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北朝鮮の「人工衛星」が国連に登録 (続・不親切な新聞記事) [ニュースと英語]

先日、読者に不親切だと感じた記事が目にとまったことについて書いたが、同じ新聞に、別の意味で「?」と思った別の記事があった。北朝鮮の国営通信が「先に打ち上げた人工衛星が合法的手続きを経て衛星登録が完了した」と伝えた、という内容だ。
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20130227-OYT1T01211.htm

「北朝鮮の申請で国連機関がウェブサイトに公式文書を掲載した」と朝鮮中央通信が報道した、と記事は書いている。

これを読んで、「ふうん、実際に掲載されたのだろうか、ならばどの国連機関なのだろうか」と考えて、さらに読み進めたが、それは明かされることなく記事は終わる。

北朝鮮の言うことは信用できないと考えて、こうした問いを持つのはおかしいことではないと思うが、しかしはっきりした答えが得られず、国営通信社の引用をしているだけだと、何とも落ち着かない気分になる。

どの国連機関なのか、朝鮮中央通信は明かさなかったのだろうか。そうならば、「具体的には示していない」と記事に書けばいいだけのことだ。そして、これを書いた記者自身は、そうした国連機関があるのかどうか調べなかったのだろうか。

そう思ってネットで調べたところ、北朝鮮は「宇宙空間に打ち上げられた物体の登録に関する条約」 Convention on the Registration of Objects Launched into Outer Space に基づいて国連に登録を申請した、と言っていることがわかった。

そこで、この条約に関係する国連宇宙部 United Nations Office for Outer Space Affairs のオフィシャルサイトにある What's New? を見ると、
"Registration information submitted by the Democratic People's Republic of Korea for Kwangmyongsong 3-2"
として、確かにその文書が掲載されていた。
http://www.oosa.unvienna.org/oosa/en/new.html
http://www.oosa.unvienna.org/pdf/reports/regdocs/ser662E.pdf

以上のことをネットで確かめるのにかかった時間は5分程度だ。私でも簡単に調べられることが、なぜ記事には書かれていないのだろうか。

さらにこの記事は、「ミサイル発射が合法的だったと強調することで、国連安全保障理事会の制裁論議をけん制する狙いがあるとみられる」と書いている。これを読むと、国連が登録申請文書をウェブサイトに掲載することにどのような意味があるのか知りたくなる。それについて記事で解きほぐしてほしいと感じる。

そこで基本的なことに立ち戻るのだが、今回の「人工衛星の登録」とは、「平和利用のためのロケット打ち上げ実験だったという北朝鮮の主張に、国連がお墨付きを与えた」ということを意味するのだろうか。

たぶんそうではあるまい。私は専門家ではないが、公式文書の掲載には、そこまでの意味合いはないだろう。そうなら、むしろそちらのほうがニュースになってしまうはずだ。

具体的な根拠を見つけたわけではないが、そもそも国連は、今年1月22日の安保理決議2087号で、今回の発射を以下のように非難している。

- The Security Council, (中略)
1. Condemns the DPRK’s launch of 12 December 2012, which used ballistic missile technology and was in violation of resolutions 1718 (2006) and 1874 (2009);
2. Demands that the DPRK not proceed with any further launches using ballistic missile technology, and comply with resolutions 1718 (2006) and 1874 (2009) by suspending all activities related to its ballistic missile program (後略)
http://www.un.org/ga/search/view_doc.asp?symbol=S/RES/2087(2013)

よく聞くことだが、「ロケット」も「弾道ミサイル」も、呼び方はどうであれ基本的に技術は同じで、要は何を載せるかの違いだという。そして北朝鮮は核実験を繰り返し、しかも小型化を進めているという。これが脅威でなくて何であろうか。

ついでだが、「ミサイル」と「ロケット」をめぐる英語の表現について、以前の発射時に取り上げたことがあるので参考までに記しておきたい。

北朝鮮についての過去の記事:
「ミサイル」と「ロケット」と「飛翔体」
http://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2009-04-07
「窓」ではない window
http://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2009-04-13
外国生まれの日本人は「帰国(return)」するのか
http://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2007-11-19
relative は「親類」か?
http://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2007-11-18
Hermit Kingdom (北朝鮮)
http://eigo-kobako.blog.so-net.ne.jp/2006-07-12

タグ:国際問題
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