Byzantine 「複雑で入り組んだ」「権謀術数の」 [固有名詞にちなむ表現]
このところ仕事に追われて英語に接する時間がまとまって取れない。これでは英語力が下がる一方なので、昔の学習メモをひっくり返して「温故知新」と行きたい(実際には「お茶を濁す」というべきだろうが)。目にとまったのは Byzantine という単語である。
世界史や海外の事物に詳しくない人でも、「ビザンティン(帝国・様式)」「ビザンティウム」といった言葉を想像するのではないかと思う。
それで間違いない(形容詞なのでそのように理解する必要はある)が、それだけでなく、「迷路のように複雑な」「込み入った」、さらには「権謀術数の」といった訳語が辞書に並んでいる。その意味では byzantine と小文字で始めても良い。
メモしていた実例はいまひとつなので、英語圏の辞書で定義と例文を見てみよう。
- formal disapproving complicated and difficult to understand:
rules of byzantine complexity
(Cambridge Advanced Learner's Dictionary)
わかりやすい定義だが、もっとおどろおどろしいニュアンスがあることが伝わらない感じがする。他の辞書も覗くと、
- If you describe a system or process as byzantine, you are criticizing it because it seems complicated or secretive.
a byzantine system of rules and trading arrangements
(COBUILD Advanced English Dictionary)
- (sometimes lowercase) complex or intricate:
a deal requiring Byzantine financing
(sometimes lowercase) characterized by elaborate scheming and intrigue, especially for the gaining of political power or favor:
Byzantine methods for holding on to his chairmanship
(Dictionary.com based on the Random House Dictionary)
この意味が、大文字で使う固有名詞の「ビザンティン(ビザンツ)帝国」、つまり東ローマ帝国(首都はコンスタンチノープル)に由来するのだろうということは容易に想像がつく。
- originally used of art style; later in reference to the complex, devious, and intriguing character of the royal court of Constantinople.
(Online Etymology Dictionary)
帝国の宮廷政治は複雑怪奇なシステムを持ち、かつ権謀術数うずまく場だったことから、このように使われるようになったのだろう。
Wikipedia には Byzantinism という項目があり、さらに詳しいことがわかる。
- Byzantinism, or Byzantism, is the political system and culture of the Byzantine Empire, and its spiritual successors, in particular, the Christian Balkan states (Bulgaria, Greece, Serbia) and Orthodox countries in Eastern Europe (Georgia, Ukraine, Belarus and most importantly, Russia). The term byzantinism itself was coined in the 19th century. The term has primarily negative associations, implying complexity and autocracy.
https://en.wikipedia.org/wiki/Byzantinism
ということで、東ローマ帝国だけでなく、その後のバルカン諸国や東欧世界にもついてまわるイメージになったようだ。そういえば第一次世界大戦(参考→ war to end all wars 「あらゆる戦争を終わらせる戦争」って何だ?)の勃発はオーストリア・ハンガリー帝国の皇太子フランツがボスニアのサラエボで暗殺されたのがきっかけだった。
さらに続きを読むと、
- This negative reputation stressed the confusing complexities of the Empire's ministries and the elaborateness of its court ceremonies. Likewise, the "Byzantine system" also suggests a penchant for intrigue, plots and assassinations and an overall unstable political state of affairs.
(ibid.)
先の Online Etymology Dictionary にあった Constantinople は今のイスタンブール Istanbul のことで、コンスタンチノープルを陥落させ東ローマを滅ぼしたオスマン帝国 the Ottoman Empire の帝都になった。Wikipedia の引用部分はこの帝国に言及していないが、やはりスルタンの宮廷で”はかりごと”が繰り広げられていたように想像してしまう。
しかし、こうした Byzantine のイメージは事実と異なるらしいということが、Wikipedia の続きに書かれている。
- The term has been criticized by modern scholars for being a generalization that is not very representative of the reality of the Byzantine aristocracy and bureaucracy.
(ibid.)
余談だが、これまでも何度か書いたことがあるように、イスタンブールは私が大好きな都市だ。ヨーロッパとアジアが出会う街、古代ギリシャからローマ、オスマン帝国、そして現代のトルコと、長い歴史と文明、異なる宗教が今も息づく世界都市である。「ロシアより愛をこめて」「スカイフォール」といった007の映画や小説の舞台にもなっている。
といっても、私が訪れたのはずっと昔のことで、テロがなかった頃の印象である。身の危険を案じることなく、あの街をまた訪れる機会があるだろうか、と思わずにはいられない。
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世界史や海外の事物に詳しくない人でも、「ビザンティン(帝国・様式)」「ビザンティウム」といった言葉を想像するのではないかと思う。
それで間違いない(形容詞なのでそのように理解する必要はある)が、それだけでなく、「迷路のように複雑な」「込み入った」、さらには「権謀術数の」といった訳語が辞書に並んでいる。その意味では byzantine と小文字で始めても良い。
メモしていた実例はいまひとつなので、英語圏の辞書で定義と例文を見てみよう。
- formal disapproving complicated and difficult to understand:
rules of byzantine complexity
(Cambridge Advanced Learner's Dictionary)
わかりやすい定義だが、もっとおどろおどろしいニュアンスがあることが伝わらない感じがする。他の辞書も覗くと、
- If you describe a system or process as byzantine, you are criticizing it because it seems complicated or secretive.
a byzantine system of rules and trading arrangements
(COBUILD Advanced English Dictionary)
- (sometimes lowercase) complex or intricate:
a deal requiring Byzantine financing
(sometimes lowercase) characterized by elaborate scheming and intrigue, especially for the gaining of political power or favor:
Byzantine methods for holding on to his chairmanship
(Dictionary.com based on the Random House Dictionary)
この意味が、大文字で使う固有名詞の「ビザンティン(ビザンツ)帝国」、つまり東ローマ帝国(首都はコンスタンチノープル)に由来するのだろうということは容易に想像がつく。
- originally used of art style; later in reference to the complex, devious, and intriguing character of the royal court of Constantinople.
(Online Etymology Dictionary)
帝国の宮廷政治は複雑怪奇なシステムを持ち、かつ権謀術数うずまく場だったことから、このように使われるようになったのだろう。
Wikipedia には Byzantinism という項目があり、さらに詳しいことがわかる。
- Byzantinism, or Byzantism, is the political system and culture of the Byzantine Empire, and its spiritual successors, in particular, the Christian Balkan states (Bulgaria, Greece, Serbia) and Orthodox countries in Eastern Europe (Georgia, Ukraine, Belarus and most importantly, Russia). The term byzantinism itself was coined in the 19th century. The term has primarily negative associations, implying complexity and autocracy.
https://en.wikipedia.org/wiki/Byzantinism
ということで、東ローマ帝国だけでなく、その後のバルカン諸国や東欧世界にもついてまわるイメージになったようだ。そういえば第一次世界大戦(参考→ war to end all wars 「あらゆる戦争を終わらせる戦争」って何だ?)の勃発はオーストリア・ハンガリー帝国の皇太子フランツがボスニアのサラエボで暗殺されたのがきっかけだった。
さらに続きを読むと、
- This negative reputation stressed the confusing complexities of the Empire's ministries and the elaborateness of its court ceremonies. Likewise, the "Byzantine system" also suggests a penchant for intrigue, plots and assassinations and an overall unstable political state of affairs.
(ibid.)
先の Online Etymology Dictionary にあった Constantinople は今のイスタンブール Istanbul のことで、コンスタンチノープルを陥落させ東ローマを滅ぼしたオスマン帝国 the Ottoman Empire の帝都になった。Wikipedia の引用部分はこの帝国に言及していないが、やはりスルタンの宮廷で”はかりごと”が繰り広げられていたように想像してしまう。
しかし、こうした Byzantine のイメージは事実と異なるらしいということが、Wikipedia の続きに書かれている。
- The term has been criticized by modern scholars for being a generalization that is not very representative of the reality of the Byzantine aristocracy and bureaucracy.
(ibid.)
余談だが、これまでも何度か書いたことがあるように、イスタンブールは私が大好きな都市だ。ヨーロッパとアジアが出会う街、古代ギリシャからローマ、オスマン帝国、そして現代のトルコと、長い歴史と文明、異なる宗教が今も息づく世界都市である。「ロシアより愛をこめて」「スカイフォール」といった007の映画や小説の舞台にもなっている。
といっても、私が訪れたのはずっと昔のことで、テロがなかった頃の印象である。身の危険を案じることなく、あの街をまた訪れる機会があるだろうか、と思わずにはいられない。
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