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goose #2 「強める、高める」 (好評だったトランプ施政方針演説) [アメリカ政治]

トランプ氏の施政方針演説は「大統領らしい初めてのスピーチ」と評されるなど予想外?に抑えたトーンだった。ネットの関連記事を眺めていたら、そのひとつに前々回取り上げた goose が出てきた。気にとめたばかりの単語表現にすぐまた出会うという経験はこれまでも何度かあり、偶然とはいえおもしろいものだ。

「タイム」誌の最新記事に出てきたもので、今回の演説は7年生(中学1年生)の読解力で理解できるレベルであり、最近の大統領の中でも際立って易しいという分析を報じるサイド記事である。

- President Donald Trump's first joint address to Congress was delivered at a seventh-grade reading level, according to a common measure of comprehension that accounts for sentence length and the number of syllables in each word.
(中略)
Trump's speechwriters could have goosed the grade level by using the thesaurus function in Microsoft Word and choosing the longest synonym for every term, but the result would have been incomprehensible.
("President Trump's Speech Was Given at a Seventh-Grade Reading Level" TIME March 1, 2017)

「ワードの類義語機能を使えばもっと高い学年向けレベルの言葉にすることもできた(が、そうしなかった)」と書いているのは、やはり皮肉をまぶしたものだろうか。

それはともかく、この goose は「ガチョウ」とは違い、前々回のエントリ(→ goose spending 「消費に活を入れる」 (プレミアムフライデー実施へ))で書いたように "Give (something) a boost; invigorate; increase" (Oxford Dictionaries) という意味(動詞)に解釈すればいいはずで、日をあけずに偶然に出会ったもうひとつの実例としてメモしておくことにしよう。

さて冒頭に書いたように、今回の演説は予想外に”すなおな”内容だったので、かえって驚きをもって迎えられたようである。つまり裏を返せば、トランプがそれだけ破壊的だったということになるだろう。

ネットを眺めていると、好意的に受け止められたと伝える記事がある一方で、具体的な内容に乏しかったという指摘や、トランプが”変身”したわけではないと用心を呼びかけるコメントもあった。

「ニューヨーカー」誌の "Trump's speech to Congress was not "normal" (The New Yorker March 1, 2017)という記事は、まさにこのタイトルが内容を表しているが、それを引き立てるためか、出だしではまず今回の演説の好評ぶりを紹介している。まるまる引用すると長くなるので、そこで取り上げられていた”ホメ(殺し)言葉”の部分を抜き書きしてみよう。

- ...the address was the “first ‘normal’ speech Trump has given & therefore best."

- Trump’s “most speech-like speech.”

- The Washington Post (中略) pronounced the President’s address “surprisingly presidential”—which is, when you think about it, like calling an athlete’s performance “surprisingly athletic.”

これに続けて、

- One of its minor revelations was that Trump is capable of being boring. Trump and his speechwriters spooled off so many clichés (中略) and close-your-eyes-and-wish banalities (中略) that the speech, for long stretches, was almost soporific (眠気を催させる).
(ibid.)

ここにある、「『驚くほど大統領らしかったトランプ大統領の演説』というワシントン・ポスト紙の評価は、スポーツ選手が出した好成績を『まるでスポーツ選手のようだ』と言うようなものだ」、また、「スピーチにつきものの常套句があちこちに出てきて、トランプでも聴衆の眠気を誘う退屈な演説ができることがわかった」というくだりには、思わず声をあげて笑ってしまった。

いずれにせよ、トランプ大統領が良きにつけ悪しきにつけ注目を浴びる存在であることは否定できないといえそうだ。

そしてもうひとつ確かなのは、冒頭の「タイム」の記事にあるように、トランプの英語が際立ってわかりやすいことだろう。今回の演説といい、また「アメリカ第1主義」を前面に打ち出して世界の度肝を抜いた(?)就任演説といい、非ネイティブにも理解しやすく、英語による自己表現のお手本にもなるのではないだろうか。

もっとも、「英語なら何でもいい」という学習者もいれば、内容に興味や共感を持てないと学習効果があがらないという人もいるだろうから、その辺は保証の限りではない。少なくとも、格調を感じさせた前任のオバマ氏の演説との落差が大きいことはこれまた確かだろう。

参考記事:
派手さはなかったオバマ就任演説
「オバマ演説」の本や記事をめぐる雑感
オバマ就任演説の誤訳~ no more A than B について
オバマ大統領の広島演説 具体論には踏み込まず


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タグ:トランプ
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