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「制裁」とは正反対の sanction [注意したい単語・意外な意味]

北朝鮮のミサイル発射で、日本が経済制裁を強化することになった。これに関連して sanction という単語について短く書いておきたい。これまでも、「辞書を引かずにひたすら読む」だけでは誤ったイメージを抱きかねないと思う単語や表現を取り上げているが、これもそのひとつといえるかもしれない。

- Japan decided on Friday to extend economic sanctions on North Korea by a year, including a ban on imports, and to tighten oversight of fund transfers to its secretive communist neighbor in response to a rocket launch, the top government spokesman said.
(Reuters)

- Japan is to impose tough new sanctions against North Korea in response to its claimed nuclear test.
(BBC)

この単語を上記の例のように使えば「制裁」ということになるが、この意味だけで覚えていると、誤読・誤訳につながりかねない。

辞書の用例をあげてみよう。

- give sanction to...
- We have the sanction of the law to do so.

- The scheme was sanctioned by the court.

文脈なしにこれだけで意味を考えろというのは文字通り意味がないかもしれないが、それでも、この sanction を見て「制裁」だけしか頭に浮かばず、それぞれ「…に制裁を与える」、「法律に基づく制裁を受ける」、「裁判所による制裁を受けた」としか解釈できないとしたら、ちょっとまずいだろう。実際には前後関係で「何か変だ」と気づくだろうが、そう感じられない文脈もありうるかもしれない。

名詞の sanction を辞書で引くと、まず

1. [U][…に対する](公権力による法的)認可、裁可;承認、許可(approval) [for]
2. [U](伝統・慣習による)[…の]是認、容認、支持 [to]
(ジーニアス英和大辞典)

とあり、上にあげたのは実はこの意味での用例である。「制裁」とはかけ離れた、むしろ一見逆と感じる人もいるのではないか。

sanction がこうした意味を持つ、と書くと、「何を当然のことを」という人がいるかもしれない。しかし、英語のニュースによく出てくる単語なので、「制裁」の意味だけで覚えた人もいるだろうし、実際にそうした人がいて意味を取り違えた例を私は見ている。そこで、今回取り上げてみた次第である。

「ジーニアス」の定義の続きである。「制裁」としては、ふつう複数形で使われることに注意したい。

3. [C][悪事をさせないための](道徳的・社会的)拘束(力) [against]
4. [C][法律](違法者に対する)制裁、処罰;[通例~s][・・・に対する]制裁(措置) [against, on]
(同上)

英語学習雑誌の英文記事に sanctions イコール「制裁」とだけ書いている注があったとしたら、ちょっと不親切だというべきかもしれない。やはり、他の意味もあることをしっかりと記してほしいと思う。

この単語は、「是認」「容認」、「認められたことを守らせる」「拘束力」、そして「制裁」と、連想ゲームのように意味が広がっていったのではないかと思うが、「制裁」の意味で使われるようになったのはそう古いことではなさそうだ。以下の Online Etymology Dictionary の記述によれば、まだ100年も経っていないことになる。

1563, "confirmation or enactment of a law," from L. sanctionem (nom. sanctio) (中略) Sanctions, in international diplomacy, first recorded 1919, from sanction (n.) in the sense of "part or clause of a law which spells out the penalty for breaking it" (1651).



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コメント 11

Hirosuke

>この単語は、「是認」「容認」、「認められたことを守らせる」「拘束力」、
>そして「制裁」と、連想ゲームのように意味が広がっていったのではないか

このような意味の広がりを見せる英単語は多いですよね。

しかし、「一見、まるで反対の意味」になる語は、ない知恵を絞ってみましたが、今のところ、頭に浮かびません。

意味をつかむ、または、訳す際の超重要語として意識しなければなりません。
今回のような単語・熟語が他にもあれば、ご紹介ください。
by Hirosuke (2009-05-16 10:18) 

子守男

「反対の意味」というのは、私も厳密に使っているわけではありません。ちょっと話を面白くしよう、という気持ちもありますので、やや大げさで、誤解を与える言い方だったかもしれません。

ただ、学校等で学んだ訳語だけでは間違った解釈につながりかねない、と感じている単語や表現は確かにあります。カテゴリの「注意したい単語・表現」やタグの「この単語の意外な意味」に分類したエントリでそうした言い回しの一部を取り上げてきましたので、よろしければ参考にしていただければうれしいです。
by 子守男 (2009-05-17 02:35) 

通りがかり

こんにちは。参考になります。
この問題、私も不思議に思いました。
反対の意味といえばspareはどうでしょう?
A.~を使わない、取っておく、控える、出し惜しむ

B.〔人に物・お金などを〕分け与える、貸す
の二つがあり未だに混乱してます。
また見つけたら書きますね。(要らないか?)
by 通りがかり (2009-12-22 19:36) 

子守男

コメントありがとうございます。おっしゃるとおり、確かに spare も日本人には掴みづらい単語ですよね。類例に気づきましたらぜひまた教えてください。

by 子守男 (2009-12-23 23:45) 

Pukuro

はじめまして。

「「制裁」の意味で使われるようになったのはそう古いことではなさそうだ。以下の Online Etymology Dictionary の記述によれば、まだ100年も経っていないことになる。」

と書かれておりますが、100年以上経っていないのは「国際外交」の分野に限ってのことであり、それ以前から「制裁」という意味でsanctionsという用語が使われていたのではないでしょうか。
by Pukuro (2013-03-10 17:05) 

tempus fugit

Pukuro さん、かなり前の記事をお読みいただきましてありがとうございます。北朝鮮のニュースに関連したものなので、この部分もあくまで「外交上の制裁」について書いたつもりだったのだと思いますが(何せもう書いた時のことは覚えていません)、確かに「制裁」とだけ書くのは舌足らずでした。ご指摘に感謝いたします。自分の国語力のなさを痛感します。
by tempus fugit (2013-03-12 00:18) 

下手の横好き

通りすがりです。おおせの通り,ある程度のレベルになると,辞書が役に立たなくなり,閉口します。文脈のほうが重要になります。すこしばかり,英語が聞き取れるようになったとき,一番,ショックをうけたのが,下記の参謀本部でのセリフです。

"we 'll smash Poland in two weeks. And Hold in the West"
"Hold in the West? What we have?"

文脈上の意味は,以下のとおりです。

「2週間でポーランド軍を叩き,その間,西部戦線は防衛に徹する」
「西部戦線を防衛?そんな戦力がどこにあるんだ!」

それ以来,英文和訳の世界から,決別し,辞書は,あくまでも,参考にしかなかないと自覚しました。
by 下手の横好き (2019-07-07 09:36) 

下手の横好き

「一見、まるで反対の意味」になる語として,retreatが思い当たりました。

retreat の辞書的な意味は以下の通りです。



1.避難、引退、引きこもり
2.避難所、隠居所、静養所
3.《軍事》撤退、退却、撤収、撤退の合図、退却ラッパ
4.瞑想[静修](期間)

自動
1.後退する、撤退する、退く
2.後方に傾斜する

他動
~を後退させる

ですが,とんでもない意味があります。

ところが,泊りでの研修会で送られてきた資料に以下のように記載されていました。

18:00~20:00 retreat

最初見たとき,ギョっとしました。研修後に戻りしてどうするんだとおもいましたが,社員旅行 を campany reteat と訳されていることを思い出し,ここは,「親睦会」の意味だな,と理解しました。

このretreatも,辞書の訳語だけでは,親睦会ということは,まず想像できません。


by 下手の横好き (2019-07-10 15:55) 

tempus fugit

おもしろい意味を教えていただき、ありがとうございました。retreat は「慌ただしいことから身を引き離してくつろぐ時間」というようなイメージなのでしょうね。

以前とりあげた getaway という単語も思い起こしましたので、よろしければ下記をご参照ください。

getaway 「短い休暇」「息抜きの場所」
https://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2012-09-27

by tempus fugit (2019-07-10 21:51) 

下手の横好き

また,「一見、まるで反対の意味」になるproscribeなる語を思い出しました。

この語は,辞書的には,下記のようになっています。

proscribe
〔法律で〕禁止する、排斥する

しかしながら,下記のような意味もあります。

~法律の保護外におく

例えば,宗教改革のときのルータは,proscribeされました。これは,彼を殺しても殺人罪には問わない(煮て食おうと焼いて食おうとお好きにどうぞ)ということです。個人的には,これも,一見逆と感じるような気がします。

by 下手の横好き (2019-07-29 17:22) 

tempus fugit

なるほど、こんな言葉もあるのですね。教えていただき、ありがとうございました。

by tempus fugit (2019-08-07 08:20) 

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