「表現のための実践ロイヤル英文法」 [辞書・学習参考書]
最近、書店の実用英語のコーナーに英文法関係の本が増えてきたなという印象を持っている。英会話ばかりでは出版社も新味が出せなくなったから、という意地の悪い見方もできそうだが、英文法というだけで、一部から問答無用で「実用英語の敵」扱いされていた昔に比べれば、いい傾向だと思う。無味乾燥に陥らないよう工夫をこらした学習書も多いようだ。
教えられることの多い「日本人の英語」の著者マーク・ピーターセン氏が共著者のひとりとなっている新刊「表現のための実践ロイヤル英文法」を見つけた。
項目立てなどいかにも参考書風で、ピーターセン氏が英文を校閲している「ロイヤル英文法」を元にした姉妹書か、と思った。しかし、ならばなぜ実用英語のコーナーに置かれているのか。さらにページを繰ってみて、この本は発信型の英語学習を念頭に書き下ろされたことを知った。
用例は実際に使われた英文が元になっていて、日常会話にも使えそうな内容や、IT・時事関連の単語を使ったものがかなり見られる。また、髪がなびく様子を表すのに fly という動詞が使えることを、私は以前映画か何かで知ったのだが、これを使った例文 ("Holly swung her head around, her hair flying through the air.") があって、なんだかうれしくなった。
さらに、ピーターセン氏が書いた囲みのコーナーなど、参考となる追加的説明や背景知識の記述が豊富にある。例えば、
- insist は、「自分の説を強く言い張る」よりも「強く要求する」という意味で使われる方が多い。
- 助動詞の need で表されるのは、外から強いられる必要性。
また、
- whyever (=no matter why) は、使用頻度はきわめて低いが、この表現がぴったりする感じの時もある。
など、ピーターセン氏の個人的な刻印を感じさせる記述もある。
さらに、マザーグースや先哲の名言、ニューヨークの downtown, midtown, uptown の範囲、また、「同時多発テロを表す 9/11 や 9-11 (nine-eleven) は、アメリカ方言学会がその年の新語に決め、ある辞書は刷り直しをして真っ先に見出し語に採用した」といった面白い情報が書かれている。
9/11については、「これと似ている 911 はアメリカの緊急電話番号で、nine-one-one と発音する」という情報とあわせて、「数字の読み方」の参照ページが書いてあるのでそちらを見ると、イギリスでは緊急呼び出しは 999 で、どうしてこの番号に決められたのか、といった説明もあった。
英文を書く際に注意すべきポイントの記述も多く、電子メールでよく使われる ASAP, BTW といった略語、さらには :-), :-D などの絵文字 (smiley, emoticon) もあげられている。
以上、拾い読みをした範囲で書いたが、初級者がちょっと道草もしながら学習を進めることができ、また初級を終えた人も参考になる、なかなか優れた文法書だと思った。
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