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歯の妖精 (tooth fairy) [英語文化のトリビア]

オーウェルの寓話「動物農場」 Animal Farm の新訳が出たことにちなんで翻訳についてのとりとめない考えを先日書いたが、この作品には A Fairy Story という副題がついている。この fairy つながりで連想したのが tooth fairy である。

乳歯がだいぶ抜けてきた私の娘も、この存在を「歯の天使」として知っていることを最近知って驚いた。尋ねると友だちから聞いたというので、西洋の風習に詳しい家庭なのだろうかと思った。

日本では、乳歯が抜けると下の歯は屋根に、上の歯は縁の下へ投げる。私も子どもの時よくやったが、アパートやマンションが多い都市部では廃れつつあるのではないだろうか。この慣習の西洋版が tooth fairy といえるだろう。

といっても何をするかは日本の風習とはまったく違っていて、抜けた歯を枕の下などに置いて寝ると、翌朝それが小銭などに変わっている、というものだ。乳歯を小銭に交換したのは、もちろん親などではなく「歯の妖精さん」というわけである。

日本に生まれ育ったので、こうしたことを書いている私も、かなりの年齢になってから何かで学んで知った。だから肌で理解しているものではないが、「歯の天使さん」を知った娘にとっては、自宅が瓦屋根や縁側のないマンションのこともあり、tooth fairy の方が身近な存在となるのだろう。

以下、オンラインの辞書の説明である。

- a fairy said to take children’s milk teeth after they fall out and leave a coin under their pillow.
(Compact Oxford English Dictionary)

- fairy replacing tooth with money: in children's folklore, a fairy who takes away the baby tooth that a child leaves under the pillow and replaces it with a coin or small gift
(Encarta World English Dictionary)

- Date: 1962
a fairy believed by children to leave money while they sleep in exchange for a tooth that has come out
(Merriam-Webster's Online Dictionary)

- This expression refers to the fairy credited with leaving money under a child's pillow in place of a baby tooth that has fallen out, a practice popular with American parents since the first half of the 1900s.
(The American Heritage Dictionary of Idioms)

上記のように1962年という具体的な年を書いている辞書がある一方で、もっと以前としているものもある。Wikipedia を見ると(記述に信憑性があるとしてだが)20世紀前半にはこの言葉があったらしいことがうかがえる。

また抜けた乳歯をどう扱うか、いろいろな文化・国についての記述もあり、なかなか面白い。日本の慣習については、

In Japan, a different variation calls for lost upper teeth to be thrown straight down to the ground and lower teeth straight up into the air; the idea is that incoming teeth will grow in straight.[citation needed]
( http://en.wikipedia.org/wiki/Tooth_Fairy )

とあった。天井や床下のネズミのように丈夫な歯になるように、という説明を聞いた記憶もあるが、Wikipedia の記述だと「歯がまっすぐに生えるように」という理由だという。本当だろうか([citation needed] とあるので編者も確たるものとは考えていないようだが)。

なお、上記に引用した説明には「乳歯」や「歯が抜ける」にあたる英語も載っていて参考になるが、ついでに「親知らず」は wisdom tooth である。日本では大きくなって子どもではなくなった頃に生えるのでこう呼ぶのだろうが、英語は知恵がついた頃に生えるという発想だろうか。

歯が生えることに cut を使うことは以前書いたことがあるが(→「2」にちなんだ表現・落穂拾い)、 cut one's wisdom teeth には「親知らずが生える」のほか「分別のつく年ごろになる」という意味もあることが辞書に載っている。

もうひとつ余談だが、日本では、アメリカほど歯並びを気にかけない(少なくとも、かつてはそうだった)とわれていると思うし、少なくとも八重歯は、日本ではかわいいものとされてきたはずだ。辞書を見ると「八重歯」は英語では double tooth とか vampire tooth というようだが、後者はどう考えても快い語感とは思えない。

快くないといえば、こんにゃくと devil's tongue について以前書いたことがあるのを思い出したので、参考までにあげておきたい(→「こんにゃく」と devil's tongue)。

タグ:日本文化
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