかを解き明かしていくという形を取っているので、確かに私が想像したような読み方もできる。
その一方で、各種文献を比較検討して当時の川の流れを特定したり、さらには潮汐表に基づいて当時の海浜の様子を推定したりと、しっかりとした研究書という趣がある。地元自治体のオフィシャルサイトに書かれている説明など通説に疑いを差しはさんでいる箇所がいくつかあるが、やはり自分の研究に自信がないとできないことだろう。また、「宿場」の役割を解き明かした章も興味深いものだった。
少し残念なのは、過去現代のさまざまな地名が次々と出てくるうえ、その位置関係がよく把握できないことがあったことだ。地図の図版はかなり記載されているのだが、もっと引いた鳥瞰図のようなものを載せてくれれば、その地方に住んでいるわけではない私のような読者にとって、さらに親切だったと思う。
ともあれ、いろいろな学問分野を複合的に組み合わせることで新たな知見が得られることを示している点で、大変面白く読める本であった。
ついでなので、今回読んだ本にちなんで、「東海道五十三次」がどう英語に訳されているか、ネットで調べてみた。
- the Tokaido Fifty-three Stages
- Fifty-three Stations of Tokaido
- The Fifty-three Post Stations of the Tokaido Road
- Fifty-three Stations on the Tokaido
などが見つかった。stage、station、post station といった単語が、また前置詞は of のほか on も使われている。
このうち stage は、「舞台」や「段階」として覚える場合が多いと思うが、辞書を見ると、
- a place of rest formerly provided for those traveling by stagecoach: station
- a resting place on a journey, especially one providing overnight accommodations
という意味が載っている。
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