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hallmark 「目立った特徴」「刻印」 (「イスラム国」邦人殺害事件) [ニュースと英語]

「イスラム国」による人質事件は、残念ながら2人の日本人が殺害されるという、悲しい結末を迎えた。

事件についていくつか考えたことはあるが、それは後の方で書くことにして、関連記事にあった hallmark という単語についてまず書いてみたい。

今回の事件では、またしても覆面の男が映像に現れてメッセージを発した。この男はイギリスから「イスラム国」に加わったとされ、"Jihadi John" (聖戦主義者のジョン)と呼ばれている。

本名ではなく、「イスラム国」のイギリス人ばかりのグループを人質たちが「ビートルズ」と名づけ、そのメンバーである彼はジョン・レノンにちなんでこのニックネームをつけられたという。
http://en.wikipedia.org/wiki/Jihadi_John

今回の事件を伝えるBBCの記事の一部である。

- The video, which has all the hallmarks of previous IS propaganda videos, has not been authenticated, but Japanese officials believe it is genuine.

In the video, Mr Goto is seen kneeling in an orange jumpsuit.
A militant speaking with an English accent who is believed to have appeared in previous videos and is known as "Jihadi John", addresses Mr Abe, accusing him of a "reckless decision to take part in an unwinnable war".
( "Japan outraged at IS 'beheading' of hostage Kenji Goto"
http://www.bbc.com/news/world-middle-east-31075769 )

「ホールマーク」というブランド名にもなっている hallmark はもとは「貴金属品を証明する刻印」、またそこから転じたのだろう、「(品質)証明」とか「太鼓判」「折り紙(つき)」という意味になる。

ただ、上の記事では、「証明」よりも「刻印」に軸足を置いて考えるといいようだ。辞書には「顕著な特徴」、a conspicuous feature or characteristic や an outstanding or distinguishing feature という語義もあげられており、こちらを「証し」よりも先に1番目に載せているものもある。

手製の英語学習ノートにも実例をメモしていた。ニューヨークのメトロポリタン歌劇場のウラ話やゴシップを書いたノンフィクションにあったもの。

- The tension between the directors and the general manager they had appointed was a hallmark of Bing's administration.
(Johanna Fiedler: Molto Agitato)

ついでなので、英語圏の辞書から用例をいくつか。

- a typical feature
She treated us with the friendly professionalism that has become her hallmark.
have/bear all the hallmarks of something:
The killings bore all the hallmarks of drug-related homicides.
(Macmillan Dictionary)

- a typical characteristic or feature of a person or thing:
Simplicity is a hallmark of this design.
This explosion bears/has all the hallmarks of (= is likely to have been) a terrorist attack.
(Cambridge Advanced Learner's Dictionary)

先に書いたように、この単語は貴金属の検査と証明の印に由来している。

- early 18th century (as a noun): from Goldsmiths' Hall in London, England, where articles were tested and stamped with such a mark.
(Oxford Dictionaries)

さて、今回の事件は、日本に難しい問題を投げかけたと思う。こちらが「人道援助」と言っても、そうは受け取らない、またはそうと知りつつも自分の都合の良いように利用する相手がいる。「力でなく対話で解決すべきだ」と言うのは簡単だが、対話や交渉に応じない、その取っかかりすら得られない相手が厳然として存在する。

事件は、「性悪説」も頭に置かざるを得ない世界の現実を示したといえるかもしれない。その昔、仕事で海外に出て感じるようになったのは、残念ながら「性善説」(だけ)を信じていてはやっていけない場合があるということだった。

また、今回の事件をきっかけに、政府はテロ対策の強化や有事の際の邦人救出のあり方を検討することになるだろう。「安倍政権は事件を利用しようとしている」という批判も出ているようだが、自国民保護の責務を負う政府が、緊急時に何ができるのか、今よりもっとできることがないのかを考えるのは当然のことだ。

・・・そうは思うものの、集団的自衛権と自衛隊派遣の拡大に意欲を燃やす安倍政権である。私は時の政権が従来の政策について見直しを含めた問題提起をすること自体は構わないと思っている。しかし現政権で気になるのは、十分な論議を経ずに与党の数の力や解釈の変更で方針転換を図ろうとする姿勢や傾向が見えることだ。イスラム国とは違う意味で、事態を「自分の都合の良いように利用する」のではないかという懸念が拭えない。

私は中東のいくつかの国を訪れたことがあることもあってか、こうした事件によって「イスラム教は過激」「イスラム教徒は異質」という一方的な見方が日本人の間に広がらないかも心配だ。

この地域がさまざまな問題と紛争を抱えているのは事実だが、殺された後藤さんはそこで苦しむ弱い立場の人々の声を伝えようとしていた。彼の遺志を大切にするとは、テロ対策や安全保障の議論というより、現地の人びとに目を向けるようにする、ということではないかとも思った。

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