「花子とアン」に出てきた cantankerous (「けんか腰の」) [映画・ドラマと英語]
家族が録り溜めていた「花子とアン」がテレビに映っていた。それを見るでもなくテーブルに座って雑誌を眺めていたら、ドラマに cantankerous という単語が出てきたので、思わず画面に目をやった。
私は「朝ドラ」の熱心な視聴者ではないが、家族がよく録画しているので時おり見るとはなしに見ており、それがここでのネタを提供してくれることがあるのは、これまで書いた通りである(→罰としての "go to bed" (「花子とアン」))(→70年前に「勇気をもらう」は使われていたか?(連続テレビ小説「ごちそうさん」))。「花子とアン」の最終回が、またもやそんな機会を提供してくれた。
「赤毛のアン」の出版記念会で「アン」の続編を読んでいた花子は、わからない単語を見つける。スピーチを終えると急いで帰宅し、辞書を引く。
- cantankerous, cantankerous...あった! …「意地悪な」「気難しい」、か。
本物の村岡花子がこの単語を知らなかったというエピソードがあるのかどうかはわからないが、私が反応してしまったのは、これが自分にとって「相性が悪い」単語だからだ。
見たことがないうえに印象も薄く、辞書で確かめてもじきに忘れしまうような単語は、「相性が悪い」うちにも入らない。一方で、意味はわからないが、綴りや音がおもしろいなどの理由で何かしら引っかかるものがあり、辞書を引いて覚えたつもりになる、しかしどうにも定着しない。そんな単語もある。
だいぶ経ってから何かで再会し、前に覚えたことは覚えていてもかんじんの意味が思い出せない。そんなことを繰り返してばかりいるのが、私にとっての「相性が悪い」単語である。cantankerous もそのひとつだ。
ちなみに私は、/k/ の音が続く点で共通点があり連想できなくもない「けんか腰の」という訳語で覚えることで、「相性の悪さ」にケリをつけた。おやじギャグにもならないが、苦手意識を克服するには何でもありだろう。ちなみに「かんたん」にこじつけようとも思ったが、簡単にはいかず断念した。
なおアクセントは第2音節の -tan- にあり、「ア」と「エ」の中間のような母音である(第1音節の can- も同じ母音)。ドラマの中で花子は日本語風に、アクセントも平板に発音していたが、これだとネイティブには通じないおそれが大きい。制作陣は花子を演じる吉高由里子にそこまでは求めなかったのだろうが、英語学習者は正確な音で覚えるべきなのはもちろんだ。
脱線すると、「花子とアン」の最終回では、出演者たちの「老けメイク」が無残であった。私は単語の発音は別に気にならなかったが、「ただ髪を白くしました」といった感じのメイクはいただけない。出演者も、映画「二十四の瞳」で老境に入った「大石先生」をみごとに演じた当時29歳の高峰秀子を見習えとはいわないが、もう少しがんばってほしかった。
話を戻すと、自分の学習ノートを検索したら、次のような実例がメモしてあった。7年前にここでとりあげた The Professor and the Madman という、「オックスフォード」英語大辞典の編集をめぐるノンフィクションで見つけたものである。
- He remained there for the best part of a month--and within days was displaying his old cantankerous self, complaining at the noise the workmen were making, even though the day he chose to complain was a Sunday, when the workmen were all at home.
(Simon Winchester: The Professor and the Madman)
過去のエントリと関係があったので、ふと自分のブログを検索してみたら、上記の実例は、the best part of という表現を取り上げた際に、すでに使っていることがわかったが(→「より良い」ではない better)、再度ここで利用してみた。
さらに検索結果を見ると、cause celeb という表現を紹介した時に引用した実例にも cantankerous があることがわかり(→cause celeb (辞書に載っていない単語))、ついでなのでこれも書き写しておくと、
- Thanks to her championing of his work, this cantankerous drunkard, became a cause celeb on the New York art circuit.
最後に、英語圏の辞書にあった定義と用例を引用しよう。ここにあるように、人だけではなく動物、さらには物質にも「扱いにくい」という意味で使えるということで、これは私にとって新しい発見であった。
- arguing and complaining a lot:
He's getting a bit cantankerous in his old age.
(Cambridge Advanced Learner's Dictionary)
- often angry and annoyed, difficult or irritating to deal with
a cantankerous mule
a cantankerous old woman who insisted that nothing should ever be allowed to change
(Merriam-Webster's Online Dictionary)
- 1. Ill-tempered and quarrelsome; disagreeable:
disliked her cantankerous landlord.
2. Difficult to handle:
"had to use liquid helium, which is supercold, costly and cantankerous" (Boston Globe).
(American Heritage Dictionary)
私は「朝ドラ」の熱心な視聴者ではないが、家族がよく録画しているので時おり見るとはなしに見ており、それがここでのネタを提供してくれることがあるのは、これまで書いた通りである(→罰としての "go to bed" (「花子とアン」))(→70年前に「勇気をもらう」は使われていたか?(連続テレビ小説「ごちそうさん」))。「花子とアン」の最終回が、またもやそんな機会を提供してくれた。
「赤毛のアン」の出版記念会で「アン」の続編を読んでいた花子は、わからない単語を見つける。スピーチを終えると急いで帰宅し、辞書を引く。
- cantankerous, cantankerous...あった! …「意地悪な」「気難しい」、か。
本物の村岡花子がこの単語を知らなかったというエピソードがあるのかどうかはわからないが、私が反応してしまったのは、これが自分にとって「相性が悪い」単語だからだ。
見たことがないうえに印象も薄く、辞書で確かめてもじきに忘れしまうような単語は、「相性が悪い」うちにも入らない。一方で、意味はわからないが、綴りや音がおもしろいなどの理由で何かしら引っかかるものがあり、辞書を引いて覚えたつもりになる、しかしどうにも定着しない。そんな単語もある。
だいぶ経ってから何かで再会し、前に覚えたことは覚えていてもかんじんの意味が思い出せない。そんなことを繰り返してばかりいるのが、私にとっての「相性が悪い」単語である。cantankerous もそのひとつだ。
ちなみに私は、/k/ の音が続く点で共通点があり連想できなくもない「けんか腰の」という訳語で覚えることで、「相性の悪さ」にケリをつけた。おやじギャグにもならないが、苦手意識を克服するには何でもありだろう。ちなみに「かんたん」にこじつけようとも思ったが、簡単にはいかず断念した。
なおアクセントは第2音節の -tan- にあり、「ア」と「エ」の中間のような母音である(第1音節の can- も同じ母音)。ドラマの中で花子は日本語風に、アクセントも平板に発音していたが、これだとネイティブには通じないおそれが大きい。制作陣は花子を演じる吉高由里子にそこまでは求めなかったのだろうが、英語学習者は正確な音で覚えるべきなのはもちろんだ。
脱線すると、「花子とアン」の最終回では、出演者たちの「老けメイク」が無残であった。私は単語の発音は別に気にならなかったが、「ただ髪を白くしました」といった感じのメイクはいただけない。出演者も、映画「二十四の瞳」で老境に入った「大石先生」をみごとに演じた当時29歳の高峰秀子を見習えとはいわないが、もう少しがんばってほしかった。
話を戻すと、自分の学習ノートを検索したら、次のような実例がメモしてあった。7年前にここでとりあげた The Professor and the Madman という、「オックスフォード」英語大辞典の編集をめぐるノンフィクションで見つけたものである。
- He remained there for the best part of a month--and within days was displaying his old cantankerous self, complaining at the noise the workmen were making, even though the day he chose to complain was a Sunday, when the workmen were all at home.
(Simon Winchester: The Professor and the Madman)
過去のエントリと関係があったので、ふと自分のブログを検索してみたら、上記の実例は、the best part of という表現を取り上げた際に、すでに使っていることがわかったが(→「より良い」ではない better)、再度ここで利用してみた。
さらに検索結果を見ると、cause celeb という表現を紹介した時に引用した実例にも cantankerous があることがわかり(→cause celeb (辞書に載っていない単語))、ついでなのでこれも書き写しておくと、
- Thanks to her championing of his work, this cantankerous drunkard, became a cause celeb on the New York art circuit.
最後に、英語圏の辞書にあった定義と用例を引用しよう。ここにあるように、人だけではなく動物、さらには物質にも「扱いにくい」という意味で使えるということで、これは私にとって新しい発見であった。
- arguing and complaining a lot:
He's getting a bit cantankerous in his old age.
(Cambridge Advanced Learner's Dictionary)
- often angry and annoyed, difficult or irritating to deal with
a cantankerous mule
a cantankerous old woman who insisted that nothing should ever be allowed to change
(Merriam-Webster's Online Dictionary)
- 1. Ill-tempered and quarrelsome; disagreeable:
disliked her cantankerous landlord.
2. Difficult to handle:
"had to use liquid helium, which is supercold, costly and cantankerous" (Boston Globe).
(American Heritage Dictionary)
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